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「My AI」は、OpenAI の GPT テクノロジー をベースに Snapchat 用にカスタマイズされた新しい実験的なチャットボットで、2023年4月現在、すべてのSnapchatユーザーが無料で利用できます。これを使ってSnapchatのプロフィールに新しいフィルターやコンテンツを生成するのをサポートすることも可能です。今回はこの「My AI」を通して、話題のOpenAIについて、考えてみます。
「My AI 」がローンチされた背景
最近のソーシャルメディアプラットフォームが牽制し合っていることは、どこが最も効果的にAIを統合できるかということではないでしょうか。Instagramが写真の、TikTokが短編動画のそれぞれ代名詞であるように、“AIといえばこのプラットフォームだよね”とポジショニングされるように、各プラットフォームはしのぎを削っています。
そこでSnapchatは、My AI機能を立ち上げ、このレースに参加しようとしました。しかし、発売から数日で、すでにこの機能をめぐる複数の論争が起きてしまったのです。ローンチ数日で否定的なフィードバックが発生し、多くのユーザーがApp StoreのSnapchatのレビューページで苦情を訴えています。
ChatGPTがAIレースを加速させた!?
そもそも、なぜ多くのソーシャルメディアプラットフォームがAI機能の追加を検討しているのでしょう。OpenAIが2022年11月に公開し、今注目が集まっているChatGPTの成功が、その要因だと考えられます。
このチャットボットの登場は、普段文章をつくる機会が多い企業だけではなく、一般ユーザーもAIテクノロジーに興味があるということをあらわにしたのです。事実、ChatGPTはローンチから数日で、100万ユーザーに到達した最速のアプリケーションのひとつとなりました。100万人に到達するのにかかった日数はわずか5日で、Instagramが100万ダウンロードに到達するのに2.5ヶ月以上かかったことを考えても、これは大きな衝撃でした[1]。
そしてAIアプリケーション(特にチャットボット)に対する関心はますます高まっており、今年に入ってから150以上のAIチャットボットアプリがApp Storeに登場しました[2]。チャットボット含めAI搭載アプリのダウンロード数は、前年比で1506%増加しています。さらに、これらのアプリケーションのアプリ内支出は増加しており、2023年3月だけで300万ドル以上を売り上げているようです[3]。
チャットボットとAIがまだ発展途上であることは、多くの専門家が認めていますが、特にソーシャルメディアを扱う企業は、このトレンドをできるだけ早く自社の製品に取り込もうとしているのです。
Snapchatが提供する「My AI」の問題点
Twitter Blueと同様に、SnapchatにはSnapchat Plusというサブスクリプションサービスがあり、ユーザーは月額料金を支払うことで、無料ユーザーには利用できないボーナス機能を利用することができます。もともとMy AIはこのSnapchat Plusの加入者限定の機能でした。しかし、2023年4月中旬より、全ユーザーに提供されるようになりました。
Snapchatのウェブサイトでは、My AIを「実験的でフレンドリーなチャットボット」として紹介しています[4]。ユーザーが自分のSnapchatのコンテンツを増やしたり、他のユーザーと会話したりするのに役立つ相手役として売り込んでいるのです。例えばいくつかのキーワードを入力するだけで、レンズ(Snapchatのフィルター版)を生成するのに使うこともできます。
一方で、他の AI 搭載チャットボットと同様に、誤った情報を含んでしまう可能性や、 整合性を欠いてしまう、エラーとなる回答をしてしまう可能性があることも事実であると認めています。他にも、My AI との会話はすべて保存され、製品体験の向上のために利用されることがあるため、秘密を共有することやアドバイスを鵜呑みにするようなことを控えるようにともされています。
しかし、このローンチから数日で、App StoreのSnapchatアプリのページには、星1つのレビューが殺到しています。その理由は主に3つあると考えられます。
まず、多くのユーザーが、アプリにMy AIが勝手に表示されたことに不満を抱いています。この機能は、ユーザーのメインの受信トレイでスペースを取っているのですが、ここはもともと、アプリ上で他のユーザーとコミュニケーションをとる際に、最も多く利用する場所で受信箱の一番上に固定されているため、このチャットボットが全く必要ないユーザーにとっては邪魔になったのです。そして今のところ、このチャットを削除する唯一の方法は、Snapchat Plusに加入している人だけしかオフにすることができません。このため、この機能を望んでいなかったのに、お金を払って削除してもらわなければならなくなった多くのユーザーが怒ってしまいました。
