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アップルが2021年春のiOSアップデートでATT(App Tracking Transparency)を導入してから、多くの人がフェイスブックによるデータの追跡を拒否しています。これにより、広告ターゲットの情報収拾能力が低下し、売上の追跡が以前よりも不正確になるという問題が起こっています。しかし、フェイスブックが他のどのソーシャルメディアよりも多くのユーザーを抱えている限り、今後も強力なマーケティングツールであり続けると考えられます。
アップルは現在、iOS 14.7のデビューを控えていますが、iOS 14.5の機能ほどの波紋を呼ぶことはなさそうです。
アップルは、iOS 14.5のアップデートで「ATT(App Tracking Transparency)」という、全く新しい機能をiPhoneに追加しました。この機能により、ユーザーはデータの追跡を許可するアプリを選択することができるようになりました。これまで、企業はアプリ内でユーザーのデータを追跡し、そのデータを使用して、ユーザーが購入するその他の製品やサービスを予測することができました。これは常にユーザーの許可を得ずに行われていました。
しかし現在の仕様では、ユーザーが新しいアプリを開くと、そのアプリのデータの追跡を許可するかどうかが選択できるようになっています。これは、個人のプライバシーにとっては良いことですが、フェイスブックのように、広告販売においてデータに依存していた企業には多大な影響を与えています。
フェイスブック広告は有効か?ユーザーデータがないことでゆらぐフェイスブック広告の正確性
6月上旬にリリースされたiOS 14.5は、まだ数ヶ月しか経っていませんが、すでに話題になり始めています。ブルームバーグが行った調査によると、ほとんどの人がアプリによるデータの追跡を拒否しています。iPhoneユーザーの75%はiOS 14.5以降にアップグレードしていますが、そのうちフェイスブックなどのアプリにデータを追跡されることに同意しているのはわずか25%です。[1]
フェイスブックの広告主は、この動きをすでに懸念しています。なぜなら、アプリでデータを追跡することができて初めて、「何件の売上があったか」「どの広告が最も効果的に機能しているか」「今後の広告キャンペーンをどのように改善すればよいか」などを正確に把握することができるからです。この影響は、すでにフェイスブックの広告主にも及んでおり、あるメディアバイヤーは、「フェイスブックは、クライアントの広告による全ての売上を把握できなくなった」と報告しています。ATT機能が存在する前は、フェイスブックはほとんどの売上をキャッチして広告主に報告することができました。しかし、最近の報告では、クライアント1社の売上のうち、フェイスブックが把握しているのは約62%にとどまっています。この数字は、フェイスブック広告にあまりお金をかけられない中小企業や広告主の場合はさらに低くなります。また、あるメディアバイヤーは、クライアントのShopify(ショッピファイ:eコマース用のプラットフォーム)アカウントで確認できる売上と、フェイスブックが広告から報告している売上との間に57%の食い違いがあるとも伝えています。[2]
あるモバイル分析(モバイルアプリケーションやモバイルデバイスにおける、顧客行動の分析)では、フェイスブックユーザーの20%のみがデータの追跡に同意した場合、フェイスブックは1四半期で最大7%の収益を失う可能性があると予測しています。ちなみに、フェイスブックは2021年の第1四半期で、広告収入だけで255億ドル近くを稼いでいます。「その他」の収入源がわずか7億3,200万ドルであることを考えると、フェイスブックが広告事業を強固に維持していきたいと考えているのは明らかです。[3]
フェイスブックは、iOS 14.5のリリース前に、ATTの追加に対抗しようとしました。マーク・ザッカーバーグ氏は、アップルをフェイスブックの最大の競争相手のひとつと公言しています。2021年初頭、フェイスブックはこれらの新しいプライバシー機能に関して、アップルを相手取った、独占禁止法に基づく訴訟を計画していることを発表しました。フェイスブックはこの機能に関して、顧客のプライバシーをサポートする動きに見せかけた、アップルの競争相手に対する対抗措置と見ています 。[4]
フェイスブック広告を使わないソーシャルメディアマーケティング戦略は可能か
ソーシャルメディアマーケティング戦略の多くは、フェイスブック広告に大きく依存しています。多くの若者、特にZ世代は、フェイスブックを古いソーシャルメディアだと考えていますが、ユーザー数が減少しているわけではありません。しかし、アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどでは、ユーザー数が頭打ちになっていることがうかがえます。一方で、アジアやアフリカなどの発展途上国では、特に特定の通信プランにて無料で利用できることから、ユーザー数が増え続けています。例えば、フェイスブックがミャンマーでサービスを開始した際には、一部の携帯電話にプリインストールされており、ユーザー同士が無料でお互いにつながることができる、と宣伝されていました。[5]
フェイスブックのユーザー数は、アメリカ国内だけでも2億2,160万人を超えています。Statista(スタティスタ:市場および消費者データの専門会社)によると、そのうちの40%以上が18歳から34歳までのユーザーです。[6]フェイスブックのパブリックイメージは、その人気の実情とはまだ大きく異なっています。この記事を書いている時点では、フェイスブックのユーザー数は他のどのプラットフォームよりも多いのです。
ユーザーに関する正確なデータがなければ、マーケティング担当者がこれまでのようにフェイスブックを活用することは難しくなります。しかし、フェイスブックの広告利用を完全に廃止したり、ソーシャルメディアマーケティングにおいて無視したりすることは、賢明ではありません。何億人ものユーザーに一度にアクセスできる、より正確で優れた選択肢が登場するまでは、フェイスブックは今後も収益を上げ続け、ソーシャルメディアマーケティングのプランには欠かせない存在であり続けるでしょう。[7]
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参照元:
[1] https://9to5mac.com/2021/07/14/facebook-tracking-app-tracking-data/
[4] https://www.vox.com/recode/22254815/facebook-apple-privacy-ios-14-lawsuit
[5] https://tarifica.com/mpt-facebook-launch-free-data-app-in-myanmar
[6] https://www.statista.com/statistics/187549/facebook-distribution-of-users-age-group-usa/
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