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国境を越えて海外向けに商品を販売するECサイト、「越境EC」。越境ECプラットフォームとは、その越境ECサイトを運営するためのシステムやソフトウェアのことです。この記事では、越境ECのおすすめプラットフォームや自社ECサイトの立ち上げ方法まで、海外事業のプロが徹底解説します。
越境ECプラットフォームの選び方のポイント
越境ECを始めるにあたって、どのプラットフォームを使ってECストアを立ち上げるかという選択は、専門的な知識と経験に基づいた判断が求められる、極めて重要なプロセスの1つです。それぞれのプラットフォームにメリット、デメリットがあり、もし自社に合わないプラットフォームを選んでしまうと、商品自体がどんなに優れていても、その可能性の芽を早々に摘んでしまうことになります。
ここでは、越境ECのプラットフォーム選びにおいて注意すべきポイントを解説します。ビジネスや商品のタイプ、ターゲットとなる国の特性などによって、選ぶべきプラットフォームが変わってきますので、まずはそれぞれのポイントを押さえながら情報を整理することが大切です。
国の言語や通貨への対応
ターゲットとなる国の言語や通貨に対応できることは必須の要件となります。様々な国産のECサービスも誕生していますが、そもそも現地の言語や通貨への対応ができないと、越境ECとして使うことはできません。デフォルトで対応していなくても、アップグレードやカスタマイズで対応できるケースもありますので、しっかりと確認しましょう。
物流への対応
ターゲットとなる国の物流に対応できることも重要です。商品を日本から現地にどのように届けるのか、例えば注文が入った場合、メーカーから直接現地の消費者に送るのか、それとも現地の倉庫に予め保管しておいて、そこから現地の配送業者を使って送るのかなど、扱う商品の性質やコスト、スピードなどを踏まえながら決める必要があります。その上で、決定した物流にプラットフォームが対応できるのか確認しましょう。なお、こちらもカスタマイズで対応できるケースがあります。
カスタマイズの自由度、拡張性
プラットフォームによって、カスタマイズの自由度や拡張性は大きく異なります。自社でECサイトを立ち上げる場合は自由度が比較的高く、逆にECモールなどを使う場合は限定的になります。また、自社ECサイトの場合は、その立ち上げ方によっても自由度や拡張性が変わってきます。
例えば、すでに越境ECの実績があるビジネスや商品で、必要な要件や機能が決まっているような場合は、拡張性の重要度は下がります。逆に、市場に新規参入する商品で先行きが不透明な場合は、拡張性の重要度が高くなり、スモールスタートした後にビジネスの成長に応じてECサイトを変化させやすいようにしておく必要があります。
自由度についても、ブランディングに関わる重要なデザインや独自機能などに、どれくらい対応できるかを確認しておくことが重要です。特に新規参入の場合、市場の競合商品と差別化していくことが何より重要なため、ブランド構築の戦略に合ったプラットフォームを選んでおかないと、後から大きな枷となってしまう可能性があります。
サポート、パートナーやユーザーコミュニティの有無
プラットフォームの提供元によるサポートの充実度も大事なポイントです。対応言語やレスポンスのスピード、連絡手段や営業時間などが、自社の運用上問題ないかを確認しておきましょう。例えば、サポートの対応言語が英語のみの場合、英語でスムーズにコミュニケーションができるメンバーを運用チームに入れておく必要が出てきます。
サポートとあわせて、プラットフォームの支援パートナーやユーザーコミュニティがどれくらい存在しているかも確認しておきたい点です。特に、オープンソースなどを使って自社でECサイトを立ち上げる場合は、プラットフォーム側のサポートがない場合もありますので、何か問題があった時に相談できるパートナーやユーザーコミュニティを確保しておきましょう。
セキュリティ
ECプラットフォームにおいて、セキュリティは最も重要視すべきことの1つです。不正アクセスなどの問題を一度でも起こしてしまうと、すぐに信頼を失い、撤退を余儀なくされるケースもあります。
特に、自社でECサイトを立ち上げる場合は、すべて自社の責任下でセキュリティ対策を行う必要があります。ECモールやSaas型のプラットフォームであれば、ある程度は提供元が保障してくれますが、規約などで責任範囲が定められていますので、しっかりと事前に確認しておきましょう。
コスト
