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米国マーケティングトレンド研究会 2021.03.10

SNSブランディング:ティックトックは他のSNSとどう違うのか?

SNSを利用したブランディングは、TikTok(ティックトック)上で変容しはじめています。ティックトックとその若いユーザーたちは、これまでブランドがつくりあげてきた洗練された外観よりも、リアルな姿に興味を持っているため、これまでの広告的なアプローチは効かなくなってきているのです。そんななか、化粧品ブランドのUrban Decay(アーバン・ディケイ)は、リアルな方法でユーザーと繋がり、ブランドを中心に描かないキャンペーンを実行することで学び、実験しています。ティックトックのブランディングはどう行うべきか、このアーバン・ディケイの事例を解説していきます。

ティックトックの台頭

ティックトックの人気は、パンデミックの前までは健全なペースで成長していましたが、ロックダウンによって何百万人もの人々が外出自粛になった後、2020年にはappストアで最もダウンロードされたアプリになりました1。2020年10月の時点の米国では、1億人以上の月間アクティブユーザーがいます。2

ティックトックはフェイスブックやインスタグラムのようなソーシャルプラットフォームに比べて新参者ではありますが、短いビデオストーリーに焦点を当てたフォーマットで、一気にスターダムにのしあがりました。

ティックトックを利用する人とその理由

子供がいる人なら誰でも、ティックトックを利用しているのは10代後半から20代前半で、ブランド購買に割くための可処分所得が低い層だと思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。ティックトックユーザーの最大の年齢層は19歳以下ですが、アクティブなユーザーの大半は実は20代以上です3。さらに、ティックトックユーザーは、アプリを使用して単にストレス発散をしようとしているのではありません。

ニールセン社が実施した、TikTokを使用しているときにユーザーがどのように感じているかについての調査では、ユーザーがFor Your Page(ティックトックアプリを開いたときに表示されるページ)をスクロールしている時、頭の中で何が起こっているのかについて、いくつかの魅力的なポイントが明らかになりました。ブランドにとって、この調査から得られた情報の中で最も重要なのは、以下の2点です。

1つ目は、ティックトックユーザーの約半数は、プラットフォーム上の広告や他のコンテンツを通じて、試してみたい新製品やブランドを見つけたと報告していること、2つ目は、43%のユーザーが、ティックトック上の広告がユーザー生成コンテンツとよく溶け込んでいると感じているということです。4

これは、ティックトックを利用している人の約半数が、ティックトックで製品を見た後に試してみたい感じていることを意味し、広告が必ずしもユーザーにとって広告として認識されないため、その発見が強制的と受け取られにくいということです。

では、現在市場に出回っている最も強力なアプリのために、ブランドはどのようにコンテンツを作るべきなのでしょうか? それはティックトック自身の「広告を作らないで、TikTokを作ろう」というフィロソフィーにヒントがあります。

アーバンディケイの黒人歴史月間チャレンジ

このフィロソフィーを体現する素晴らしい仕事をしているブランドの一つが、アイシャドウパレットの「ネイキッド」コレクションで知られる、化粧品会社のアーバン・ディケイです。2021 年 2 月に向けて、同ブランドは黒人歴史月間のキャンペーンを実施しており、ユーザーは米国で黒人の歴史を作ることについての質問に回答し、披露することができました。

このキャンペーンでは、アーバン・ディケイのメイクアップアーティストの1人であるJoda Jacksonが、「黒人の歴史を作っているとは言わずに、黒人の歴史を作っていることを示す」ことを求める動画を投稿しました。アーバン・ディケイは、大規模なフォロワー数を持つ10人のティックトッククリエイターにハッシュタグ「#BlackBoost」と「#BlackHistoryMonth」をつけて投稿してもらい、ユーザーは「スティッチ」機能を使って簡単に返信したり、独自の黒人歴史月間の動画を作成したりすることができました。

ティックトックは2020年9月に「スティッチ」機能を導入し、この半年間でアプリ上、最も拡散性のあるトレンドを提供してきました。ここ数ヶ月のティックトックとツイッター上での最大のネタ動画は、人々がこの機能を使ってコール&レスポンス動画を作成したことから生まれています。そこで最も人気があったのが、「言わずに教えて」というチャレンジです。

