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米国の美容ブランドTULA(トゥーラ)はインスタグラムを柱に急成長を遂げてきました。まだ無名の時代から、業界から一目置かれる存在になるまで、どのようにファンを増やしていったのでしょう?TULAが発信するコンテンツや、消費者との関わり方を考察しながら、そのヒントを探っていきます。
TULAは、胃腸科専門医の創設者が2014年に開発した乳酸菌入りスキンケアブランドです。いま米国のミレニアル世代から絶大な人気を集め、コロナ禍で大幅に売上を伸ばした美容ブランドの一つです。最近ではP&Gに買収され、今年の4月からは美容リテール大手Sephoraで販売開始されるなど、勢いを増しています。
そんなTULAのルーツはインスタグラムにあります。立ち上げ当初からインスタグラムを主戦場とし、徐々にファンを増やしていきました。
TULAの成功の秘訣その1:SNSはユーザーのことを知る絶好の場所
TULAのインスタグラムでは、ユーザーとのコミュニケーションが最優先されていることがわかります。新商品が発売されると、その商品に関する質問をインスタ上で募集し、TULAのSNSチームが一つ一つの質問に丁寧に答えていくのです。
また、インスタグラムの機能を使って、日々のスキンケアに関するアンケートを実施することもあります。例えば「日焼け止めは毎日使いますか?」とユーザーに質問を投げかけると、日焼け止めを毎日使っている人は53%、反対に47%の人は、毎日使わなければならないものだと知らないと言うフィードバックが返ってきます。
他にも「今後どんなコンテンツがみたいですか?」や「どんなことでもいいので、TULAに聞きたいことはありますか?」などの質問を投げかけています。このような双方向のコミュニケーションで得られた気づきは、その後の商品開発やマーケティングにも役立つことになります。
一見当たり前のことのように思いますが、このようにユーザーの声に耳を傾けているブランドは意外と少ないのではないでしょうか。ついつい発信にばかり気を取られがちですが、SNSは双方向のコミュニケーションがあるからこそ価値が生まれると言うことを再認識させられます。
TULAの成功の秘訣その2:ユーザーのインサイトを基に、一貫したブランドメッセージをつくりあげた
対象者10,000人以上に実施されたTULAのアンケートで明らかになったことは、肌に関する悩み以前に、「自尊心」に関わる悩みを抱えているユーザーが多いということでした。
このアンケートでわかったことは、対象者の:
・92%が「自らのネガティブな思考によって、自尊心を傷つけている」1
・70%が「美容の広告で描かれている内容をみて、自信を無くしている」1
・62%が「肌の調子が悪い日は自信を失っている」1
現代の人々は内面的な健康を含む「ウェルネス」に意識が向いています。これまで、多くの美容広告は製品を売るために、ニキビやシミひとつない「完璧な肌」を、編集機能を使ってつくりあげてきました。しかし、このような広告は、消費者に現実とかけ離れた世界感を押し付け、息苦しさを感じさせてしまっているのです。
これらの結果に対して、TULAは即行動に出ました。まずは、広告や販促物で起用されるモデルのレタッチを禁止しました。レタッチがされていない記しとして、オリジナルマークも開発され、消費者が見分けられるようにしています。
さらに、6000件以上あるSNS投稿やあらゆる消費者とのタッチポイントを精査し、自信喪失に繋がるような発信をしてしまっていないかのチェックが行われました。現状、TULAのインスタグラムフィードをみると、あらゆる肌トラブルや皮膚疾患を持つ人々の姿が投稿され、「ありのままの肌を愛していこう」というメッセージが発信されています。
このキャンペーンでは、600人以上のインフルエンサーと組み、彼女たちのリアルな肌トラブルについて光が当てられ、多くの人々の共感を呼びました。TULAのサイトでは、電話番号を登録すると、気分を高めてくれるエールの言葉が毎週テキストメールで届くプログラムもローンチされ、積極的にユーザーの内面的な健康を応援するブランドとなっています。
SNSでフォロワー数より大事なこととは?
TULAはSNSを活用し、常に消費者の声に耳をかたむけてきました。その結果、これまで美容業界がつくりあげてきた「美」の定義を更新し、ユーザーの「強力な味方」となることに成功したのです。かつて、「インスタグラム=写真の美しさ」と言われていましたが、今の時代は必ずしもそうとは限りません。つくり込まれた世界感より、生身の人間のリアルが投影されているコンテンツの方が共感を得られることもあります。
SNSを運用していると、ついついフォロワー数や、いいね!数を気にしてしまいますが、何よりも優先すべきはユーザーのことを「量」としてではなく「質」として知ることです。あなたのフォロワー、あるいは振り向いてもらいたい人々は、どんな日常生活を過ごし、どんな悩みや課題を抱えているのでしょう?ブランドはその悩みに寄り添い、少しでもその人々の日常を豊かにすることがSNSで求められている本質なのかもしれません。
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“米国マーケティングトレンド研究会”
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