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毎日大量の人がワクチンを接種し、店舗の収容人数制限を解除し始めている中、アメリカの小売業者は実店舗の将来を懸念しています。この1年間、オンラインで過ごした人々が、果たしてリアル店舗に戻ってくるのだろうか、というのが共通の悩みです。人々の消費行動には目に見える変化が見られるものの、全体を通してみると、小売業の未来は明るいと言う意見が大半を占めています。
はじめに
2021年3月現在、米国では新型コロナウィルスに対するワクチンの展開が驚異的なペースで進んでいます。州ごとに状況は異なりますが、米国では6,000万人以上の人が、2回接種型のワクチン、またはジョンソン・エンド・ジョンソンの1回接種型のワクチンのうちのどちらかを少なくとも1回は受けています1。一部の州政府は、今月からマスク着用義務を解除し、小売店を含む公共施設のフル稼働を許可しています。
では、アフターコロナの世界では、実店舗の小売店はどうなっていくのでしょうか?
ここでは、パンデミックによって引き起こされた変化のうち、日常生活に戻っても元に戻らない可能性のあるものを探ってみましょう。
1)カーブサイド・ピックアップ(店舗外での商品受け取り)
このパンデミックにより、ほとんどの大手小売業者が導入したのは、郊外での受け取りサービスです。消費者はインターネットで商品を注文し、店の外で受け取ることができます。いわば実店舗が活きた倉庫となり、ショッピングカート→倉庫→自宅というふうなショッピング体験が確立されました。
最初のロックダウン措置が解除された後も、店舗はフル稼働できず、限られた人数しか店内に入れないため、店の前に行列ができるのは日常的になっていました。しかし、カーブサイド・ピックアップを導入したことで、店舗内の人数を気にする必要がなくなりました。並んで待つのではなく、オンラインで注文することで待ち時間がなくなり、感染症のリスクも軽減されました。
このシステムは規制が解除された後も役立ちます。店舗がパンデミック前と同じ顧客入店を認められるようになった後も、店頭での受け取りを常設化することにより、混雑による不便さは解消されます。たとえ店舗が混み合っていても、オンラインで注文すれば、より多くの商品を購入することができるのです2。
2)電子決済
電子決済やクレジットカードは古くから存在していましたが、2020年には現金を使わない支払い方法を採用する店舗が大幅に増加しました。これにはいくつかの要因が考えられます。
ご存知の通り、パンデミックの際には、病気の拡散を抑えるために人と人との接触を減らすことが必要です。つまり、自分の手から他人の手を介してお金をやり取りすることは、双方の健康に大きな、そして不要なリスクをもたらすため、他の支払いオプションがあるのであれば、安全確保のために現金以外の方法の採用が望ましいと言えます。
非接触型の決済はこの1年間で一般的になりました。人口の大半がワクチンを接種したとしても、新型コロナウィルス発生以前のように現金が広く使われるようになるとは考えにくいでしょう3。
3)フードデリバリー
カーブサイド・ピックアップと同様に、ホームデリバリーサービスが選択肢の一つになったことで、多くの店舗は新たな宅配システムを開発したり、既存の宅配システムを利用したりしてオンライン購入への対応を迫られました。
特に食品の宅配システムは昨年急増しました。DoorDash(ドアダッシュ)のような企業は、これまで以上に多くの在庫数を記録していますが、全面的な営業再開を目前に控え、この記録的な数字がこのまま続くのかどうか、懐疑的な経済人もいます4。
レストランの全面的な営業再開が認められた場合(おそらく今年後半になると思われます)、フードデリバリーサービスは需要が低下することが予想されていますが、その損失がどの程度になるのか、またその損失が持続するのかどうかは不明です。
この1年間で、人々はお気に入りのレストランからテイクアウトオーダーすることに慣れました。規制が解除されると、安心してレストランで食事ができるという喜びから、人々は利用を再開するでしょう。しかし、過去一年にそうしてきたように、家で食事をしたり、テイクアウトをしたりする割合も一定数は残るだろうと予想されています。
まとめ
Deloitte(デロイト)の調査によると、アメリカ人の対面での買い物に対する態度は軟化してきています。対面式サービスの利用について、56%の人が「安全だと感じた」と答え、64%の人が「買い物に出かけるのは安全だと感じた」と回答しています5。とはいえ、専門家は、各州における公共スペースの全面再開のペースに懸念を抱いています。
アメリカの小売業の将来を考える上で、もうひとつ考慮しなければならないのが、アメリカ人の現在の経済状況です。パンデミック前の失業率は3.5%でしたが、2020年4月末には14.8%にまで急上昇しました。多くのアメリカ人は2020年の苦難からまだ経済的に回復していません。2021年末には失業率が4.1%まで下がると予測する専門家もいますが、多くの人は昨年の損失を補うために「節約」モードに入っており、店頭での衝動買いに使える可処分所得はそれほど多くないでしょう6。
2020年の小売業界は、一部の勝ち組を除き大打撃を受けました。が、今後の世界がパンデミック前とは異なる姿であったとしても、急ピッチでデジタル化を進めた小売業の未来については明るいと言えるでしょう。
参照元:
[1] https://www.nytimes.com/interactive/2020/us/covid-19-vaccine-doses.html
[2] https://www.cnbc.com/2020/12/17/coronavirus-is-reshaping-retail-stores-for-good.html
[3] https://www.the-future-of-commerce.com/2020/12/10/retail-2021-picking-up-the-pieces-after-covid/
[4] https://www.freightwaves.com/news/could-covid-vaccines-kill-food-delivery-service-growth
[5] https://www2.deloitte.com/us/en/insights/industry/retail-distribution/consumer-behavior-trends-state-of-the-consumer-tracker.html
[6] https://www.cnbc.com/2021/03/08/goldman-sachs-forecasts-a-jobs-boom-says-unemployment-rate-could-fall-to-4point1percent-by-the-end-of-2021.html
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