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米国マーケティングトレンド研究会 2021.07.21

アメリカの新しい買い物トレンド。ショッピングモールがEコマースを利用し、体験を再定義する

ショッピングモールは、長年にわたりアメリカの買い物文化に欠かせない存在でしたが、来場者数や人気が低下しています。今回のパンデミックでは、これらの巨大なショッピングセンターが特に打撃を受けたため、マーケティング担当者はショッピングモールを救うための新しい戦略を模索しています。戦略の一つとして、ショッピングをオンラインに集約することが挙げられますが、それだけでは実店舗を救うことはできません。その他には、サービスを拡大したり、新しいエンターテイメントを提供したりすることが戦略として挙げられます。

何十年もの間、ショッピングモールはアメリカ文化にとって非常に重要な存在でした。ティーンエイジャーが多くの時間を過ごす場所として、また、最新のファッショントレンドを知る場所として知られていました。しかし、近年、モールの人気は年齢層を問わず低下しています。パンデミックはこの傾向をさらに悪化させ、今後5年間でアメリカのショッピングモールの約1/4が閉鎖されると予測されているのです。[1]

モールの本来の目的が、消費者に新しいトレンドを提供することではなくなってきている

80年代から2000年代初頭にかけて制作されたアメリカの番組を見たことがある人なら、モールが多くのアメリカのティーンエイジャーにとって中心的な場所であることを知っているかもしれません。ソーシャルメディアやグループチャットが登場する以前は、ティーンエイジャーは社交の場としてモールに足を運んでいました。ショッピングモールで遊びながら最新の商品を見つけることもでき、雑誌で見て気に入ったものを地元のモールで探したり、似たようなものを探したりしていたのです。[2]

モールには若者がたくさんいるので、流行が生まれやすい環境でした。ソーシャルメディアが普及していない時代には、雑誌やテレビ・モールのショーウィンドウなどが最新トレンドの情報源でしたが、2021年現在、情報収集の方法は変化しています。今、私たちは、家にいながらにしてファッションやスタイルの情報を得ることができます。ショッピングモールを歩いているときに何かに触発されるのではなく、モールや店舗に行かなくても、買いたいものを決めることができるのです。

また多くのショッピングがオンラインで可能になり、自宅で仕事をする人が増えた今、モールの来場者のパターンは変化しています。

ポスト・パンデミックのショッピングモール。オンライン化でE-コマースに対抗

[3]

画像:センテニアル社の公式サイトより、同社が所有する全モールのリストと全米のロケーションの紹介

いくつかのモールが採用している戦略の一つは、店舗がオンラインに移行するというトレンドに従ってしっかり実行することです。モールをはじめとする複数のエンターテイメント施設やレストランダイニングを持つ不動産会社のCentennial(センテニアル)社は、Adeptmind(アデプトマインド)社に依頼して「オムニチャネルショッピング・プラットフォーム」を構築しました。 [4] アデプトマインド社は、Eコマースのプラットフォームを作ってきたテクノロジー企業です。彼らがセンテニアル・ショッピングセンターのために作ったこのオムニチャネル・プラットフォームは、「Shop Now!」と呼ばれており、消費者は、アマゾンや楽天のような大手サイトとは異なる形で、自宅にいながらにしてお気に入りのセンテニアル・モールの店舗で買い物をすることができます。

顧客は、一度に一つの店舗だけで買い物をする必要はありません。プラットフォーム上で探している商品を検索し、それに合ったさまざまな店舗の商品を見つけることができます。例えば、ピンクのドレスを探している人は、「ピンクのドレス」と検索すれば、ショッピングモール内のすべての店舗から選択肢を見つけることができ、それぞれの実店舗に行って選ぶ必要はありません。また、商品を注文した後、配送または店頭での受け取りを選択することができます。

センテニアル社のCOO(最高執行責任者)であるWhitney Livingston氏は、Shop Now!の有用性について次のように述べています。「これにより、お客様はモールに来る前に日常品の買い物やホリデーシーズンに欲しいアイテムをオンラインで検索し、事前に来店計画を立てることができます。Shop Now! のプラットフォームでは、オンラインであれ対面であれ、お客様が買い物をしたい場所でお客様をお迎えすることができ、『地元の小売店に愛着を持っていただくためのツールを提供する』という、新しくユニークな施策を行っています」。

Eコマースビジネス戦略にシフトするモールとその必要性

パンデミックによる規制が解除されたことで、多くの消費者がより買い物をするようになりました。しかし、モールの入場者数は回復しているものの、パンデミック前の数字には戻っていません。これには、Eコマースの台頭だけでなく、さまざまな要因があります。

パンデミックの影響で多くの人が自宅で仕事をするようになり、現在でも多くの企業が従業員に在宅勤務をさせています。つまり、一般消費者の日常生活が大きく変わったのです。仕事が終わるまで待ってから買い物をするのではなく、お店やモールに立ち寄ってさっと買い物ができるようになりました。また、仕事用の服などを着る機会がまだ少ないため、買い控えも起きています。

最も重要なことは、買い物の場を提供するだけでは顧客を維持できないため、Eコマースはモールのマーケティング戦略として必要な手段になっているということです。モールの来場者数は、パンデミックが起こる何年も前から減少してるのです。[5]

モールの最良のマーケティング戦略は、モール以上の存在になること

パンデミック後の世界にショッピングモールを持ち込もうとするセンテニアル社の試みは、他のモールが追随するような成功モデルとなる可能性があります。しかし、商品をオンライン化するだけでは、アメリカのモールを救うことはできません。

Eコマースによってモールが完全に死んでしまうことはないでしょうが、顧客を物理的に空間に出入りさせる施策が必要です。専門家は、顧客を呼び戻すためには、従来のモールのスペースに新しいプロジェクトを追加する必要があると提案しています。例えば、面白いアート作品やコンサートイベントを開催したり、テナントを増やしたりすることで、モールは顧客を惹きつけることができます。また、有名ブランドの店舗ではなく、地元の企業を受け入れることを検討しているモールもあります。その他にも、医院や歯科医院など、予約した人が集まるようなビジネスにテナントを拡大することも検討しているモールもあります。

今ショッピングモールは、生き残りのためにその「あり方」を根本的に変えていかなければならない状態にあるのです。

 


参照元:

[1] https://www.businessinsider.com/retail-apocalypse-means-80000-store-closures-next-5-years-2021-4

[2] https://www.latimes.com/fashion/la-ig-wwd-mall-fell-out-of-fashion-20171229-story.html

[3] https://centennialrec.com/retail-places/centennial-collection/

[4] https://retail-insider.com/press-releases/2020/10/centennial-rolls-out-first-to-market-us-omni-channel-shopping-platform/

[5] https://www.businessinsider.com/the-rise-and-fall-of-the-american-mall-2020-7

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