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ここ数ヶ月で一躍スターダムを駆け上がったYouTuber / TikTokerがいます。彼の高評価で美容品は飛ぶように売れ、酷評を受けたブランドは危機感を覚えるほどの影響力。なぜ彼のコンテンツは、Z世代から絶大な人気を集めているのでしょう?
コロナ禍で人気急上昇したTikToker
Hyram Yarbro(ハイラム・ヤーブロ)さんはハワイ在住の若干24歳。もともとは、百貨店Saks Fifth Avenue(サックス・フィッフス・アベニュー)のメイクアップアーティストでした。スキンケアに興味が芽生え、化粧品の感想や、成分に関する教育コンテンツをYouTubeやTikTokで配信し始めました。そんな彼がスターインフルエンサーになったのは、つい最近のことです。
2020年3月時点のハイラムさんのTikTokフォロワー数は10万人でした。そこからわずか半年で、彼のフォロワーは600万人を突破しています。1コロナ禍でスキンケアへの関心が高まったことも影響し、特にTikTokで急激にブレイク。朝の情報番組みTODAY(トィデイ)のインタビューでは「1日にして、TikTokのフォロワーが80万人増えた日もありました」2とハイラムさんは語っています。彼の人気の理由はどこにあるのでしょう?
シビアな意見も正直に発信する
ハイラムさんの発言は一貫して「正直」です。それは、どんなに有名なブランドを扱っていたとしても、変わりません。たとえば、フェイススクラブで有名なドラッグストアコスメSt. Ives(セイント・アイブズ)については、肌に炎症を起こし、長期的なダメージを与える製品だとして、酷評を動画に残しました。1980年から長らくアメリカの化粧品マーケットで愛され続けてきたブランドであっただけに、ショックを受ける視聴者も多かったようです。中にはそれまで愛用していたにも関わらず、St. Ivesの製品をすべてゴミ箱に捨てたという女子高生もいます。
スキンケアブランドDermalogica(ダーマロジカ)がスポンサーした動画でも、忌憚のない意見を述べています。Dermologicaにスポンサーされているにも関わらず、製品の効果が感じられないため、競合商品をおすすめしています。企業のマーケティング予算を使って、ここまで正直な意見を述べることは、日本ではあまりないことかもしれません。しかし、この清い姿勢が消費者の信頼を獲得しているのです。
ハイラムさんのモットーは「成分は嘘をつかない」。独学で得た化粧品成分に関する知識を活用し、肌にとって良くない成分を含む製品があれば、遠慮なく視聴者に発信しています。Dermalogicaの製品には、複数のエッセンシャルオイルからくる香料が含まれています。一見、肌に良いもののように思えますが、ハイラムさんの解説によると、たとえ自然由来の香料でも適正量を超えると、肌にとって刺激となり、アレルギー反応を起こしかねないとして、批判しています。
一方で、ドラッグストアコスメCeraVe(セラヴィー)はハイラムさんが絶賛しているブランドの一つです。CeraVeの創業者によると、ハイラムさんの動画でフィーチャーされる前までは、Z世代とブランドの接点は薄く、唯一のタッチポイントは皮膚科医からの紹介でした。ハイラムさんの高評価によって、CeraVeは新たな顧客セグメントへリーチすることができました。
インフルエンサーマーケティングに対する企業の心構え
Z世代の消費者は、ブランドの良い面しか語らない、従来のインフルエンサーPRにうんざりしている傾向があります。だからこそ、常に正直な意見を発言できる人ほど、彼ら彼女たちは信頼しているのです。
そして、そのようなインフルエンサーに商品PRを依頼する企業は、寛容な姿勢を示す必要があります。ハイラムさんと組むブランドは、彼が自分たちのブランドを批判するかもしれないことを覚悟しているのです。それでもハイラムさんに依頼が殺到するのは、彼が消費者の信頼を獲得し、その信頼がブランドにとって価値であることを理解しているからに違いありません。
コロナによって、人々は本質的に必要なものしか求めなくなりました。そんな時代において、聞こえの良い言葉だけを並べた広告や、派手なだけのPRは響かないのです。激変する市場で挑戦する企業にとって、消費者の「信頼」はますます重要となってくるでしょう。
2 https://www.today.com/tmrw/tiktok-star-hyram-making-skin-care-accessible-everyone-t187082
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