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日本の敷布団などの布団文化は、アメリカではすぐには取り入れられないと思われることのひとつです。アメリカで販売されている「Futon(フトン)」は、ほとんどの場合、ベッドの代わりとして安価に提供される、フレームの上に置かれた、ソファからベッドに変形するものを指します。こうした家具は、ほとんどの人がゲスト用ベッドや、引き出し式のカウチのような追加の寝具として使用しています。若くて裕福でない人の中には、フトンをメインの寝具として使っている人もいます。
日本人の多くは、欧米人はマットレスの上で寝ている、という印象を持っているかと思います。ハリウッド映画やアメリカのテレビ番組では、ティーンエイジャーの主人公が、ドラマチックな効果を狙って巨大なベッドに身を投じるシーンがよく見られますし、時には、プロジェクトや仕事に関連した本やアイテムを布団の上に散らばらせて、印象深いシーンを作っています。
しかし実際は、多くのアメリカ人は、配偶者と共有している場合を除いて、それほど大きなベッドを持っていませんし、ましてやティーンエイジャーではなおさらです。実際、アメリカの若者、特に大学生のための寝具として多くの人が連想するのが、この「フトン」です。
しかし、この「フトン」、日本人が思い浮かべる「布団」とはまるで異なっています。
今回は、アメリカ人が「フトン」から何を連想するのか、そしてその西洋風のフトンが、欧米では一般的になっていることについてお話します。
Googleに聞いてみた。「futon」ってなに?
英語で「futon」をグーグルで検索するとどうなるか見てみましょう。
画像:英語で「futon」をGoogle検索した際に1ページ目に表示されるイメージ画像
前述したように、「フトン」というと、アメリカ人はこのようなイメージを思い浮かべます。ヘリックスリープ(アメリカの家庭用品ブランドのオンラインショップ)では、「購入者の中には、布団を主なベッドとして使用する人もいるかもしれませんが、多くの場合、この種の家具は、必要に応じて追加のゲストベッドにすることができるソファとして機能します」1と説明しています。
アメリカでは、「フトン」という言葉は、「カウチ」や 「ソファ」と同義語とのように使われ、通常、長期的な寝床としては考えられておらず、そのような使い方は周囲にあまりよく思われません。
しかし、なぜそうなったのでしょうか。その固定観念はどこから来たのでしょうか?
欧米ではなぜ「フトン」の形態が違うのか?ベッドフレームを使わず床に寝ることへの偏見
多くのアメリカ人(欧米人)にとって、地べたで寝るということは、「キャンプに行く」「経済的に不安定な学生」という2つのイメージがあると考えられます。
もちろん、キャンプでは寝袋に入って寝るわけですから、地べたで寝ることを想定しても不思議ではありません。しかし、もうひとつのステレオタイプは、日本人にはあまり馴染みのないかもしれません。
「Vice(バイス:ライフスタイル、芸術、文化、ニュース/政治に焦点を当てた雑誌)」の記事にあるように、若者の間では「ベッドフレームを持っていない男性はデートの相手にはならない」というジョークがあります。2このような男性の多くは、伝統的な西洋式のマットレスを使って寝ていますが、ベッドフレームのようなものはなく、床にマットレスを置いて寝ています。彼らがこのような生活を選択する理由は様々です。純粋に快適だという人もいれば、ベッドフレームを購入するほどの可処分所得がないという人もいます。また、物理的にベッドフレームのような大きなものを置くことができない厳しい生活環境にある人もいます。このような生活をしている人の多くは、大学を卒業したばかりの人や、まだ大学に在籍している人など、若い世代です。3
フトンの最大の魅力はその価格にありますが、それゆえに、きちんとしたベッドを買えない20代のイメージが強いのです。実際、Business Insider(ビジネス・インサイダー)のような大手出版社でも、この固定観念に言及した記事を書いており、ベッドフレームのないマットレスが 「アパートでやってはいけない11のこと」の1つであることを紹介しています。4
画像:ビジネス・インサイダーの記事より。タイトルは「ベッドフレームのないマットレスは許しがたい」。
これらの話のほとんどは、逸話的なもので、はっきり証拠があるわけではありません。しかし、その正確さはともかく、一般的なジョークとして定着しているほど、世間的に力を持っています。Sleep Foundation(国立睡眠財団)によると、高品質のマットレスを購入すると、サイズにより400ドル以上かかります。平均以上のマットレスや少し大きめのサイズを希望する場合は、簡単に600ドル~1000ドルに跳ね上がります。5しかも、これはベッドフレームを含んでいない金額です。それと比較すると、フトンのマットレスは100ドル程度で済み、フレームも同程度の価格で購入できます。つまり、ソファとベッドがひとつになって、普通のベッドの半分以下の値段で手に入るのです。これでは、予算の立て方がわからない、給料の高い仕事に就いていない若者のイメージが強いのもうなずけます。
結論
残念ながら、ベッドフレームのないマットレスにまつわるこうした偏見は、床に近いところで寝ることに対する一般的な嫌悪感につながっています。多くのアメリカ人にとっては、大学時代に初めてアパートに引っ越したとき、引っ越し疲れで寝る前にベッドフレームをきちんと設置できなかったことを思い出すでしょう。あるいは、そもそもベッドフレームを買う余裕がなかったという人もいるかもしれません。
アメリカや欧米では、敷布団が売られていないわけではありませんが、一般的な光景ではありません。ミニマリストのライフスタイルを採用している人や、日本文化の影響を受けている人の中には、一般的な西洋式ベッドから日本の伝統的な布団に変えている人もいるかもしれませんが、そういった例はほとんど見聞きしません。
敷布団のようなものがアメリカで普及するかどうかを考えるとき、おそらく最大のハードルは「床に置く」という部分になると思われます。欧米の家具は、椅子や背の高いベッドなど、立つことを前提に作られているので、足のないものに寝ることに人々は違和感を覚えます。自分のベッドでくつろぐことができなければ、一番大切な「睡眠」をとることができないので、これは重要なポイントになります。
アニメが主流になり、日本食が一般的になってきたアメリカでは、日本の伝統や製品が日常的に使われるようになってきています。日本への観光客もコロナ前は日増しに増えており、旅館や温泉とセットで日本式の布団文化を楽しむ人も出てきていました。しかし、「フトン」は他の商品や伝統に比べ、なにか新しい使い方のアイデアを考えない限り、アメリカ市場への参入は難しいと予想されます。
[1] https://helixsleep.com/pages/types-of-mattresses-futon
[2] https://mashable.com/article/guys-really-live-in-apartments-like-this-meme/
[3] https://www.vice.com/en/article/vbwvqx/why-do-men-keep-their-mattresses-on-the-floor
[4] https://www.businessinsider.com/things-no-man-should-have-in-his-apartment-2015-12
[5] https://www.sleepfoundation.org/mattress-information/how-much-does-a-mattress-cost
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