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お餅はどんな食べ方が好きですか?実はアメリカ人にとって、お餅はアイスクリームと組み合わされたスイーツというイメージが強いのです。近年のSNSを中心とした動画コンテンツの流行にのって、この“もちアイス”の人気がじわじわと広がっています。さらに最近では、“もちドーナツ”も一部の地域を中心に注目され始めています。今回はアメリカ人がお餅をどのように食べているのか、そもそもどのようにして広がっていったのか、ご紹介しましょう。
お餅はスイーツであり、食事ではない。
アメリカ人がいつも探しているものといえば、新しいスイーツやお菓子です。その中には日本由来の食品で人気が出てきたスイーツ、 “もちアイス”(アイスクリームをお餅で包んだもの)があります。お餅を使ったスイーツは昔からアメリカにありましたが、特にここ最近人気が出てきています。2023年半ばには全米最大級のショッピングセンターに“もちドーナツ”のショップがオープンするほど、お餅のスイーツとしてのポテンシャルが広がっているのです。
ただ、大福やお汁粉のようにあんこと合わせる食べ方は、ほとんど知られていません。さらに、おでんの餅きんちゃくやお雑煮のように、食事としてもお餅を楽しむ日本人とは違い、アメリカ人はスイーツ以外で餅を食べることがほとんどありません。多くの人がそのような食べ方を知らないのです。
どうしてこのようなことが起きているのでしょうか。
アメリカでお餅が普及することになったきっかけ。
アメリカにお餅が普及するようになった最大の要因は、もちアイスの存在です。ただ、お餅とアイスクリームを組み合わせたスイーツは、日本から輸入されたものが発祥ではありません。日系アメリカ人のフランシス・ハシモトさんとその夫のジョエル・フリードマンさんによって作られたのが始まりです。二人はロサンゼルスのリトル東京で「三河屋」という高級和菓子やデザートを扱うお店を経営していました。この三河屋は創業1910年で、もともと秘伝のお餅レシピがありました。やがて、フランシス氏は夫とともに、お餅にアイスクリームを詰めることができるレシピのバランスを見出し、1990年代にもちアイスとして発売したのです[1]。
発売当初は、小豆、抹茶、マンゴーの3種類だけだったこともあり、アメリカではあまり馴染みがないものでした[2]。その後2000年代後半から2010年代前半にかけて、アメリカ人にも馴染みのあるストロベリー、チョコレート、バニラ、マンゴー、コーヒー、バナナ、抹茶、さらにはクッキー&クリームなど、さまざまなフレーバーを発売したことで、認知度が拡大。今ではトレーダージョーズのような大手小売店でも取り扱われるようになりました。
お餅への関心は、上昇傾向。
アメリカで食品および飲料の市場調査を行うDatassentialは、お餅に対するアメリカ人の認知度のレポートを発表しました。この調査によると、アメリカのレストランのうち、メニューに何らかの「お餅」の項目があるのは、わずか2%、さらに、お餅を食べたことがあるアメリカ人は3分の1以下(29%)という結果が出ていました。
しかし、アメリカ人のお餅に対する関心は上昇傾向にあります。
(参考)アメリカにおける過去5年間の「mochi」の検索結果ボリューム。
Googleのトレンドによると、「mochi」という単語の検索結果ボリュームは着実に増えていまるからです。残念ながら、2021年3月中に「mochi」という検索語の人気が大きく急上昇しているのは、この時期にミシェル・オバマ元大統領夫人が「Waffles & Mochi」というテレビ番組に出演したことで番組名がトレンドに入った影響によるものと考えられますが、それを除いても、「mochi」の検索回数は過去5年間、増加しており、アメリカ人の中にお餅の存在が広がりつつあることが考えられます。
次の注目は、もちドーナツ!?
今アメリカでは「もちドーナツ」が徐々に人気を集めています。もちドーナツを提供する専門店が出てきているのです。
このもちドーナツは、1992年にハワイで誕生しました。やがてミスタードーナツが独自に開発したもちドーナツは、「ポン・デ・リング」と呼ばれるようになりました(現在、日本で売られているポン・デ・リングはタピオカでんぷんを使用しています)。その後、2020年ごろから右肩上がりで注目が集まっているのです。
(参考)アメリカにおける過去5年間の「mochi donut」の検索ボリューム。
アメリカで最も人気のあるもちドーナツショップは、おそらくMochinutでしょう。このチェーンは、ピーナッツバター、ストロベリーファンネル、レッドベルベットなど、アメリカ人の味覚を満足させるフレーバーのドーナツが豊富です。現在、全米に多くの店舗を展開しています。さらに2023年夏には、ミネソタ州のモール・オブ・アメリカ内にMochinutの店舗がオープンする予定です[3]。
もともとMochinutがの店舗が多かった西海岸や東海岸とは異なるエリアにオープンするということは、多くの新しい人にもちドーナツの存在を知らしめ、ひいてはお餅そのものへの興味が広がる可能性を生むでしょう[4]。
なぜ今、お餅が注目されているのか?
アメリカでお餅スイーツが注目されているのには、いくつかの理由があります。
一つは、Z世代とミレニアル世代の健康志向の高まりが大きいでしょう。Food insight調査によると、これらの世代はより健康的な食生活を送る方法を常に探していることが分かっています[5]。
お餅を使ったスイーツは、ケーキやブラウニー、クッキーなど、アメリカの伝統的なスイーツに比べてカロリーが高くありません。もちドーナツも、一般的なアメリカのドーナツよりカロリーが低いことが知られています。もちアイスクリームは、少量で満腹感を得られると認識されています。つまり、体重を増やさずにおいしいものを食べることに関心のある若い世代にとって魅力的なのです。
もう一つ考えられるのは、TikTokやInstagram Reelsなど短編動画コンテンツの流行があります。お餅スイーツのような目新しいユニークなものは動画にされやすく、新しいファンへと広がっているのです。イギリスの餅アイスクリーム・ブランドであるLittle Moonsは、製品がバイラル化した後、TikTokのプレゼンスによって売上が1300%増加しました[6]。
まとめ:日本のフードがアメリカで広がる成功の鍵
今でも日本のフードの多くは、アメリカ人には広まりにくいものです。日本の伝統的なスイーツの多くは、聞いたこともなければ、考えたこともないような食べ方をしていたり、味の想像がつかなかったりするからでしょう。
そんな中でも、お餅はアメリカ人の食生活に浸透している数少ないユニークな日本食の一つなのです。
お餅は味にクセがないため、他の食品と合わせやすく、また食感も独特で、アメリカの定番料理に新しい感覚を与えてくれるものです。また、ヘルシーなものとしても認識されています。
日本のフードがアメリカで広がる成功の鍵は、私たちが思いもよらない意外なところにあるのかもしれません。
アメリカ進出は可能性が大きい反面、難しいのもの事実です。
どんなマーケティングからはじめれば良いのか、
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参照元
- https://www.mikawayamochi.com/our-history
- https://japanhouse.illinois.edu/education/insights/mochi-ice-cream
- https://bringmethenews.com/minnesota-lifestyle/three-new-restaurants-to-open-at-mall-of-america-this-spring
- https://www.kare11.com/article/news/local/3-restaurants-sprout-up-this-spring-at-mall-of-america-bloomington/89-75ea69d7-32d1-4775-a9a3-5f1ef90db3a4
- https://foodinsight.org/spotlight-generation-z/
- https://www.tiktok.com/business/en-US/inspiration/little-moons-214
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