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米国マーケティングトレンド研究会 2021.04.27

コーポレート・アクティビズム:ベンアンドジェリーズが、アメリカの消費者に語りかける方法

アイスクリームのブランドBEN&JERRY’S(ベンアンドジェリーズ)は、その活動によって自らを定義し、複雑な社会問題に対して毅然とした態度をとるという、企業にとって非常に高いハードルを設定しています。ペプシのような他のブランドもこれに追随しようとしましたが、その多くは単なる金儲けと思われて失敗しています。

はじめに

ベンアンドジェリーズほど、アメリカの社会的・文化的問題に対して声高に支持を表明している商品やブランドはありません。彼らのモットーは、「平和、愛、そしてアイスクリーム」です。つい最近の2021年4月にも、この国際的なアイスクリームブランドは、警察に殺害された若い黒人男性、ダンテ・ライト氏の死に関して、公式ツイッターアカウントで声明を発表しました。ライト氏は、最も最近、警察による日常的な取り締まりで殺害された人物です。

しかし、ベンアンドジェリーズが行っていることは簡単ではありません。このような問題に声を上げることは、繊細でかつ正確な意図を持って行われなければなりません。ここでは、ベンアンドジェリーズが、どのようにしてコーポレート・アクティビズムの有効な活用方法を解読したのか、そして、そこからアメリカの消費者について何を学ぶことができるのかを見てみましょう。

画像:ダンテ・ライト氏の事件を受けた、リベラル主義を支援するツイート#DefundThePolice(ベンアンドジェリーズの公式ツイッターアカウントより)

ベンアンドジェリーズとそのアクティビズムへの取り組み

ベンアンドジェリーズは、1978年にベン・コーエンとジェリー・グリーンフィールドによって、バーモント州バーリントンに設立されました。その公式サイトには、「Issues We Care About(私たちが気にかけている問題)」というページがあります。1ウェブページの文章はシンプルで、気候変動、投票権、黒人の生活問題、LGBTQA+などの問題をしっかりとサポートしています。ベンアンドジェリーズは、こうした問題について公式に声明を出すだけでなく、意識を高めるための楽しいイベントなども行っています。2

ベンアンドジェリーズは、2000年の親会社ユニリーバとの買収契約の際にも、「社会的使命への支出を、全体の売上よりも早く伸ばすこと」という条項を要求していました。3

画像:共同創業者のベンとジェリーが2016年に行われたデモ「Democracy Awakening(民主主義の目覚め)」の抗議活動に参加し、逮捕された時の様子の詳しい紹介(ベンアンドジェリーズのウェブサイトより)

アクティビズムへの取り組みに関して、ベンアンドジェリーズCEOのマシュー・マッカーシー氏は以下のように述べています。「私たちは、実績の信頼性が重要であることを理解しています。そしてそれは、『何件の投稿をしたか?』や 『みんなが元気になるような素敵な動画を作ったか?』だけではありません。 『いつもそこにいること』が大事なのです。」4つまり、コーポレート・アクティビズムの鍵は「一貫性」にあるのです。

アクティビズムが失敗するとき。ペプシの失敗したブラック・ライブス・マター広告 

近年、多くの企業やブランドがアクティビズムに挑戦しています。調査によると、若い世代は自分たちの価値観に合った企業の製品を購入したいと考えています。5残念なことに、彼らにアピールするために、PRにおいて大失敗をしてしまった企業もあります。

最近の大きな例は、タレントのケンダル・ジェンナーを起用した2017年のペプシのCMです。このCMで彼女は、武装した警察官の列に近づき、そのうちの1人にペプシのボトルを手渡します。これは、コミュニティ、希望、愛といった感情を想起させるためのものでしたが、この広告は非常に良くないものとなってしまいました。結局この広告は中止され、ケンダル・ジェンナーはファンに謝罪するビデオを公開しました。

画像:フランスで開催された第71回カンヌ国際映画祭に出席したケンダル・ジェンナー

世間のこうした反応の原因は、ペプシがアクティビスト・ブランドではないということにあります。さらに言えば、警察と対峙する抗議者が経験する暴力を軽視していることも抗議の対象となりました。ほとんどのデモ参加者は有名人ではないため、警察官に近づき、危害を加えられることなくソーダのボトルを差し出すことはできないでしょう。6

ペプシは、警察とのやりとりがどのようなものかというファンタジーを作り出すことで(特に、ペプシが取り上げたかった問題が警察の残虐行為や安全でない警察とのやりとりであったため)、変革を起こそうとしている団体ではなく、社会的なトレンドを利用して利益を得ようとしている企業であることを世間に晒してしまいました。

まとめ:ベンアンドジェリーズの正しい行動

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画像上:ベンアンドジェリーズがジョージ・フロイド氏殺害事件後に行ったBLM運動に関するツイートの様子。画像下:支援を表明した週のフォロワー数の推移。(SocialBlade.comより)

「ちょっと待って。ソフトドリンクは警察の残虐行為とは関係ないけど、アイスクリームも関係ないのでは」「なぜベンアンドジェリーズは褒められて、ペプシは貶められるのか」と思うかもしれません。

これは、簡単に言えば、ベンアンドジェリーズにはアクティビズムの血が流れているからだといえるでしょう。ベンアンドジェリーズの社内には、熟練したマーケターや支持活動に精通したアクティビストのチームが存在し、支援する大義が本物であること、表現が的確であることが明らかなのです。8

莫大な社会貢献予算を持つ企業だけがコーポレート・アクティビズムを成功させることができるとは言いませんが、その助けになることは確かです。また、ベンアンドジェリーズは、これまで様々な問題に対して企業としてのスタンスを一貫して表明してきたため、それが期待されるようになりました。「アイスクリーム」というだけでなく、「アクティビスト」としても知られています。

消費者は、より多くの企業がベンアンドジェリーズのように、さまざまな問題への支持を明確に表明し、それを実証的に裏付けるような行動をとることを望んでいます。しかし、企業のアクティビズムへの移行は、純粋に売上のために顧客とつながりたいという欲求に基づくものであってはなりません。

社会活動の歴史がない企業にとっては、今からでも遅くありません。この分野に参入する一番の方法は、自分たちの業界にとって大きな意味を持つ活動を見つけ、そこから発展させることでしょう。そうすれば、世界の問題を解決しようとする前に、自分たちの問題を解決しようとする企業の姿勢が人々に伝わります。環境問題であれ、黒人問題であれ、その他の社会的な問題であれ、消費者はその企業が真摯に取り組んでいるのか、それとも売上や売名行為のために取り組んでいるのかを見抜きます。ですから、最初から本物であることがベストなのです。

[1] https://www.benjerry.com/values/issues-we-care-about

[2] https://www.huffpost.com/entry/ben-jerry-ice-cream-corporate-activism_n_5f1b11dec5b6296fbf423019

[3] https://bthechange.com/activism-as-brand-identity-part-of-ben-jerrys-flavor-and-a-lesson-for-other-mission-driven-companies-cf7d61d0860e

[4] https://hbr.org/2021/01/why-ben-jerrys-speaks-out

[5] https://www.forbes.com/sites/forrester/2018/05/23/millennials-call-for-values-driven-companies-but-theyre-not-the-only-ones-interested/?sh=4a2063be5464

[6] https://time.com/4726500/pepsi-ad-kendall-jenner/

[7] https://socialblade.com/twitter/user/benandjerrys

[8] https://www.bloomberg.com/news/features/2020-07-22/how-ben-jerry-s-applied-its-corporate-activism-recipe-to-blm

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