プラットフォームによって、立ち上げや運用にかかるコストも大きく変わってきます。他の要件と天秤にかける必要もあるかと思いますが、何を優先するのか、将来的な見通しはどうかといったことも踏まえて、現実的で合理的な判断を行う必要があります。
失敗に陥りやすいパターンとしては、コストを抑えるためにECモールを選択した結果、十分なブランディングやマーケティングができずにビジネスが拡大できないといったケースや、初めから大きなコストをかけて自社ECサイトを作り込んだものの、ニーズの変化スピードに遅れてしまい投資が回収できないケースなどがあります。
コンサルタントやビジネスパートナーを選ぶ場合も、特定のプラットフォームありきのところに相談してしまうと、自社のビジネスに合わない選択を促されてしまうこともあるので、注意してください。
越境ECのプラットフォームの種類と、「自社EC型」サイトの立ち上げについて
越境ECのプラットフォームの種類として、大きく2つのタイプがあります。自社でECサイトを立ち上げる「自社EC型」と、AmazonなどのECモールを利用する
「ECモール型」の2つです。ここでは、プラットフォームの選択肢の幅が広くて選ぶのが難しい「自社EC型」について、さらに詳細に解説をしていきます。
自社でECサイトを立ち上げる場合は、プラットフォーム選びの前に、「フルスクラッチで開発する」「オープンソースを使って開発する」「SaaS型のサービスを利用する」など、いくつか立ち上げ方がありますので、まずはそれぞれの違いを理解しましょう。
フルスクラッチ開発
言葉の通り、既存のEC向けサービスやオープンソースなどを使わずに、完全オリジナルでECサイトを開発する方法です。非常に難易度もコストも高いため、こちらを選択するケースは予算のある大手企業や、既存のオープンソースやSaasでは対応が難しいような、特殊な要件を持つECなどに限られてきます。
オープンソースを使った開発
ECサイトを、EC向けオープンソースを使って開発する方法です。ECに必要な機能があらかじめ含まれていたり、機能追加がプラグインのインストールなどで簡単にできたりと、フルスクラッチに比べて効率的かつスピーディーに開発することができます。オープンソースなので無料というメリットもある一方で、設計や開発など技術的な知識とスキルが必須で、その後のセキュリティ保守などメンテナンスも行っていく必要があるため、技術者のリソース確保が難しい企業にはおすすめできません。
代表的なEC向けオープンソースとしては、Magneto、WooCommerceなどがあります。
Saas型サービスを利用した開発
ECに必要な機能が初めから揃ったソフトウェアをサービスとして利用して、迅速に立ち上げができる方法です。デザインのテンプレートを選び、商品や配送、決済などに関する情報を入力するだけで、すぐにビジネスを始めることができます。また、サーバーの保守やメンテナンスなどもサービス側が行い、サポートもついているため、立ち上げや運用開始後も技術的な知識やリソースが必要ありません。
一方で、サービスごとに機能の制限があったり、独自性の高いカスタマイズが難しかったり、一定のサービス利用料や手数料が必要になったりといったデメリットは存在します。
代表的な越境EC向けSaas型サービスとしては、Shopify、Wix、BigCommerceなどが挙げられます。
アメリカ向けの越境ECプラットフォームにShopifyが選ばれる理由
北米向けに越境ECを始める際、プラットフォームとしてShopifyが選ばれることが増えてきています。ここではその理由を、Shopifyの特長を紹介しながら解説していきます。
現地の言語や通貨、物流に標準で対応している
Shopifyは、標準で多くの言語や通貨に対応しています。そもそもShopifyはカナダ産ということもあり、言語や通貨はもちろん、UPS、USPS、FedExなどの現地の主要な配送業者や、PayPalなどの決済システムとの連携の仕組みも備わっており、これらへの対応は万全と言えます。
スモールスタートに向いている
アメリカ市場に初参入する場合、どんなに日本では有名で人気のあるブランドや商品でも、ゼロからのスタートになります。事前に現地での受容性調査を行い、深く戦略を練ってから挑戦したとしても、期待通りの反応がすぐに得られるとは限りません。そのため、いきなり作り込んだ状態でECをスタートさせるよりも、反応を見ながらすぐに改善や軌道修正ができる状態にしておくことを重視すべきです。
