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先日、ニューヨーク・タイムズ紙は、2023年のアメリカのフードトレンドとして、日本からインスピレーションを得た食べ物が流行ると発表しました。そして日本風のイタリアンを提供するニューヨークの「Kimika」をトレンドセッターとしてあげています。本当に、アメリカで日本風のイタリアンは流行るのか?両者の食文化の違いから考えてみましょう。
イタリアンはそれぞれの国で独自に進化した。
イタリア料理の歴史は何世紀も前にさかのぼります。イタリアからの移民は、自分たちの文化の伝統を携えて、東洋と西洋の文化圏に広がってきました。アメリカにも日本にもイタリアンレストランはありますが、イタリア料理に対して同じイメージを持っていません。どちらの国でも伝統的なイタリア料理の特徴を取り入れつつ、自国の習慣や食材と合わせて独自の進化をしているので、そもそもメニューに対するイメージが大きく異なるのです。
アメリカと日本では、イタリアンのメニューが違う?
皆さんは、イタリアンレストランで何を注文しますか?
アメリカの普通のイタリアンレストランでイタリア料理を食べると、まずメニューにドリアがないことに気がつくかもしれません。実はドリアは、日本人が考案したものだからです。ほとんどのアメリカ人(欧米人)はドリアという言葉を聞いたことがないし、実際、英語版のWikipediaにもこの料理の項目は存在しません。
また、日本と違って、アメリカの多くのイタリアンレストランでは、サンドイッチの種類が豊富にあります。アメリカのではおいしいサンドイッチが好まれているからです。中でもチキン・パルメザン、ナス・パルメザン、ソーセージ&ペッパーズなどが人気になっています。
ピザも、アメリカと日本ではトッピングが違います。例えば、アメリカで最も人気のあるトッピングは、ペパロニ、ソーセージ、マッシュルーム、エクストラチーズです[2]。一方で、日本ではチーズが人気ではあるものの、エクストラが必要なほど、チーズをかけることは少ないでしょう。それぞれの国で人気のあるトッピングを比べてみると、ピザに合うものについての考え方・味覚が違うことがよくわかります[3]。
日本に住んだイタリア系アメリカ人の感想
とあるニューヨーク出身のイタリア系アメリカ人で、京都に3年間住んでいたことがある女性に日本のイタリアンについて感想を聞いたところ、印象に残っているのは、日本で作られるイタリア料理には常に「生ハム」が使われていることだと答えました。もちろんアメリカでも使いますが、とても珍しく、普通のイタリアンレストランでは、あまり使われていません。生ハムは食料品店やデリカテッセンで手に入りますが、一般的なアメリカ人は、イタリアの肉類といえば、ペパロニやソーセージを思い浮かべるでしょう。
日本のイタリアンも気軽で美味しかったのですが、ラザニア、大鍋のベイクド・ジティ、手軽なチキン・パルメザン・サンドイッチといったメニューが気軽に食べられるレストランが少なく、それらを無性に食べたくなることもあったそうです。
ほとんどのアメリカ人は、日本のイタリアンで使われている食材には驚かされています。例えばパスタやピザに、コーンやツナなど、今まで見たこともないような食材が使われていることがあげられます。また、和風パスタや明太子などの食材を説明すると、興味はあっても多くの欧米人は躊躇してしまうことでしょう。ただし、一度その魅力的な味を覚えてしまうと、恋しく感じる人も少なくありません。
日本のイタリアンは、アメリカの次のフードトレンドになるか?
イタリア系アメリカ人が多く住み、イタリア料理が好きなことで有名なアメリカの都市といえば、ニューヨークです。しかも、この街はアメリカ最大の多民族都市として有名なので、イタリアンが流行るとすれば、まずはニューヨークからでしょう。ニューヨーカーたちは斬新なもの、革新的なものを求めているからです。日本風のイタリアンは、食通にアピールする素晴らしいコンセプトなのです。
さらにニューヨークでは、最近、ニッチなレストランが人気を集めています。その代表的なレストランが2020年にオープンした「Kimika」です。チャイナタウンとリトルイタリーから近く、今ではニューヨークで欠かせない場所になっています [4]。
前述しましたが、ニューヨーク・タイムズ紙は、2023年のトレンドは「Japan-Adjacency」になると予測し、その牽引役としてこのKimikaをあげています。日本の食材を身近な食品と融合させたり、日本の調理の仕方をアメリカで人気のレシピと融合させたりすることが、今年のダイニングの関心を高めることになりそうです[5]。
日本の料理人にとってもチャンス!
日本の料理人がアメリカ人に自分の腕前をアピールする際のハードルのひとつが、食材の入手が困難という点にあります。
仮に食材が手に入ったとしても、一般的なアメリカ人がそれを家で再現することは困難なことです。なぜなら、例えば一品作るためにみりんやしょうゆを1本丸ごと購入しても、それを使ったレシピが他になければ、買うのをためらってしまうことが多く、消費機会が広がらないのです。よって日本の味が一般化することが難しい状況が続いていました。
だからこそ、和風パスタなどアメリカとは異なる味の進化を遂げた日本のイタリアンがトレンドにあがることは、とても重要だといえます。日本の料理人のこだわりがわかるニューヨークの食通たちに美味しい料理を食べてもらうことによって、アメリカ中に日本の味が広がる可能性が高まるからです。
まとめ
日本でもアメリカでも共通していえるのは、イタリアンは、簡単に作れて気軽に食べられる、そしてそれぞれの食文化にあった食べ方や食材で無限にバリエーションが広がっている料理である、ということです。
ニューヨークだけではなく、ロサンゼルスやシカゴなどの大都市圏以外のレストランでも、近い将来、日本風のイタリアンが人気になることでしょう。そしてTikTokやYouTubeのクリエイターがその気軽さとおいしさをアピールすれば、フーディーを超えた一般の人々にも人気が広がっていくに違いありません。
オーセンティックな和食だけではなく、日本人の繊細さが生み出した味覚が認められる可能性が広がっています。
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