海外進出支援：食品業界向けの海外進出アドバイス。アメリカのキッチンの新定番、エアフライヤー！

2020年後半、「エアフライヤー」という家電製品のネット検索での関心度は、アメリカ市場に参入してから5年間で過去最高となりました（日本では、「ノンフライヤー」という名称でも呼ばれています）。2020年以降、ホリデーギフトとしての人気が高まっており、使い勝手の良さだけでなく、健康を謳った広告が人気の背景にあると考えられます。アメリカ市場に進出しようとしている食品メーカーにとって、この新しい家電製品が多くの家庭のキッチンに存在することを念頭に置いておくことは、ビジネスの方向性を検討する上で役立つに違いありません。

新しい市場に食品や飲料のビジネスを拡大するときは、商品の需要があるターゲット層、そして、彼らの消費行動を知る必要があります。農産物のようなものの場合は、自社の製品を調理するスペースはあるのか？ 最も簡単に調理できる方法は何か？ その国の文化の中ですでに存在するレシピとマッチしているか？ といったポイントと共に、消費者がキッチンに持っている家電製品についても理解することが重要です。

パンデミックが始まって以来、何百万ものアメリカの家庭に導入された家電製品の人気ぶりを知ることで、海外進出における意外なヒントを得ることができます。

１）エアフライヤーが人気となった背景。

2020年初頭にパンデミックが発生するや否や、不健康で高カロリーな「コンフォートフード（懐かしさのあるシンプルな家庭料理のようなもの）」の人気が高まりました。しかし、パンデミック禍における健康への懸念により、2020年半ばごろからは消費者の商品選択が変化し、健康的な食品や製品へ関心が移っていきました。

この傾向は新しいものではなく、ミレニアル世代とZ世代は、パンデミックの前から、加工食品よりも健康的なオーガニック食品や食事を好んでいました。多くの調査では、ミレニアル世代は健康的な食品のためにより多くのお金を払うことを厭わないと指摘されており、ミレニアル世代とZ世代の両方が、自分の食べ物がどこで、どのように作られているかを気にしていることを示しています。この二つの世代は、健康に配慮した食品を選択する可能性が最も高い世代として知られています。

２）エアフライヤーの登場。

エアフライヤーは、その名の通り、熱風と少量の油を使って揚げる家庭用調理器具です。「フライヤー」といっても、小さな対流式オーブンのようなもので、パンやお菓子づくりなどの料理に最適です。2010年にヨーロッパで発明され、2018年にはギフトとしても人気を博しました。しかし、2020年後半頃から「エアフライヤー」という言葉での検索数が急増したのです。

画像：Google Trendsによると、「エアフライヤー」という検索ワードの人気は、過去5年間を通して比較的に高いまま推移しており、2020年に人気のピークを迎えています。最も人気があった時期は、ホリデーシーズン前後の2020年後半でした。

油をほとんど使わないため、エアフライヤーは従来の調理法に代わる、ヘルシーな調理法として宣伝されています。NPD Group Inc.(旧：National Purchase Diary Panel Inc.)によると、2020年7月時点で、アメリカの約37％の世帯のキッチンにエアフライヤーがあります。[1]参考までに、アメリカの世帯の91％が電子レンジを所有しており、83％がオーブンを所有していると報告されています。電子レンジは1970年代から市販されており、約10年後の1986年には、アメリカの世帯の25％が電子レンジを所有していると報告されていました。NPDのデータは、2020年後半にエアフライヤーをめぐる検索が大きく流行する前の調査であるため、保有世帯の割合はその後かなり増えていると考えられます。[2]

また、「エアフライヤー レシピ」や「圧力調理器 レシピ」という検索ワードが人気を博していることからも、エアフライヤーがアメリカ人の料理のインスピレーションを刺激していることがうかがえます。圧力調理器は、レシピや料理のインターネットコンテンツの新ジャンルを生み出した、もう一つの大ヒットキッチン家電であり、多くのアメリカの家庭で購入される食材や、作る食事についての考え方をガラリと変えました。2018年時点で、圧力調理器のレシピだけでも2000冊以上の料理本があると推定されています。[3]

画像： Google Trendsによると、2020年後半、「エアフライヤー レシピ」と「圧力調理器レシピ」の検索力が同程度に達しました。

３）エアフライヤートレンドが意味することとは？

アメリカの食品・飲料業界に参入しようとしている企業にとって、自社製品を「エアフライヤー・フレンドリー」と位置づける絶好のチャンスです。新しいレシピを使って、自社製品を宣伝しましょう。エアフライヤーの一番の魅力は、早く調理できるという点で、その利点により、ますます多くのアメリカ人が料理をするようになっているようです。平均的なエアフライヤーの調理時間は5～25分程度であるため、今まで忙しすぎてオーブンで調理をする時間がとれなかった人々は、今まで作れなかったレシピに挑戦することができます。[4]

新型コロナウィルスの感染者が日々増加していく中、消費者はかなり健康に気を使いながら買物をしており、特にロサンゼルスやシアトルのような都市ではその傾向が強いです。これらの都市は、新型コロナウィルス感染者数が爆発的に増加した経験から、とてつもなく健康意識が高くなった層がいることで知られています。2020年に盛り上がったこのような健康的な食生活は、2021年にも継続する可能性が高いに違いありません。 [5]

海外の食卓への進出を検討する際、その国にすでに存在しているものを理解することはとても重要です。希望する進出先の文化に精通した専門家がいるかどうかが、自社製品の知名度を上げることができるか、はたまたスーパーの棚で売れ残ってしまうのかの分かれ道になるでしょう。

参照元：

[1] https://www.npd.com/wps/portal/npd/us/blog/2021/2021-predictions-for-the-us-food-and-beverage-industry/

[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Microwave_oven

[3] https://www.cnbc.com/2018/11/26/how-instant-pot-became-a-kitchen-appliance-with-a-cult-following.html

[4] https://www.tasteofhome.com/article/what-is-an-air-fryer/

[5] https://www.forbes.com/sites/phillempert/2020/10/19/food-trends-2021-staying-healthy-in-a-post-covid-19-world/?sh=3eb6e93a485b