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米国マーケティングトレンド研究会 2021.08.24

アメリカの新型コロナウィルス対策:ブースターショットの推奨と問題点とは?

アメリカの専門家は、新型コロナウィルスのワクチンをすでに接種した人へのブースター注射を承認するよう、アメリカ食品医薬品局(FDA)に求めています。これらは免疫システムが低下している人に推奨されますが、希望者は誰でも受けられることになります。世界保健機関(WHO)は、米国のような国がブースターショットの展開を開始することを推奨していません。ブースターショットに力を入れる前に、世界中の人々へのワクチン接種完了に力を向けたいと考えているからです。

2021年8月中旬の時点で、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチンを接種した人に新型コロナウィルスに対する3回目の予防接種を受けることを推奨しています。2021年8月18日に発表された3つの研究結果により、ワクチンの効果は時間の経過とともに低下するということが判明したからです。[1]この3回目の予防接種は、ほとんどのワクチンで必要とされる最初の2回の予防接種のブースターとして機能します。

新型コロナウィルスにブースターショットは必要か?

WHOは、2回のワクチン接種が完了した人がブースター注射を受けることに重点を置くのではなく、より多くの人がワクチンを接種することに重点を置きたいと考えていますが、米国の専門家の中には、ブースター注射が必要だと言う人もいます。ワクチンの有効性は、時間の経過とともに低下するという複数の研究結果が出ています。

7つの州で行われた研究では、ワクチンを接種したアメリカ人の間で、新型コロナウィルスによる死亡者が増加した可能性があることが示されました。専門家は、強力で伝染しやすいデルタ型が原因であると考えています。ワクチンメーカーは、ワクチン接種によって新型コロナウィルスに対する100%の免疫を保証するとは約束していませんが、ワクチン接種を受けた人の間での患者の増加は、一部の専門家にとっては気がかりなことです。

ブレイクスルー感染(ワクチンを接種した患者が、そのワクチンが予防する筈のものと同じ感染症に罹ってしまう事)があるとしても、ワクチン接種を完了した人が新型コロナウィルスに感染して重症化したり死亡したりする可能性はかなり低くなっています。カリフォルニア州では、8月8日までに1615件のブレイクスルー感染が記録されていますが、これはワクチン接種を受けた住民2,200万人のわずか0.007%に過ぎません。[2]

CDCは、免疫力の低い人にブースター注射の検討を推奨しており、ブースターを希望する人には誰でも接種できるようにしたいと考えています。すでにワクチンを接種したアメリカ人に対するブースターショットの提供には、どのような問題があるのでしょうか?

新型コロナウィルスブースターショットの問題点1:ワクチンの公平性

現時点で新型コロナウィルスの追加接種に反対する最大の理由は、世界のほとんどの国が基本的なワクチン接種を行えていないことにあります。これは、国民に十分なワクチンを提供するためにCovax(コバックス:新型コロナウィルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み)のようなプログラムに頼っている裕福でない国では特に顕著です。コバックスは、2021年末までに20億回分の新型コロナウィルスワクチンを提供することを約束しています。[3]

また、企業がブースターショットの製造に注力すると、通常のワクチンの製造数が減り、人口の大多数が十分なワクチンを受け取れていない他の国でのワクチン展開が遅れるという懸念もあります。

新型コロナウィルスブースターショットの問題点2:より危険な変異体

WHOの専門家は、豊かな国の人々にブースター接種を集中的に行うことで、より危険な新型コロナウィルスの亜種が出現する道を開いてしまうことを懸念しています。

世界中の人々が予防接種を受けない期間が長くなればなるほど、新型コロナウィルスはより危険な亜種に変異することになります。新型コロナウィルスに対するワクチン接種が完了しているのは、世界人口の約24%に過ぎません。さらに、裕福でない国では、わずか1.3%が1回目の接種を完了しているに過ぎません。[4]WHOの試算によると、新型コロナウィルスを撲滅するためには、世界中で110億回のワクチン接種が必要になります。つまり、この病気を根絶するためには、50億人以上の人がワクチン接種を完了しなければならないのです。

新型コロナウィルスの予防接種は受けるべきか?

免疫力の低い人は、保健所や医師の指示に従うべきです。アメリカの保健機関では一部の人にブースター接種を推奨していますが、WHOや自国の関係者の意見に耳を傾けることが重要です。

専門家の中には、ブースターショットを受けることが他国でのワクチン展開に影響を与えるとは考えていない人もいます。アメリカの新型コロナウィルスの第一人者であるファウチ博士は、アメリカはワクチン寄付の約束を果たすことが可能で、さらに、アメリカ人にブースターショットを提供することもできると述べています。また、中所得国や低所得国により多くのワクチンを提供するために、アメリカはワクチンの生産を拡大していると約束しています。現在、米国は80カ国に1億2千万本のワクチンを提供し、WHOのコバックスプログラムに40億ドルを寄付しています。[5]

専門家のなかには、アメリカでブースターショットを受けたからといって、ワクチン接種が遅れている国の人々が最初のワクチンを受けられないということにはならないが、何よりもまず、すべての人が予防接種を受けられるような支援体制を取ることが重要であるという意見もあり、今のところそれがもっとも理にかなっている意見に聞こえます。


参照元:

[1] https://www.nytimes.com/2021/08/18/health/covid-cdc-boosters-elderly.html

[2] https://www.nytimes.com/2021/08/17/health/covid-vaccinated-infections.html

[3] https://www.nytimes.com/2020/12/18/world/covid-covax-vaccine-deals.html

[4] https://www.nbcnews.com/health/health-news/u-s-promotes-booster-shots-against-covid-moral-questions-arise-n1277092

[5] https://www.cnbc.com/2021/08/19/fauci-says-us-is-expanding-covid-vaccine-manufacturing-to-donate-shots-to-the-world.html

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