ホーム ブログトップ 【リブランディング成功事例】オールドスパイスに学ぶ、ブランドボイスの重要性

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米国マーケティングトレンド研究会 2022.04.06

【リブランディング成功事例】オールドスパイスに学ぶ、ブランドボイスの重要性

アメリカの男性向けデオドラントの定番ブランドであるオールドスパイスは、2000年代、競合他社が新たに市場に参入してきたことにより、苦戦を強いられていました。しかし2010年、ブランドボイスを刷新したことを機に、大逆転を果たしました。

ブランドボイスとは?

はじめに、ブランドボイスとは一体何なのか?簡単に言えば、ブランドボイスとは、ブランドの「個性」のことです。例えばあなたのブランドが人間だとしたら、どんな思想の持ち主で、どんな語り口調でコミュニケーションをとり、世の中に対してどんなスタンスを示しているのか?と考えるとわかりやすいかもしれません。その全てが、ブランドボイスを形成し、消費者の中でやがてブランドイメージとなっていきます。

SNSの管理や分析を行うSprout Social社が、「どんな発信をしているブランドが記憶に残りやすいか?」について調査したところ、「印象に残る発信をしているブランド」と回答した人は40%、「個性がはっきりと出ているブランド」と回答した人は33%、「説得力のあるストーリーテリングをしているブランド」と回答した人は32%でした[1]。

これらの回答から、消費者とブランドが強い関係を構築するために、ブランドボイスが重要な役割を担っていることがわかります。

オールドスパイス :老舗ブランドのピンチ

オールドスパイスは、1937年に生まれた男性向けデオドラントのブランドで、長い間アメリカで愛されていたブランドでした。しかし2000年代半ば、競合ブランドのAxeがブームを巻き起こし、若い世代に広く受け入れられるようになっていました。オールドスパイスは老舗ブランドであるため、年配の顧客が多く、製品の定番の香りも「おじさん臭い」と言われ、ピンチに陥っていました。

そんな状況の中、オールドスパイスが刷新したのは、「おじさん臭い」と言われていた製品の香りではなく、ブランドボイスでした。2010年を皮切りに、オールドスパイスはミレニアル世代に向け、新しいブランドボイスを発信し始め、リブランディングを実施したのです。

2010年の転機:ブランドボイス刷新を含めたオールドスパイスのリブランディング

もともとこのブランドは「力強い男性」をコンセプトとして、帆船のロゴマークで販売されていました。そのブランドボイスは「男らしさ」を男性に直接語りかける、やや堅いトーンのものでした。

例えば、かつては、「女性に好かれるためにオールドスパイスを使っている」と男性が話しているシーンや、「男性から漂うオールドスパイスの香りが好きだ」と話す女性が登場する広告もあり、男らしさをストレートに売りにするような広告を展開していました。

昔のオールドスパイスの広告にも、時折ユーモアは含まれていましたが、2010年、そのブランドボイスはユーモア一色になりました。アメリカのミレニアル世代が好む、ばかばかしさを楽しむ、皮肉めいたスタイルのジョークを用いるようになったのです。

新しい広告は、男らしさではなく、「男らしさのパロディ」に焦点を当てた風変わりなものとなりました。

2010年に展開された広告

この広告はスーパーボウルの直前にYouTubeへ投稿され、SNS上で瞬く間にバズりました。このYouTube投稿は2010年2月4日にアップロードされてから現在までの間に、6000万回以上の再生回数を獲得しています。

2010年7月、オールドスパイスの売上は125%増加し、男性向け身だしなみ用品市場のリーダーに返り咲いたのです[2]。

オールドスパイスのリブランディング 3つの成功要因

このリブランディングには大きく3つの成功要因があります。

成功要因①:ターゲットの見直し

一つ目は、ブランドボイスと密接に関係している「ターゲットの見直し」です。2010年のリブランディングの際、オールドスパイスはターゲットを男性から女性へ大きくシフトさせました。親会社であるP&Gが行った調査によると、男性のボディウォッシュの60%は女性が購入しているというデータが明らかになったからです[2]。

成功要因②:ブランドボイスの刷新

二つ目の成功要因は、「ブランドボイスの刷新」です。ターゲットシフトによって、従来の「男らしさ」のステレオタイプを面白おかしく女性へ語りかける新たなブランドボイスが生まれました。これによって、オールドスパイスはブランドの個性を際立たせることができたのです。

成功要因③:メディアプランニング

そして最後の成功要因は、「メディアプランニング」です。オールドスパイスは従来のテレビ広告を中心としたメディア展開ではなく、ミレニアル世代向けにSNSに注力したのです。昔であればスーパーボウルのCMに多くの予算を費やしていたところ、スーパーボウルの直前にYouTubeなどのSNSで発信し、話題づくりをしたことによって、しっかりと狙っていたターゲットへアプローチすることができました。

オールドスパイスのリブランディング成功事例から学べることは、ブランドボイスの重要性はもちろんのこと、そのブランドボイスにたどり着くまでにマーケティング調査が必要不可欠であるということです。また、ターゲットとの大事なタッチポイントであるメディアを慎重に選び、コミュニケーションの流れをつくることもキャンペーンの成功に欠かせません。マーケティングは常に統合的な視点で考えなければならないということを、改めて感じさせられる事例でした。

Ys and Partnersはアメリカと日本の両国で、消費者調査に基づくブランド戦略構築を得意とする統合型マーケティングエージェンシーです。ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

参照元

  1. https://sproutsocial.com/insights/index/
  2. https://www.youtube.com/watch?v=vR0hDkMKVhY

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