画像:[ネタ動画の例] ユーザーの@tigirlilyさんは、アメリカ中西部出身の人に、「私は中西部出身です」と直接言わずに、この事実を明らかにしてほしいという課題を出しました。反応には、農場のビデオに台詞を読み上げているところを見せたり、中西部のアクセントで話したり、特定の語彙を使ったり、その他の中西部の一般的なものを見せる、等がありました。

アーバン・ディケイの黒人歴史月間キャンペーンについて興味深いのは、確かにブランディングされ、お金をかけて行われていますが、キャンペーンの焦点は、売上高やブランドの認知度の直接の増加を狙って行われていない、という点です。ティックトックは多くのユーザーが新しい商品のための買い物に来るプラットフォームであり、ティックトック自身も、メイクアップトレンドやチュートリアルに最適な場所、という方向性を固めてきているため、製品の販売促進キャンペーンと非常に相性が良い場所です。しかし、アーバン・ディケイは、販売に焦点を当てるのではなく、ユーザーに良い気分になってもらうことに焦点を当てたキャンペーンの促進を選択しました。

アーバン・ディケイは、多くの美容ブランドと同様に、リアーナのFENTY(フェンティ)ブランドの美容ラインを踏襲し、カラーパレットを50色以上に多様化しています。米国の黒人や褐色系の肌の人々は、長年にわたり、美容の世界で非常に過小評価される存在でしたが、ここ5年ほどで大きく変化し始めています。彼らは、ソーシャルメディアキャンペーンとして、コレクションの様々な色合いを披露したり、顧客にパレットを買いに行かせたり、広告的な行動を促すのではなく、より興味深い方法でブラックとブラウンの美しさへのコミットメントを披露することを選択しました。顧客の多様性を称えるための活動の一環として、アーバン・ディケイは黒人歴史月間の「言わずに教えて」チャレンジを作成しました。

ティックトックのハッシュタグ「#BlackBoost」は、2月末までにすでに30万回以上のビューを集め、当初の有料インフルエンサー10名のフォロワーを超えるコンテンツを生み出しました。 アーバン・ディケイのジェネラルマネージャーであるMalena Higuera氏は、このキャンペーンは売上を上げること以上のものだと語っています。彼女は、ブランドの整えられた外観をはずすことで、ティックトックで人々とつながる方法を学ぶことに関心を持っています。彼女は、ティックトックはより「リアル」を求めるチャンネルであり、ソーシャルメディアブランディングの通常のルールが常に適用されるわけではない、と語っています。

まとめ

ティックトックコンテンツは、フェイスブック広告とインスタグラム広告の両方を上回っています。ティックトックの動画は、ユーザーが生成したものでも有料広告でも、ニュースフィードをスクロールしている人々の注目を集めるのに優れており、広告による投資効果(また、製品に純粋に興味を持つようになる)という点では、ティックトックのコンテンツは一貫してフェイスブックとインスタグラムを上回っています5

ニールセンが実施した調査によると、75%の人々はティックトックを見ている間に 「インスピレーションを受け、自信を持たせ、楽しませてくれた」と感じています。自分を惨めに感じる記事やブログが多くあるフェイスブックやインスタグラムのようなプラットフォームと比較しても一目瞭然です(「フェイスブックのうつ病」と呼ばれる状況もあります)6。本質的には、ティックトックは、友人や家族、好きな有名人がやっていることをキャッチアップするだけではなく、何らかの形で自分の人生を豊かにする場所なのです。

他のプラットフォームと比較すると、よりティックトックでのブランディングはリアルだと感じられます。動画のほとんどは、部屋やベッドの中で踊ったり、好きなことについて話したりしている人たちの動画で、ファッションやメイクの腕前を披露していることもあれば、自分の周囲の様子を紹介していることもあります。他のプラットフォームでは必ずしもユーザーの心に響かない親密さが、ティックトックにはあるのです。しかし、ブランドがティックトックのオーディエンスとのつながり構築を成功させたい場合、彼らはプロ意識を放棄し、代わりに少しの挑戦が必要かもしれません。

みなさんも、まずはTikTokアカウントを作ってみてはいかがでしょうか?

 

参照元:

[1] TikTok Was the Most Downloaded App of 2020

[2] Openslate and TikTok Partner to Deliver Brand Safety Solution for Advertisers

[3] TikTok US Users by Age

[4] New Study Finds People Come to TikTok to Lift Their Spirts

[5] Study: User-generated TikTok videos have strong consumer appeal

[6] Study: User-generated TikTok videos have strong consumer appeal

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