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米国マーケティングトレンド研究会 2021.05.19

リテールトレンド:アマゾンとウォルマート。世界No.1の小売企業になるのはどちらか?

ウォルマートは2001年以来、世界最大の小売企業として君臨してきました。2021年現在、アマゾンは、遅くとも2025年までにその1位の座を奪う準備が整っています。アマゾンはウォルマートと比較し、より強固なサードパーティ小売業者のためのオンラインサポートシステムを持っており、このプラットフォームがアマゾンを有利な立場に導いています。ただ残念なことに、アマゾンはここ1年ほどで、従業員の劣悪な労働環境について世間から批判を受けており、今後の勢力拡大の歯止めとなってしまうかもしれません。

ウォルマートは少し前から、世界最大の小売企業となっています。1990年に米国最大の小売企業となり、2001年には世界最大の企業となりました。1しかし、新たな予測によると、2025年までにはアマゾンがその座を奪うだろうと言われています。予測を出したEdge by Ascential社のCEOであるデレン・ベイカー氏は、新型コロナウィルスのパンデミックについて「パンデミックは消費者の習慣を店頭からEコマースへと永久にシフトさせました。」と述べています。長い間、消費者の心の中で「Eコマースのイメージ」と結びついているアマゾンは、すでに一歩リードしているといえます。

ここでは、2021年時点でアマゾンの小売売上高がウォルマートを上回る理由と、上記の予測が実現するために障害となり得るものがあるかどうかについて、見ていきましょう。

アマゾンのサードパーティ小売業者に関する経験

現在の予測では、アマゾンは2025年までに約6320億ドルを稼ぎ出し、ウォルマートは5230億ドルしか稼げないだろうと言われています。

現在、アマゾンはその収益のほとんどを自社プラットフォーム上のサードパーティ・セラーから得ています。2021年の時点で、売上の約60%がそれにあたります。2025年には、この数字は66%にまで増加し、サイト上での売上の2/3を占めるようになると予測されています。アマゾンはこれらの販売から、商品価格に対して15%の手数料を徴収して収益を得ています。

サードパーティがアマゾンを利用して商品を販売する理由は、顧客の利便性、アマゾンのスタッフによる親切なサポート、フルフィルメントサービスなど、さまざまです。アマゾンのこれらの利点は、ウォルマートがサードパーティの販売事業者をどのように扱っているかと比較すると、さらに浮き彫りになります。

ウォルマートのサードパーティ小売業者に関する経験

ウォルマートは2020年に世界最大の小売業者になることができました。彼らは2020年に5590億ドル以上を稼ぎ出し、その売上額は2019年と比較して350億ドル以上も多くなっています。にもかかわらず、今後数年でアマゾンに負けてしまう危険性があるのです。

ウォルマートはアマゾンほど多くのサードパーティ・セラーを抱えていません。しかし、この5年間でこれらの販売者は大幅に増加しています。2016年、ウォルマートのオンラインストアで商品を販売するサードパーティ・セラーは約1000社しかいませんでしたが、2020年には7万社にまで増加しています。

現在、ウォルマートのサードパーティ・セラーは、Eコマースシステムの操作が難しいと感じており、また、ウォルマートのカスタマーサービスのサポートが不十分だと感じる出品者もいます。特に、顧客がサードパーティ・セラーとトラブルになった際に、ウォルマートが顧客側に有利な対応をすることに、セラーは気づき始めています。また、アマゾンではサポートチームとのコミュニケーションに様々なチャネル(Eメール、ライブチャット、さらにはホットライン)を提供していますが、ウォルマートではEメールでのコミュニケーションしか提供していません。2

ウォルマートがフルフィルメントサービスを提供するようになったのはごく最近のことですが、アマゾンでは、以前から存在していました。

最大の障害となる、アマゾンの評判

このままではウォルマートは、アマゾンがアメリカで、そしてやがては世界でナンバーワンの小売業者になるのを止めることはほぼ不可能です。しかし、アマゾンの評判を落とすことで、一般の人々が食い止めることは可能です。

アマゾンは今回のパンデミックで、お金だけではなく、多くの新しい従業員を獲得しました。パンデミックにより失業した人々は、賃金や健康保険などの福利厚生が充実しているアマゾンの倉庫作業の仕事に集まってきました。しかし残念なことに、多くの人々は、アマゾンの労働条件がいかに厳しく、非人道的といっても過言ではないものなのかを、身をもって知ったのです。ここ数年、アマゾンに関する主要なニュースの多くは、従業員の不満に関するものとなっています。

例えば、アマゾンに関する最近のニュースの中に、従業員の労働条件について書かれたものがあります。2021年3月下旬にいくつかのツイートが話題になった後、アマゾンニュースの公式アカウントは、その主張をした議員に返信しました。多くの人は、劣悪な労働環境が事実であることを知った上で、それに反論しました。ジャーナリストの中には、労働者にインタビューを行い、最も劣悪な環境の証拠写真を提供した人もいました。3

画像:(アマゾンニュースの公式Twitterアカウントより)アマゾンの従業員があまりにも過酷な労働を強いられ、トイレに行く時間がなかったという疑惑に対しての対応。時間を節約するためにボトルにおしっこをする従業員がいたというのです。このツイートに対して、従業員がボトルをトイレとして使っているのを自分の目で見た、あるいは自分がそうしていた経験があると述べる、多くの反応がありました。

また、アマゾンの2021年の「プライムデー」が、7月から6月に移行したことも興味深いです。プライムデーは、アマゾンで多くの商品がセールになる日ですが、毎年7月に行われていたものが移動したということは、アマゾンが第2四半期の数字を上げたいと思っていると考えられます。4一般的に、アマゾンは第4四半期(ホリデーシーズン)の業績が良く、予測可能な将来にわたって、最終四半期を支配し続けると考えられています。5

アマゾンのこうした商習慣の悪さが、顧客離れをもたらすかどうかはまだわかりません。ウォルマートがサードパーティの販売者にとってより使いやすいオンラインEコマースシステムを構築できれば、1位を維持するチャンスはまだあるかもしれません。しかし今のところ、アマゾンは小売業の王者になり、そのままその座に留まる可能性が高そうだという専門家の意見が大半をしめています。さて、これから日本国内ではどうなるのでしょうか?


参照元:

[1] https://www.britannica.com/topic/Walmart

[2] https://www.businessinsider.com/walmart-amazon-third-party-sales-sellers-marketplace-2021-4

[3] https://www.vice.com/en/article/k7amyn/amazon-denies-workers-pee-in-bottles-here-are-the-pee-bottles

[4] https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2021-04-30/amazon-s-prime-day-change-is-caution-flag-amid-profit-win

[5] https://www.pymnts.com/news/retail/2021/amazon-will-outgrow-walmart-3-to-1-over-next-5-years/

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