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アメリカやカナダ、EUは2月以降、政府職員が仕事で使う端末でのTikTokの使用の禁止を次々と発表しています。今後、民間人も含めて利用が全面的に禁止となるかどうか、まだ明確にはなっていませんが、法案が成立すれば1億人を超える利用者に影響が出るため、審議の行方に関心が集まっています。そんな中、TikTokは、動画を有料化できる新機能「Series」を発表しました。果たして、アメリカにおけるTikTokマーケティングの行く末はどうなるのか、この新機能を紹介するとともに、考えてみます。
TikTokから発表された新機能「Series(シリーズ)」
アメリカ政府はもちろん、いろいろな国がTikTokを禁止するかどうかの議論を続けている中、TikTok社は、クリエイターが動画コンテンツを収益化できるようにするための新機能をリリースしました。それが、「Series(シリーズ)」です。
これはクリエイターがコンテンツ制作に専念する代わりに、ファンからお金を集めることができるサイト「Patreon(パトレオン)」と同様の仕組みです。ファンがPatreonアカウントに寄付をすると、その限定コンテンツにアクセスできるようになっています。TikTokのクリエイターの多くは、すでにPatreonアカウントを持っており、TikTokやその他のソーシャルメディアチャンネルを通じて宣伝しています。Series機能の追加は、このようにサードパーティのサイトを介さずに、アプリ上でクリエイターを囲うことを目的としたTikTokの最新の戦略でもあるようです。
現在はまだテスト運用段階で、動画を有料販売できるのは一部のクリエイターに限定されており、かつ、TikTok社はクリエイターが得る利益の一部を、期間限定で受け取らないとしています。今後数ヵ月かけて対象となるユーザーを拡大する予定です[1]。
なぜTikTokは「Series(シリーズ)」を作るのか?
TikTokがSeries(シリーズ)を作った最大の理由は、クリエイターがTikTokのコンテンツをマネタイズできるようにするためでしょう。そもそもYouTubeのような他の動画プラットフォームとは異なり、TikTokはコンテンツの直接的なマネタイズが困難でした。これは、主に短編の動画コンテンツを提供しているため、他のプラットフォームのように頻繁に広告を流すことができないためです。YouTubeの場合、長い動画であれば途中で広告を流すチャンスも多いのですが、TikTokは15秒の短編動画なので、前や後あるいは途中に広告を流すことは、ユーザーに大きな煩わしさを与えることになるため難しいものでした。
もう一つの理由は、多くのクリエイターがTikTokのクリエイターファンドから直接的に得られる利益が低いことに不満を抱いているためです。2020年、クリエイターファンドは2億ドルを用意してスタートしたにもかかわらず、実際にいくら支払われたかを正確に公表しませんでした。翌年、クリエイターファンドの金額が10億ドルに増えたときでさえ、TikTokはクリエイターに支払う金額を共有していません[2]。
Series(シリーズ)は、クリエイターが、TikTokが適切な金額を支払っているかどうかを気にすることなく、自ら直接収益を上げることができる方法なので、不満の解消に一役買うことが期待されています。
TikTok「Series(シリーズ)」のユニークな特徴
SeriesはTikTokの投稿者が自身の動画を有料で配信できるようにするサービスです。動画の長さは通常動画の倍となる1本あたり最大20分まで対応。1つのSeriesにつき80本まで動画をアップロードできるようになっています。そしてクリエイターは視聴者が支払うべき金額を設定することができます。価格は1ドルから190ドルまで設定可能です。
なお、有料公開になるとはいえ、もちろん、公序良俗に反するような動画など、TikTokの規定から逸脱したものは引き続き禁止です[3]。
視聴者側は、動画の直接リンク、または投稿者のプロフィールページから有料動画の視聴権を購入する仕組みとなっています。有料公開することでクリエイターがファンとより親密なコミュニティを形成することが期待できるでしょう。
アメリカにおけるTikTokの今後について
最近、アメリカとTikTokをめぐるニュースのほとんどはネガティブなものばかりでした。「スマホなどにTikTokのアプリをダウンロードしている人は個人情報を中国に知られてしまう」と、国家安全保障状の脅威として捉えたアメリカ政府は危機感を募らせ、政府職員の間で「TikTok」の利用を禁止する動きをみせています。
このニュースは、これからアメリカでのソーシャルメディアの選択肢として、TikTokを取り入れたいと考えていた企業にとっては、大いに気になるところでしょう。新しい機能が追加されても、取り扱うことを躊躇することも理解できます。
しかし、米国政府がTikTokを全面的に禁止したとしても、個々のデバイスに対してそのような禁止措置を取ることは困難です。App Storeのような便利なダウンロード場所からTikTokのサポートを削除すれば、アプリの使用を抑止できるかもしれませんが、App StoreがなくてもTikTokのコンテンツにアクセスする方法は他にあります。
現在、TikTokはアメリカだけで1億5000万人以上のユーザーがいます[4]。アメリカ政府が最善を尽くしても、これだけのムーブメントを止めることは難しく、TikTokがすぐに廃れいってしまうことはないでしょう。
まとめ:Series(シリーズ)でビジネスTikTok戦略は変わるのか?
正直なところ、現段階でこの「Series(シリーズ)」機能の登場が、ビジネス的観点から何か効果を生み出せるかどうかはわかりません。
なぜならまだテスト段階であり、限定されたものだからです。ただ、YouTubeやInstagramのReelsなどの勢いを見る限り、「動画コンテンツ」の需要がますます高まることは間違いないですし、そこにマネタイズが入れば、優秀なクリエイターが集まってくる可能性も増えるでしょう。
お金を払ってでもみたいもの、というのはそれだけで価値があり、ユーザーと強い結びつきを生み出せる可能性も秘めているのです。今後どのような広がりを見せるのか、注目していきましょう。
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参照元
- https://newsroom.tiktok.com/en-us/introducing-a-new-way-for-creators-to-share-premium-content-with-series
- https://www.engadget.com/tiktok-stars-creator-fund-payouts-222006327.html
- https://www.socialmediatoday.com/news/TikTok-Launches-Series-Creator-Monetization-Option/644365/
- https://newsroom.tiktok.com/en-us/150-m-us-users
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