Shopifyであれば、ECの基本機能が初めから揃っており、初期費用もなく月額制で始められるため、スモールスタートに非常に適しています。
ブランディングのしやすさ
Shopifyには、デザインテンプレートが無料・有料含め、豊富に存在しています。様々な業界や商品、ビジネス規模などに対応したものが揃っているため、自社に適したテンプレートを選ぶだけで、カスタマイズしなくてもある程度のクオリティを担保することができます。デザイン面においても、アメリカのユーザーが好むような、シンプルで洗練されたもの、画像を大きく使うものが多いです。
また、見た目のカスタマイズもCMSを使って簡単に行うことができます。見た目を大きく変えたい場合も、プログラムコードが編集できるようになっているため、簡単なプログラミングのできるエンジニアさえいれば、自由度高くカスタマイズすることも可能です。
拡張性の高さ
Shopifyには、ECストアに必要な最低限の機能が標準で備わっていますが、機能を追加することも簡単にできるようになっています。様々な機能を持ったアプリが、テンプレートと同様に豊富に存在しており、インストールして設定するだけでストアに追加機能を実装することができます。メルマガ配信システムやソーシャルメディアとの連携といったマーケティング関連の機能や、在庫管理や受発注などの外部連携や効率化機能まで、様々なニーズに応えられるアプリが用意されています。
また、世界中にいるShopifyアプリのデベロッパーが日々、新たなアプリを開発・アップデートしているため、世の中に登場した新しいテクノロジーが常にShopifyに取り込まれ続けている点も評価すべきポイントです。
パートナー、ユーザーコミュニティの充実
Shopifyは世界最大のシェアを誇るECプラットフォームのため、関わる人の数も非常に多いです。様々な強みを持つ支援パートナーや、開発者と利用者による情報交換の場としてのコミュニティが存在しています。
自社の運用体制やステージに応じて、上手にパートナーやコミュニティを活用することで、スムーズにビジネスを育てていくことができます。
アメリカ向け越境ECサイト立ち上げ時の注意点
Shopifyなどのプラットフォームを利用することで、越境ECが簡単に立ち上げ可能であると伝えてきました。しかし、簡単であるがゆえに、他のサイトとのクオリティの差につながってくる要素に気を付ける必要があります。
例えば、画像のクオリティです。Shopifyのメリットとして、テンプレートはアメリカのユーザー向けに画像を大きく使ったものが多いと説明しましたが、裏を返せば、画像自体のクオリティがそのままサイトのクオリティに直結することを意味します。商品にもよりますが、ここはプロのカメラマンやデザイナーにお願いするなど、注力すべきポイントの1つです。
サイト上のコピーも、画像と同様にクオリティが求められます。日本語の機械翻訳ようなコピーだと、ネイティブにとって不自然な言い回しになってしまうこともあります。また、アメリカ人が好まないような文字量や表現は、読まれないだけでなく、サイトの信頼性にも影響します。
その他、州ごとの法律や商習慣に対応した各種ポリシーを用意したり、FAQを用意したりすることも、サイトのUXや信頼性に大きく影響を与える要素です。
自社の商品やブランド、ターゲットとなる国など、様々な要素を考慮して、最適なプラットフォームを正しく選べるかが、スタートとして非常に重要です。同時に、上に挙げたようなプラットフォームに載せる画像やコピーなどの中身、現地のユーザーの特性、さらに物流や受発注などの運用体制の構築など、越境ECは統合的な視野を持って取り組んでいく必要があることも頭に入れておいてください。
プラットフォーム選びだけでなく、ターゲットとなる国のことを理解したクリエイティブの制作、現地の法律や商習慣への対応などを自社だけで完結できない場合は、それらに精通した専門家やパートナーの協力が必須と言えます。専門家やパートナーを正しく選ぶこともまた、難易度がありますが、ビジネスの命運を握る部分ですので、妥協せずに見極めることが大切です。
ワイズアンドパートナーズでは、2002年から「日本のブランドを世界で有名にする」を使命に、多くの日本企業の越境ECを含む海外進出、現地でのリサーチやマーケティング、ブランディングやサイト開発、運用までを統合的に支援しています。まずは弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。
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