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米国マーケティングトレンド研究会 2020.12.28

【小売トレンド】美容のライブコマース活用例:これから小売店はどう変化する?

二度目のロックダウン禍のLAに、一風変わったコスメショップが開店しました。店内にライブコマース向けの撮影スペースもあり、売り場とスタジオの2つの役割を果たす「ハイブリッド型」と呼ばれています。しかし、この店舗には、小売の未来を象徴する、もう一つの大事な役割があるのです。

売り場とスタジオの「ハイブリッド店」。

米国のクリーンビューティーブランドBeautycounter(ビューティー・カウンター)。このブランドは全国にいる60,000人の「ビューティーコンサルタント」と呼ばれる販売員の対面販売とEコマースで成長してきました。そんなブランドが、ここにきてリアル店舗を開店したのです。

ロサンゼルスのトレンドストリートAbbot Kinney Boulevard(アボット・キニー・ブルバード)に誕生したこのスペースは、販売店と撮影スタジオが合体したような場所。ここは実際店舗に訪れた買い物客の販売店でもあり、オンラインでの買い物体験ができるライブコマースや美容にまつわる動画コンテンツの撮影もできるスタジオとして新設されました。

店内の様子はこちらからご覧いただけます。

https://www.instagram.com/p/CITlHFPhrd0/

「友達とネットショッピング感覚」のライブコマース

陽気な女性が商品を紹介する度に、画面に商品の画像が登場します。その商品画像をクリック・タップするとBeautycounterのECサイトへ飛び、購入することができます。また、商品に関する質問があれば、チャット機能を使って、その場で答えてもらえます。まるで美容好きのお友達とネットショッピングしているような感覚です。コロナ禍で対面での販売が以前より難しくなった今、このようなライブコマースが今後も増えて行くことが予想されます。

ライブコマースの様子はこちらのページの “Tour & Shop Our New Store With Meaghan”からご覧いただけます。

https://www.beautycounter.com/live

販売以外の店舗の役割とは?

そして、この店舗にはもう一つ特徴があります。それは、ブランドの理念を象徴する店内ディスプレイです。たとえば、店舗の一画には1930年代の電話器が飾られています。なぜそんな古い電話がディスプレイされているのでしょう?

アメリカでは化粧品に関する連邦法が1938年から今までほとんど改定されておらず、大きな問題となっています。EU(欧州連合)では約1,400の安全性が疑問視されている成分が法律上禁止されているのに、アメリカ連邦法で禁止されているのはわずか30品目。1この電話器は、いかにアメリカがクリーンビューティー後進国であるかの象徴なのです。そして、ディスプレイケースに印刷されているコードをスマホでスキャンすると、地元の議員へ、法改定を訴えかけるテキストメッセージが送信される仕組みになっています。

Beautycounterはこれまで80年以上変わっていない化粧品の法律に、ロビー活動を通して変革を訴え続けています。同ブランドは、安全性が疑問視される1,800の成分を自社製品で使用することを禁止し、化粧品にまつわる環境や社会問題にも積極的に取り組んできました。すべての人々に安全な化粧品を届けたいというBeautycounterの本気の想いは、このブランドのやる事なす事すべてに染み付いています。だからこそ根強いファンコミュニティが生まれたのでしょう。

この新店舗はオンラインとオフラインが交差する場所であり、小売販売の今後の姿をいち早く体現しています。それだけでなく、ブランドの理念を伝える消費者との大切なタッチポイントでもあります。

商品の「質」や「機能」で差別化がしにくくなった時代において、ブランドの「思想」は大きな差別化ポイントとなります。その思想をどれだけ世の中へ浸透させ、どれだけ人々の共感を得られるかが、勝負の分かれ道となっていきそうです。

 

 

1:https://www.fastcompany.com/40540039/how-a-beauty-brand-raised-an-army-of-30000-political-activists

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