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インスタグラムをブランディングに活用するためには、コミュニティをフォローしてくれるファンの欲求を把握していなければなりません。携帯アクセサリー会社CASETiFY(ケースティファイ)の場合、彼らは多くのZ世代とミレニアル世代(インスタグラムを最も頻繁に利用する2つの層)のニーズを掴むことができました。これらの世代(特にZ世代)は、ショッピング体験にパーソナライゼーションを求めており、ケースティファイは、消費者にクリエイティブディレクションを任せることでその欲求に応えました。
パーソナライゼーションについて。
Z世代が成長し、アメリカ経済に参入し始めたことで、新たなバイイング・パワーとなっており、彼らが購入したいと考えている商品について、どのようなニーズがあるのかを理解することは重要です。この人口層に関する市場調査によると、Z世代が満足できない特徴の1つが、パーソナライゼーションであることがわかっています。
パーソナライゼーションはカスタマイズとは異なります。多くの製品やブランドがカスタマイズされた体験を提供できるのに対し、Z世代はパーソナライズされた体験を求めています。その違いは簡単で、パーソナライゼーションとは「消費者のこれまでの行動に基づいてカスタマイズされた体験」のことです。カスタマイズとは、企業やブランドが特定の種類の個人やタスクに合わせて製品や体験を変更することです。
たとえば、既製品、カスタマイズ品、パーソナライズ品を販売している文房具会社を想像してみてください。消費者は、店舗で既製品だけでなく、インク量が通常のものより多かったり、グリップがより柔らかいカスタマイズされたバージョンのペンを購入することができます。しかし、消費者がペンをオンラインで注文する場合、ペンに自分の名前を印刷したり、グリップの種類、インクレベル、色を選択したり、自分の手に合うように長さを変更するなど、消費者は商品をパーソナライズすることができます。パーソナライゼーションとは、消費者が見られている、サポートされていると感じられるような、ユニークな体験を創造することです。
パーソナライゼーションは、顧客と直接つながるための手っ取り早い方法ではありますが、これまでは販売においてそれほど重要ではありませんでした。もうすぐ最大の消費者層となるアメリカのZ世代を対象にした調査では、ショッピングにおいてこの側面がいかに重要であるかが示されています。
Z世代に対するある調査によると、38%が、無料のウェブサイトに表示されているパーソナライズされた広告を好んでいることがわかりました。彼らは、彼らのブラウジング履歴やその他の設定データから生成されるパーソナライズされた広告を評価し、情報が他の企業によって悪意を持って使用されていることに関してはあまり懸念していませんでした。[1]
ケーススタディ:ケースティファイとパーソナライゼーション。
彼らがまだ若いからか、あるいは、スマートフォン以前の時代を覚えていない最初の世代だからかもしれませんが、Z世代は携帯電話が主流の世代であり、生命線でもあります。特に、パンデミックの影響で友人や社会生活へのアクセスが壊滅的に制限されている中、Z世代にとって携帯電話は身体の一部と言っても過言ではありません。
したがって、生活を機能させるために非常に重要な携帯電話のパーソナライズを目的とした会社が繁栄しているのは、理にかなっていると言えます。
ケースティファイは、Z世代の73%がアカウントを持っているInstagramで主に宣伝活動をしているブランドです[2]。ケースティファイの創設者であるWed Ng氏よると、携帯電話のケースは損傷から携帯電話を安全に保つためだけのアクセサリーではありません。彼は「我々は携帯電話ケースをコモディティ商品として見ていません。携帯ケースは創造性のためのキャンバスであり、デザインにおける挑戦です。」と語っています[3]。 彼のインスタグラムアカウントに230万人以上のフォロワーがいることを考えると、 明らかに多くの人が同じように感じているのです。[4]
2010年代初頭に始まったケースティファイは、元々はCasetagram(ケースダグラム)というアプリで、ユーザーは気に入ったインスタグラムの画像をスマホケースに印刷することができました。しかし、すぐに他の企業がこのアイデアを真似たため、ケースダグラムは、単にインスタグラムの写真だけをケースに印刷するのではなく、パーソナライズされたデザインに焦点を当てて、CASETiFY(ケースティファイ)となりました。現在では、世界で最も売上高の高いテックアクセサリーブランドとなっています。[5]
ケースティファイでは、こうしたパーソナライゼーションの要素だけでなく、NBAやポケモン、ディズニーなどの巨大ブランドとのコラボレーションも多数実施しています。これらのコラボレーションでは、ブランドとのつながりを意識したスマホケースを選ぶことができ、デザインに自分のオリジナル要素を加えることができます。
こういった話は、他のブランドがコラボするのと同じように聞こえるかもしれませんが、ケースティファイはそのさらに上を行っています。デザインはいくつか用意されていますが、顧客はチェックアウトの過程でデザインを最終的に決定します。色、重さ、保護のレベル、そして、テキストを追加するかどうかを選択して、自分が携帯電話ケースのクリエーションに関わっているのだと感じることができます。
ケースティファイは、消費者が自分自身を表現できるユニークな製品を提供することにより、輝き続けています。ブランドとのコラボレーションであっても、パーソナライゼーションの要素が取り除かれることはないため、消費者は自分のデザインのオリジナル性を保つことができます。
まとめ
多くのブランドや店舗が新型コロナウィルスの流行により、撤退や閉店を余儀なくされる中、ケースティファイは2021年にロサンゼルスに最初の店舗のオープンを計画しています。彼らの売上のほとんどはオンラインショップからであり、売上の少なくとも25%はカスタマイズやパーソナライズの要素を含んでいます。[7]
消費者に選択肢を与え、一方で、選択肢の数に圧倒されないようにするには、常にバランスが必要です。過去には、消費者にあまりにも多くの選択肢を与えると(「選択の負担」と呼ばれる)、実際には製品から消費者を遠ざけることになると主張する心理学者もいました。選択肢について議論する時間が長すぎると、それがストレスになるので、その商品を購入したくなくなるというものです。しかし、この理論が様々な心理学的研究で再現された結果はまちまちで、ケースティファイのようなブランドが力を持っていることは、逆のエビデンスのように思われます。
ケースティファイの顧客が選択の負担に悩まされないのは、商品の仕上がりを完全にコントロールできるからかもしれません。確かに、カスタマイズやパーソナライズのオプションは無数にありますが、最初から自分の欲しいものが決まっているのです。ブランドの20種類のオプションに目を通すのではなく、自分たちが気に入ったものを2~3作って、そこから選ぶことができます。
インスタグラムでの若者に向けたブランディングとは、もはやブランドを使ったりフォローしたりすることで個性を表現させるということではなく、ブランドを通して自分の個性をアピールできるようにすることなのです。
参照元:
[2] https://www.marketingcharts.com/digital/social-media-110652
[3] https://www.highsnobiety.com/p/casetify-phone-case-wesley-ng-interview/
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