もうひとつの理由として、Snapchatが位置情報などのデータを収集するため、OpenAIやChatGPTがその情報にアクセスできるようになるのではないか、という不安からきているようです。My AIを使うと近くのお店やレストランを探すこともできますが、これは裏を返せばSnapchatが位置情報にもアクセスできることを意味します。つまり、Snapchatを通してそれがOpenAIと共有されているかどうかが公表されていないため、自分たちの情報がどのくらい共有されるのかがわからず、不安になるのです。
そして3つ目に、My AIが、特定の質問に対して不適切で有害な答えを出す傾向にある点です。例えば、ある人が人種差別を綴る一連の単語の具体的なアナグラム(言葉遊び)を求めたところ、My AIは簡単に人種差別を答えとして提示しました。
(参照)Twitterより
他にも、My AIが15歳以下のユーザーを装った人物に、アルコールの匂いを隠す方法を教えたり、卑猥なことを匂わせることを言葉を伝えてしまったりと、未成年に対して不適切な回答をしてしまうことが散見されました。
Snapchatは、公式サイト上で「My AI は、偏った情報、間違った情報、有害な情報、誤解を招くような情報をできるだけ回避するように設計されてはいますが、完全に間違った情報を回避することはできません。」と明言していますが、あまり回避されていない印象を持たれてしまっているのです。
Snapchatはどこで間違ったのか?
Snapchatの主な利用者は30歳以下です。まだインターネットそのものには慣れ親しんでいても、そこに溢れる情報の良し悪しについての判断が甘く、場合によってはより正しくない方向に進んでしまう可能性が高い世代です。
この世代に対して、不適切な回答が表示される可能性が高いチャットボットを使わせることはあまり良いこととは言えないでしょう。
また、この若いSNSネイティブ世代は、「同意」という概念に対しても非常に厳格です。彼らは、新機能が勝手に追加され、かつそれをオフにする機能がないことを快く思わないのです。
Snapchatやほとんどのマーケターは、AIがアプリの売上やトラフィックを促進することを知っています。従って、機能を追加し、視聴者からの好意的な反応を期待するのは理にかなっています。しかし、SNSネイティブ世代は新機能をやみくもにありがたがるのではなく、自分たちが興味のないものであれば、それを欲しがらないし、それに慣れる必要もないと考えるのです。そして恐ろしいことに、報復としてSnapchatのレビューや評判を下げることに喜びを感じてしまいます。
Snapchatがこのようなネガティブな反発を避けるためには、この機能をオプションにすることと、不適切な質問に対してMy AIが回答できる内容により厳格な制限を設けることを検討する必要があるでしょう。
まとめ:チャットボットはどこへ向かうのか
今後数ヶ月の間に、ますます多くのアプリが新しいAI機能を展開することになりそうです。これらの試みを観察して、何がうまくいき、何がうまくいかないかを理解することには価値がありますし、マーケターにとって、将来的にAI技術をどのようにビジネス戦略に加えることができるかを検討することも重要です。これは「もしかしたら、やるかもしれない」ということではなく「いつかやる必要がある」ということに他なりません。
AIトレンドを先取りすることでビジネスを先取りすることができる反面、Snapchatをはじめ、どのようなアプリで仕掛ける必要があるか、見極めることが非常に重要なのです。
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参照元
- https://explodingtopics.com/blog/chatgpt-users
- https://blog.apptopia.com/150-ai-chatbot-apps-have-launched-this-year
- https://techcrunch.com/2023/04/12/user-spending-goes-up-by-more-than-4000-on-ai-powered-apps/
- https://help.snapchat.com/hc/en-us/articles/13266788358932-What-is-My-AI-on-Snapchat-and-how-do-I-use-it
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