コンテンツマーケティングの秀逸な5つの例 -ストラテジー編-

膨大な量の情報が蓄積されているウェブにおいて、ユニークでクリエイティブなコンテンツは宝のようなものです。しかしながら、その中の全てが多くのオーディエンスを惹きつけるわけではなく、情報の波に掻き消されてしまうものも数多くあります。なぜ同じ独創性やユニークさを持っているコンテンツであるのに、埋もれてしまうものとそうでないものが出てきてしまうのか、それには軸となるコンテンツストラテジーが大きなカギを握っています。しっかりとしたコンテンツストラテジーは、そのクリエイティブなコンテンツに真の価値を与え、多くのオーディエンスを惹きつけます。
今回はクリエイティブで明確な軸を持っている、5つの秀逸なコンテンツストラテジーの事例をご紹介していきます。

1. Adobeの99U（http://99u.adobe.com/）

2012年にAdobeは99Uというクリエイター向けのポートフォリオサイトを運営するBehanceを買収しました。99Uはすぐさま高いトラフィック率を獲得し、非常に能力の高いプロのクリエイターたちを次々と取り込んでいきました。そのコンテンツの幅は次第にどんどん広がり、カンファレンスシリーズやクリエイティブに関連した書籍の紹介、ポッドキャスト、さらにはペーパーマガジンまで発行されるまでに至りました。ではなぜ99Uは短期間で多くのオーディエンスを取り込むことが出来たのでしょうか。

売上とコンテンツの維持
AdobeがBehanceを買収した2012年の12月当初、多くの人達が「Adobeは美しい作品と素晴らしいインスピレーションで満ちたクリエイターのソーシャルコミュニティを大きなAという醜い赤い文字で埋め尽くす」と噂していました。しかしAdobeは99U上で自社の「ビジネス」という側面と「アート」という側面を完全に切り離しました。クリエイターやその作品に焦点を当てた魅力的なコンテンツを発信することによって多くのオーディエンスを惹きつけたのです。実際に99U上ではAdobeの強いセールスピッチやマーケティング的な観点は全く見受けられません。Adobeは自社のセールスとコンテンツの間に境界線をしっかり維持し、99Uの本来持っている価値を最大限の引き出し、結果多くのオーディエンスを獲得しました。

2. MYOBのファイナンスハブ（https://www.myob.com/au）
MYOBはオーストラリアとニュージーランドで展開するビジネスマネジメントソリューションのプロバイダーで、彼らは主に企業のファイナンス管理サポートや簿記係とファイナンスサービスのプロとを繋ぐサービスを提供しています。ユーザーはMYOB上で事業管理と情報特化のコレスポンディングハブを利用することができます。彼らの主なオーディエンスには、まだ初めて間もない小さいビジネスを持つ企業、そしてもっとオペレーション細部へのインサイトが必要な大企業の2つがあります。
MYOBが抱えるカスタマーの理解
NYOBのコンテンツストラテジーには、「多くの企業は成長過程に多くの会計や金融における決断を迫られることが多々あり、MYOBはそれらの状況を常に知らせ最適な決断へと導く」とあります。彼らは各企業の位置するビジネスステップやニーズにあわせ、最適な形で必要な情報を提供することを心がけています。始まったばかりのビジネスには事業立ち上げにおけるファイナンスの心得など、次の事業段階へ進もうとしている企業には、成長に必要な財務事項等のアドバイスを提供しています。何よりも自身のメインの顧客が誰なのか、状況を深く理解し、最適なコンテンツを配信していくことで多くのハブ利用者を獲得しました。

3. Deloitteの幅広い専門領域に特化したハブ（https://www2.deloitte.com/us/en.html）

Deloitteはボストンに拠点を置く、主に会計監査や金融サポート、リスクマネジメントなどを行うコンサルタント会社です。彼らの受けもつクライアントの業界は、国政府から生命科学業界までと幅広いことで有名です。彼らの事業では「知識」こそが商材であり、実用的かつ効果的なコンテンツを配信することは彼らのマーケティング戦略において最も重要な事でもあります。彼らのコンテンツマーケティングにおける強みは、その長年の経験から得たコンサルティングに関する情報や知識を発信出来ることです。

