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いきなりステーキがニューヨークに1店舗目をオープンしたのは、2017年2月23日のこと。当時の速報として、東洋経済4月11日のオンラインニュースでは、「いきなり!ステーキ」NY1号店大成功のワケ アメリカ人は『立ち食い』をしないはずが…」というものだった。
記事:https://toyokeizai.net/articles/-/166852
それから約2年が経過した2019年2月15日、「いきなり!ステーキ」米で苦戦 本場で厚い壁、6割を閉店」というニュースがライブドアニュースに掲載された。11店のうち7店を閉店し、残る4店のうち2店を業態転換するとのことだ。ステーキの本場、米国の厚い壁にはね返された形で、いったん事業を縮小して出直しを図ると書いてある。
記事:http://news.livedoor.com/article/detail/16023897/
うちのセールス担当R.Sくん(2年前はうちのカリフォルニアオフィスでインターンとして働き、現在は東京オフィスで正社員として勤務)は、当時からこの2年前のニュースには懐疑的だったようだ。
彼の今日の気づきによれば、「当時、Eaterなどの米フード系のメディアでも、話題になっていました。ただアメリカ人のコメントは厳しいもので、たとえば『立ちながらステーキを食べるなんてマナーとして信じられない』『ステーキの価値を下げる』など、アメリカ人が誇るナショナルフードを汚すな、というような内容がほとんどだったのですが、いきなりステーキは、進出前に十分な調査をしなかったのでしょうか?」とのこと。
前述の東洋経済2017年4月11日のオンラインニュースでは、そのことが詳しく書かれていたので、要約してみる。
まずは立地について、「スタートの地となった銀座4丁目店をはじめとして、駅から少し離れた場所に展開するのが同チェーンの特徴だが、結果的に、アメリカでも日本での戦略を踏襲した形になった」。
次に店内について、「同チェーンの最大の“売り”であるスタンディング形式がニューヨークで受け入れられるか、開店ギリギリまで判断がつかなかった。3年を要した準備期間には『立ち食いなど100人中100人がしない』など、さまざまな助言があったという。特に立ち食いスタイルは、オープン前の記者発表でマスコミから最も指摘を受けた点でもあったが、同社は『日本人も、もともとは立ち食いをしませんでした』で押し通したという」。
そしてグラムの表記については、「米国では普通、ポンドとオンスを用いるため、グラムでの表示を理解してもらえるのかも、大きな心配だった。単位を変えればよいだけなので、それほど重要ではないと傍からは見えるが、食べた肉の量に応じた特典が得られる会員サービス『肉マイレージカード』は、グラム表示を用いていた。また、食べた肉の量を競う『ランキング』を、ニューヨーク店オープン後は世界基準にして世界ランキングを行うのが、経営陣の構想だった」と書かれている。
極め付けは、米国の担当者が同社社長に言ったとされるやり取りについて。「グラムを使うことに関しては私自身、かなり心配していました。ランキングだけ、オンスからグラムに変換できるようにすればいいのじゃないですか、と進言したのですが、“ダメだ。そんなんで伝わるわけない”と一蹴されました」。
近い将来の失速を予感させるようなやり取りが、ニューヨーク店の開店直後にマスコミによって取り上げられていたようである。もっとも、その時はアメリカのタブーに挑戦し、常識を覆した成功談として取り上げられていたから、ここまでの詳細を書くことが許されたのだろう。
今となっては、通常では、なかなか外には出ることのない内輪のやり取りを通し、日本企業にみられる米国進出の典型的な例として、後進に対する良い教材になったのではないかと思う。
もちろん、同じアメリカでビジネスをしている私たちとしては、いきなりステーキが失敗したと声高に叫びたいわけでは全くない。むしろニューヨークのステーキカルチャーに真っ向から挑戦した勇気は素晴らしいとさえ感じているし、ファンとしてその復活を心から願っている。
初期の失敗から学び、成功に転じた素晴らしいマーケティング事例として、多くの進出企業のお手本になってもらえたら素敵だと思う。
ワイズアンドパートナーズ代表 結城喜宣
アメリカでビジネスを成功させる
Ys and Partners(本社カリフォルニア州アーバイン市)では、2002年から「日本のブランドを世界で有名にする」を使命に、これまで50社以上の大手日系企業に、マーケティング領域のなかでも、米国向けの製品開発、販路開拓、PRやプロモーションのご支援をしてきました。日本オフィス(東京と横浜)では、北米進出をはじめ、海外からのインバウンド観光客集客を計画中の方々に初回無料コンサルテーションを実施しています。
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