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国際的に成功した食料品チェーンであるTesco(テスコ)は、アメリカ市場に進出したものの、ついに定着することができませんでした。この失敗は、アメリカの顧客層、立地、ニーズを読み間違ったことが要因だったと言われています。今回はこの海外展開の失敗事例を検証していきます。
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イギリスは政治的にアメリカに最も近い同盟国と言えます。長い間、それぞれの国の違いについての議論はありますが、総じていうと、イギリス人とアメリカ人は、有名人、テレビ、食べ物、そして言語を文化的に共有することができる特別な兄弟のような関係です。しかし結局のところ、両者は独自の文化を持つ全く別の国なのです。
ここでは、イギリスの象徴的な食料品店、テスコの海外展開の試みがうまくいかなかった例を見てみましょう。
画像:「fresh & easy」の実店舗とロゴ
イギリスを訪れたことがある人なら誰でも絶対に見たことがあるのがテスコのスーパーマーケットです。1919年にオープンしたテスコは世界最大級の小売店であり、現在ではイギリスの食料品市場シェアの25%以上を占めています。また、テスコは海外進出でも成功を収め、ヨーロッパの国々と、マレーシア、インドに店舗を広げています[1]。
これまでの海外進出ですでに多くの文化的ハードルを乗り越えてきたテスコが、2007年に「fresh & easy(フレッシュ&イージー)」という名前でアメリカに初の大型店をオープンしたときには、他国と同様に成功すると思った人も大勢いました。現に私たちのかつてのクライアントも、フレッシュ&イージーの近くに開店するというロケーション戦略をとっていたほどです。
テスコはアメリカ進出を盲目的に行ったわけではありません。アメリカ進出に向けて3年間のリサーチが行われ、10億ドル以上の費用が費やされました。最終的にはカリフォルニア州を超え、ネバダ州とアリゾナ州にまで店舗は拡大しました。しかし残念なことに、2013年までにテスコは米国市場で20億ドル以上の損失を出し、すべての店舗を閉鎖することになりました。
では、何がいけなかったのでしょうか?
テスコの問題点はすべて、彼らの顧客意識の欠如に集約されます。アメリカ市場に参入するためにあらゆる調査と計画を立てていたにもかかわらず、集めた調査結果を考慮に入れることを明らかに怠ったのです。
要因1:ロケーション戦略
テスコの海外展開失敗の大きな要因の一つは、どこに店舗を出店するかということでした[2]。彼らの戦略は、市場にギャップがある地域に拡大するというもので、表面上は健全に見えました。アメリカには、特に低所得者層の地域で「food deserts(フードデザート)」と呼ばれる地域がたくさんあります。これは、手頃な価格、簡単にアクセスできる場所に生鮮食料品店がない地域を指します[3]。残念なことに、テスコが 「フレッシュ&イージー」をオープンした地域には、店舗内で販売されている商品を買う余裕のある人口がいないこともありました。
フードデザートは、一見して進出に最適な場所のように思えます。他に大手食料品店がないということは、他に競争相手がいないということだからです。しかし、そこには大きな誤算がありました。英国で大成功を収めているテスコは、駅やバス停などの交通の要所から徒歩で行ける距離に小さな店舗があることで知られています。これにより、誰でも好きな時に簡単に店舗にアクセスでき、大きな駅の中や駅周辺の土地にも簡単に店が収まるようになっています。しかし、アメリカ、特にカリフォルニア州は、包括的な交通システムが存在するわけではありません。カリフォルニアは、高速道路、一般道路、そして何よりも交通量が多いことで有名です。カリフォルニアのほとんどの人はどこへでも車で移動しているので、交通機関のハブの近くにあるお店の便利さは必要なく、実際、アメリカ人の45%は公共交通機関を全く利用できない(東京人から見れば大変不便な)場所に住んでいます[4]。
にもかかわらず、テスコはイギリスで成功した「徒歩で行ける小型店」を選択しました。しかし、誰も道を歩いていない場所で小型店を開くことは、彼らの努力を無にするものでした。
要因2:顧客理解
カリフォルニアでの出店が失敗だったとしても、生鮮食料品店が不足している地域に食料品店を出店するのは、とても良いアイデアかもしれません。テスコは、人々が健康的なライフスタイルを送るために食料品を購入するための空間を作りたいと考えていました。
しかし残念ながら、テスコはこれらのコミュニティの買い物習慣を理解していませんでした。低所得地域に住む人々は、健康的なライフスタイルを考慮し買い物をする可能性が低いと言えます。彼らの最大の関心事は、シンプルさと価格です。また、「フレッシュ&イージー」のもう一つの要因は、コンビニエンスストアで見かけるようなミールキットを店頭で販売していることでした。
低所得者層の人々は、シフト制の遅い時間帯に働いたり、手の込んだ料理を作るための時間を割くことができない低賃金の仕事に就いたりする傾向があり、新鮮なミールキットを販売するにはうってつけの市場のようにみえたのでしょう。しかしながら、このような食事スタイルは米国ではあまり人気がなく、一般的でもありません。
近年は変わってきており、より多くのスーパーマーケットがミールキットの販売に乗り出していますが、食料品店で1人分の夕食を購入するという考えは、アメリカ人にとっては非常に受け入れがたい概念です[5]。
まとめ:海外展開で失敗しないために
ここまで、テスコのアメリカ進出の失敗を例に、その要因を検証してきました。
テスコがアメリカに進出したのは、2008年の金融危機の直前の2007年です。おそらく、ウォール街以外の誰もが予測できなかった差し迫った経済不況により、店舗は失敗する運命にあったのでしょう。しかし、もしテスコが西海岸ではなく東海岸に出店していたらどうなっていたでしょうか。自動車保有台数が最も多い都市と最も少ない都市を見てみると、テスコのようなモデルがどこで成功する確率が高かったかは、あまりにも明白です。車の保有台数が最も少ない都市は東海岸にあり、アメリカの大都市の中で車の保有台数が最も少ない都市はニューヨーク市がトップに立っています。
ニューヨーク市にはカリフォルニア州と同様に低所得者層の地域やフード・デザートがありますが、西海岸のように徒歩での移動が珍しいということはありません。ニューヨーカーは歩くことに嫌悪感を抱くことはなく(都市が碁盤の目状で単純化されているため)、建築物同士が非常に混み合っているため、ボデガ(ヒスパニック系の非常に小さなコンビニエンスストア)のような小さな店に慣れているのです。
アメリカは多様性に富んでおり、ある州や都市で通用するものが他の州で通用するとは限りません。同じ国であっても、進出をする地域ごとに独自の状況、社会経済状況、地理的状況、そしてもちろん法律などを考慮しなければなりません。海外に進出する際には、それらのマーケティングを深く理解し、自社のブランドを受け入れてくれる市場を正確に特定できる専門家を現地で見つけることが重要なのです。
私たち ワイズアンドパートナーズ(米国カリフォルニア州)は、2002年から「日本のブランドを海外で有名にする」を使命に、マーケティング・コミュニケーションの知識、技術、経験、人材を総動員し、これまで100社以上の大手日系企業様をご支援して参りました。弊社でご支援可能なサービスの内容や、実際にご支援した成功事例などを以下にご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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