必要としている情報にアクセスしやすくする
幅広い業界の企業をサポートしてきたDeloitteですが、もちろん彼らの運営するハブのオーディエンス層も非常に幅広くなっています。彼らはあえてコンテンツの内容を絞らないという戦略をとり、様々な業界や事業に関するトピックを配信していきました。様々なトピックにフォーカスしたコンテンツハブは各オーディエンスからすると、無駄な情報が多いと感じとられやすくもあります。しかしDeloitteはトピックタグを利用し、各オーディエンスが本当に必要な情報だけを検索でき、簡単に閲覧できるようにしました。様々な業界のオーディエンスが、簡単に自身の業界と関連する記事を見つけられることで、見事にその欠点を解決しました。

4. First Roundのマガジン（http://firstround.com/）
近年FlybridgeやNextViewなどのベンチャーファームは、ベンチャーキャピタルに関してのコンテンツを起業家向けに多く提供しています。その中でもFirst Round Ventureは、マネジメント、セールス、マーケティング、エンジニアリング、デザイン、製品、文化、女性の9つの観点からスタートアップにおける情報を発信しています。
ストーリーの共有
First Roundは、ただベンチャーキャピタルのトレンド、考え、そして見識を共有するだけではありません。彼らが投資、サポートしたベンチャーキャピタルとのストーリーを発信し続けています。投資やサポートを通じ、彼らが今までに構築してきたネットワークにの中には様々なストーリーがあり、それらは起業家たちにとって過去の事例、ノウハウとして大変貴重な情報になっています。

5. GEのInstagramアカウント（https://www.instagram.com/generalelectric/?hl=en）

ツイッターフォロワー数337,000人以上、YouTube登録者数65,600人以上を抱えるGEはオーディエンスをどの様に引き付けていくかをよく理解しています。彼らのInstagramアカウントも例外ではなく、それらのソーシャルメディアチャネルを通じ、彼らの事業に関係する科学や最新技術などの素晴らしさや驚きを発信し続けています。結果彼らのInstagramのフォロワー数は185,000人以上にも達し、高いエンゲージメント率を獲得しました。各投稿には毎回1000を超えるLikeとコメントが寄せられています。
ニックネームをフォロワーに名付ける
これは全ての企業で成功するとは限りませんが、GEは彼らのソーシャルメディア上のフォロワーを「飛行機オタク(AVgeeks)」と呼んでいます。オーディエンスにあだ名をつけたことはたちまち話題になり、#AVgeeksというハッシュタグが今では多くのGEの投稿に使われるようになりました。このあだ名をつけるという事が、親近感やコミュニティ意識をコンテンツを通じ作りだし、多くのフォロワーのエンゲージメント率を高めることに成功しました。
いつまでも情熱を持ち続ける
GEの様に歴史が長く、巨大な企業であると、ソーシャルメディアなどの新しいプロジェクトを行うときに、今まで築き上げてきた企業イメージを守るために保守的でまじめなアカウントになりがちです。しかしGEはその由緒正しい歴史ある企業というイメージに反し、「ユーモア」を投稿に取り込み、彼らのもつまるで新しい起業家のような情熱を表現していきました。その結果B2C企業のように多くのオーディエンスがGEに対し興味を示すようになり、高いエンゲージ率を獲得していきました。

コンテンツマーケティングにおいてストラテジーをしっかり根幹に据えることで、軸となるコンセプトや方向性に則したコンテンツを創出できるようになります。そしてそのコンテンツの価値を最大限に引き出し、有用な情報をより多くの正しいオーディエンスに伝えることが可能です。
次回の「コンテンツマーケティングの秀逸な5つの例 -コンテンツ編-」ではそのストラテジーに沿った5つのクリエイティブなコンテンツ事例を紹介します。

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参考記事
http://blog.hubspot.com/blog/tabid/6307/bid/33505/10-B2B-Companies-That-Create-Exceptional-Content.aspx
http://99u.com/
http://99u.com/articles/52605/claudio-guglieri-the-secrets-of-design-leadership
http://99u.com/articles/52533/artists-evolve-the-dangers-of-creatively-typecasting-yourself
http://myob.com.au/
http://myob.com.au/blog/category/end-of-financial-year-for-accountants/
http://www2.deloitte.com/us/en.html#
http://firstround.com/review/magazines/
http://firstround.com/review/What-to-Do-When-Youre-the-Only-Designer-Theyve-Got/
https://www.instagram.com/generalelectric/
http://mytwoandahalfcents.com/binary-strategy-businesses-will-win/