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かなり昔から、アメリカ人は日本人を「完璧主義」と認識しています。これはおそらく、長年にわたって日本製品が高品質なものを提供してきたからでしょう。アメリカの消費者が日本の製品を購入するときは、質の高い体験を保証してくれるという期待値があります。日本の商品・サービスの何がアメリカで評価されているのか、「完璧主義」というキーワードを絡めて紐解いてみましょう。
日本製は完璧なものという認識
アメリカや欧米諸国の人々の日本人に対する「完璧主義」というイメージは、もはや固定観念と言っても過言ではありません。礼儀正しく、思いやりがあり、時間に正確なのが日本人なのです。だからこそ、アメリカ人は特に日本の製品・サービスは高品質だと思っています。
一方でアメリカの消費者は、自国の製品やアメリカ人が提供するサービスには期待しておらず、日本と同じようなクオリティを求めてすらいません。これはアメリカ文化が「完璧さを重視しない」ことに起因していると考えられます。
日本のサービスが完璧だと認識されるようになったきっかけと、アメリカ人がわかっていても真似をしない理由とはなんでしょうか。
日本のイメージを形成した「菊と刀」
もちろん、最初から日本製品や日本人が提供するサービスの評判が良かったわけではありません。特に戦後まもなくの間は、アメリカ製よりも低品質だとされていました。しかし、とあるネガティブな固定観念がポジティブなものに変わった瞬間、日本がクオリテイの高い生産国であるという考えが広まりました。
そのきっかけは、1940年代、人類学者のルース・ベネディクトによって「菊と刀(原題:The Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture)」という日本の文化を説明した文化人類学の本が出版されたことです。ただしこれは第二次世界大戦末期に戦時情報局からの要請で日本人の行動を分析するために書かれたものであり、著者のルース・ベネディクトは日本に行ったこともなく、信ぴょう性にはやや問題があったかもしれません。
しかしながら、この本は一般のアメリカ人にも大きな影響を与えました。特にこの本が興味深かったのは、日本を「恥の文化」、アメリカを「罪(罪悪感)の文化」と定義したことにあります。つまり、アメリカ人は内面の良心を重視するのに対し、日本人は世間体といった他人の視線を気にする、というのです。実はこれは当初、自己表現が消極的、人目を気にしすぎている、謙遜さがかえって自虐的に見えるといった日本人へのマイナスイメージを植え付けるために書かれたものでしたが、今となってはこの日本人の性質が立派なものとして捉えられるようになってきています。
アメリカ人に「なぜ日本製品は優れているのか」と尋ねると、おそらく多くの人が、日本人の誇りや名誉を原動力として挙げるでしょう。
日本が“高品質”の象徴になる!?
もちろん、日本製品の評価が高まった最大の要因は、その品質が飛躍的に向上したことにあります。特に、日本車はアメリカ製の車よりはるかに優れているという評価を得ました。
「1980年代以降、アメリカ企業は日本製品の品質の高さに脅かされてきました。1980年、米国会計検査院は下院に提出した声明で、日本の国民経済を1つの会社に例えた論「日本株式会社」の驚くべき力を研究することは、米国企業にとって有益であると明言したほどです[1]。
また、ビジネスや経済の世界では、日本製品が長年にわたって高い品質を維持してきた主な理由として、「カイゼン」の概念が語られています。時間をかけて常に生産を改善しようとする姿勢は、アメリカのCEOたちの考えを刺激し、自社のプロセスに同様の手法を導入させるほどでした[2]。ただ、残念ながらアメリカ製のクオリティが日本レベルにまで上がらないのは、これらの方法を適切に実行できるのはリソースを持つ大企業に限られるものだからでしょう。
なぜ、アメリカの製品は完璧な品質を目指さないのか?
最近、日本製品はその品質を維持していますが、アメリカ製品・サービスの評価は確実に下がっています。多くのアメリカ企業が、日本製品の良さを理解していながら、その戦略を再現しようとしません。
その理由のひとつは、期待値の高さです。アメリカ人は、アメリカ製品にそれほど高品質であることを期待していません。日本やドイツからの輸入品の方が、品質に対する評判はずっと良いのです。たとえばアップル社など、一部のアメリカ企業は、消費者がなるべくすぐに買い換えるよう、壊れるように設計された商品を作っていると明言しています[4]。アメリカ製のものは低品質であるというイメージが刷り込まれてしまうのも無理はありません。
もう一つの大きな理由は、完璧を求めることがアメリカ文化の中で否定的に捉えられていることにあります。完璧を求めることは、生産性だけでなく、精神衛生上も良くないと考えられているからです。多くのアメリカ人は、完璧主義的な考え方から自分を遠ざけるために、何千ドルもかけてメンタルヘルス・サービスを受けています。
そしてアメリカの文化は、プロセスではなく結果を重視します。解決策さえが見つかれば、どのようにそれを見つけるかについては問題視されません。多くの場面で、完璧主義は時間と資源の浪費とみなされます。特に職場では、品質よりも効率が重視されます。より多くの製品を生産することは、より高い品質の製品を生産することよりも常に重要です。アメリカ人が「Done is better than perfect」と考えているのに対し、日本人は「It’s not done until it’s perfect」[4]と考えていることもわかっています。
まとめ:日本製品に期待すること
多くのアメリカ人が日本製品や日本文化に好意的であることは間違いありません。そして日本製品が高品質であるのは、日本人の忍耐力と完璧主義によるものだという考え方は、定着しています。
完璧主義というのは、多くのアメリカ人にとってネガティブなものとして捉えられていますが、完璧さへの関心は1980年代から高まりつつあります。研究によると、古い世代と比較して、より多くのミレニアル世代が完璧主義者になる可能性が高いことが示されているほどです[5]。
アメリカ人は自分たちの不完全さについては少し諦めたような節もありますが、だからこそ、日本が提供する高品質で完璧な製品には、これからもずっと期待し続けるでしょう。
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参照元
- https://www.gao.gov/assets/113727.pdf
- https://www.nytimes.com/2007/02/08/business/08scene.html
- https://www.ecnmy.org/engage/your-iphone-is-literally-designed-to-break-and-its-not-just-your-iphone/
- https://paynterjacket.com/blogs/stories/why-japan-became-global-source-of-perfection
- https://www.apa.org/news/press/releases/2018/01/perfectionism-young-people#:~:text=Specifically%2C%20between%201989%20and%202016,of%20factors%2C%20according%20to%20Curran.
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