ブログ

米国マーケティングトレンド研究会 2021.08.30

Amazonの最新ビジネスプラン。実店舗で低迷するデパート業界に参入？

１ヶ月に１回、マーケティングトレンドやセミナー情報をお届けしています。
ぜひご登録ください！

Amazon（アマゾン）は、落ち込んでいるオンライン販売の売上を補うために、実店舗のデパートを開設しようとしています。アメリカの小売市場では、デパートは何年も前から苦戦していますが、アマゾンの計画では、この実店舗は店舗サイズを縮小し、顧客に対して、これまでデジタル上でしか提供していなかった商品に対する新たなアクセスを提供することで、デパート業界を刷新したいと考えています。

アマゾンは、究極のEコマースサイトとしてその名を轟かせています。どこにいても簡単にアクセスできるアマゾンは、利便性を重視し、対面式の買い物からオンラインショッピングへのトレンドを単独で牽引してきました。そのアマゾンが、新たデパートの店舗を作り、顧客が直接買い物をできるようにする計画を発表しました。

アメリカのデパートの歴史を振り返る。

かつて、デパートは小売業界の主要な収益源でした。しかし、アマゾンをはじめとするEコマースサイトは、そのような大規模な多層階店舗に訪れる必要のないショッピング方法を生み出しました。アマゾンが普及したことで、デパートやショッピングモールなどの大規模なショッピングスペースからの客足が遠のきました。実際、デパートやモールが潰れると、アマゾンがその空き地を買い取ってフルフィルメントセンター（アマゾンの物流拠点）を建設することもあります。[1]

また、近年デパートが抱える問題のひとつに、営業にかかる費用が挙げられます。これだけの広さのスペースを確保するためには、多くのエネルギーとスタッフ、そして収益が必要です。残念ながら、デパートの人気が下がってきているため、営業を続けることが難しくなっています。[2]

では、デパートが営業存続に苦労しているにもかかわらず、なぜアマゾンはデパートを作ろうとしているのでしょうか。

アマゾンが実店舗のデパートを作る理由。

アマゾンがデパートのような実店舗を建設・維持することに興味を持つのには、いくつかの理由があります。

ひとつは、人々が欲しい商品を直接見て、触れることができるという点が挙げられます。オンラインで商品を注文する際、特に衣料品の場合はなかなか難しいものがあり、モデルの写真と自分の着用姿が同じように見えない場合もあります。試着室がある実店舗の小売店では、このような事態を避けることができますが、アマゾンで服を購入する場合は、そういった試着設備はありません。アマゾンは、購入したい服を試着してもらうための物理的なスペースを設けることで、低価格を維持しつつ、期待外れによる返品を減らすことができます。

アマゾンというと、家電や書籍など特定の商品しかイメージできない人がいることも理由のひとつです。実店舗でさまざまなコーナーを展開することで、お客様にアマゾンの本格的な在庫の選択肢を知ってもらい、今後もアマゾンで買い物をしてもらえるようにしたいと考えているのです。

また、アマゾンは、店舗サイズを従来の百貨店よりも大幅に縮小しようとしています。従来の百貨店では、10万平方フィート以上のスペースが必要でしたが、現在、アマゾンでは3万平方フィートの広さの店舗を計画しています。アマゾンは、床面積を小さくすることで、一般的な百貨店よりも経費を低く抑えることができ、さらに、顧客にとっても、狭いフロアプランのほうが楽に移動できるという利点があります。

アマゾンがデパートを作ろうとする最大の理由は、ライバルであるWalmart（ウォルマート）に対抗するためだと考えられます。アマゾンとウォルマートは、世界最大の小売業者です。ウォルマートは2020年にEコマースの売上を拡大し、79％の成長を見せました。アマゾンは米国のEコマースの売上高の40％を占めていますが、ライバルがデジタル領域で地盤を固めるのを見て不安を抱いているのです。[3]アマゾンは、実店舗を作ることで、買い物の利便性や掘り出し物を求める顧客を獲得し、ウォルマートと競争していきます。[4]