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米国マーケティングトレンド研究会 2021.05.14

JTI(日本たばこ産業)が、こっそりSNSに広告を出していた?

Japan Tobacco International(日本たばこ産業、以下JTI)への数年にわたる調査の結果、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)のソーシャルメディアページを管理し、たばこの広告を密かに若者に向けて発信していたことが判明しました。多くの国では子どもへのたばこ広告が規制されているため、これらの法律を回避するために、JTIは巧妙に広告を隠していたのです。邪道に聞こえるかもしれませんが、多くの企業が同様の「リアル」な広告戦術を用いて、ユーザーに広告を見ていると感じさせずに製品を紹介しています。

たばこ会社は、世界で最もクリエイティブなマーケティングを行っています。それは、広告が嫌いな消費者にアピールしたいからではありません。たばこ会社は、喫煙に関する広告を、消費者、特に子どもに直接見せることを、世界保健機関により168カ国で制限されているためです。実際、これは国連史上最も合意された条約の一つとなっています。1これらの制限を回避するために、たばこ会社は、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディア・プラットフォームを介して、大人と子どもの両方にマーケティングを行う巧妙な手法を編み出しました。そして最近、JTIへの調査により、この戦略の仕組みが明らかになりました。

ライフスタイルページで販売されるのはインスピレーションと、たばこである。

JTIは、世界第3位の多国籍たばこ会社で、キャメル、ウィンストン、アメリカンスピリットなど、世界で最も有名なたばこブランドを販売しています。しかし、ソーシャルメディア・プラットフォームで商品のマーケティングを行うことは難しくなっています。そこでJTIは、子どもに直接たばこに関する広告を出すことが違法とされている国で、ソーシャルメディアのライフスタイルページを使って、若い世代をターゲットにする新しい方法を見つけました。2

JTIは、たばこに関する直接的な広告ではなく、ライフスタイルに関する投稿を中心としたページを運営しており、有名人や旅行、ファッションなどの画像を掲載しています。それらのページは、「Let’s CML」(Create Memories of Life for ‘Camel’:「キャメル」の人生の思い出を作ろう)、「Full of Spirit」(「アメリカンスピリット」)、「Ganz Genau」(ドイツ語で「まさに」という意味。「ウィンストン」)などと名付けられていますが、タバコとの明らかなつながりはありません。

これらのページでは、JTIがスポンサーとなってブースを運営しているイベント、コンテスト、フェスティバルなどを宣伝しています。時には、ユーザーがコンテストに申し込むために、フェイスブックやインスタグラムから離れて別ページへ遷移することを要求する投稿があり、遷移先のページには、タバコの広告が表示されています。これらのライフスタイルページの公式サイトは、たばことの関連性がより強く打ち出されており、年齢確認を義務付けているとはいえ、子どもたちにとっては非常にアクセスしやすいものとなっています。

画像:ウェブサイトに進む前に、すべてのユーザーに18歳以上であることを確認するよう求めています。ボックスには「#GanzGenauへようこそ! 以下のコンテンツは、喫煙可能年齢である18歳以上の方のみがアクセスできます。」と記載されています。(ganzgenau.comの年齢確認ページより)

JTIのソーシャルメディアページで宣伝されているイベントでは、JTIがブランドのエリアを設置し、アイテムを販売していることが多く、例えば音楽フェスティバルでは、アメリカンスピリットが休憩所や写真撮影スポットのスポンサーになっていたりします。3

まとめ この手法の新奇性と他社の状況。

たばこ会社がクリエイティビティを駆使して広告を作るのは、今回が初めてではありません。たばこ会社が子供たちに危険な製品を売るため、こっそり広告を利用する行為は、特に親にとっては非常に恐ろしいことです。残念なことに、このような隠密で「リアル」な広告スタイルはますます一般的になってきています。

ブランドは、特にTikTok(ティックトック)のようなソーシャルアプリで消費者に影響を与える、より進んだ方法を学んでいます。ティックトックユーザーのティックトックに関するお気に入りポイントの1つは、ティックトック上の広告が従来の広告のように見えないことです。ティックトックの広告は、ユーザーが作成したコンテンツのように撮影されており、動画のスクロール中に自然に溶け込んでいます。「TikTok for Marketing」のページでも、「広告を作るのではなく、TikTokを作ろう」とマーケティングチームに呼びかけています。4

一般的にユーザーは、従来の広告よりも「リアル」なイメージを抱かせる、ユーザー生成コンテンツ(UGC)のような広告に反応しやすいようです。ユーザーは、「リアルな人間」が自分の体験を説明してくれたり、製品が実際にどのように機能するかを見せてくれたりするのを好みます。

たばこ会社がライフスタイルページの裏に広告を忍ばせようとするのと全く同じとは言えませんが、たばこ会社がすでに理解しているように、多くの企業が「最良で効果的な広告は、広告に見えない」ということを学んでいるのです。

参照元:

[1] https://www.who.int/tobacco/framework/WHO_FCTC_english.pdf

[2] https://www.thebureauinvestigates.com/stories/2021-04-25/tobacco-giant-jti-placing-stealth-adverts-for-its-brands-on-facebook-and-instagram

[3] https://www.independent.co.uk/news/world/europe/tobacco-stealth-adverts-facebook-instagram-b1837099.html

[4] https://www.thedrum.com/news/2020/06/25/dont-make-ads-make-tiktoks-tiktok-opens-brand-facing-wing

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