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アメリカで人気のお菓子M&M’Sは最近、「インクルーシブ」であることを目指し、性別に対する印象を減らすため、企業のキャラクターをリブランディングしました。企業側のこうした取り組みを消費者は評価しているとする調査結果がありますが、M&M’Sの今回のリブランディングに対する評価は芳しくありませんでした。というのも、今回のデザインの変更はブランドの方針から外れており、ただ単に社会問題に関心を持つ消費者に表面的に迎合しただけだとみなされたからです。
*インクルーシブ:「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表している(ウィキペディアより)。
はじめに。
英語のソーシャルメディア・アカウントをフォローしている方は、最近インターネット上で話題になったM&M’Sのリブランディングについてご存知かもしれません。M&M’Sは長い間同じ企業キャラクターを使い続けてきましたが、今回、一つのキャラクターデザインを変更することにしました。とても些細な変更で、よく見ないとほとんど気づかないほどです。しかし、多くのアメリカ人はこの変更に怒りをあらわにしました。
今回の変更:緑のM&M’Sキャラクターの靴が新しくなった。
ここで、M&M’Sブランドのキャラクターについて簡単にご紹介します。M&M’Sには、赤、黄、緑、オレンジ、茶、青の6種類のキャラクターがあり、それぞれの色にちなんで名前がつけられています。彼らは、M&M’Sのさまざまなフレーバーと、製品のバリエーションを表現しています。また、男性と女性、両方のキャラクターがいます。
緑のM&M’Sは、古くからあるキャラクターの一つで、昔から最も人気のある女性キャラクターです。まつ毛、ふっくらとした唇、ヒールの高い靴など、女性的な特徴を持っており、女性をターゲットにした多くの商品に使われています。
しかし、2022年1月、M&M’Sは、緑のM&M’Sのデザインを少し変更すると発表しました。ハイヒールではなく、履き心地の良いスニーカーを履くことになりました。公式アートワークでは、ダンサーのようなポーズから、何かに挑戦しようとしているようなポーズに変更されました。この変更はキャラクターをより「インクルーシブ」にするために行われた、とM&M’Sは語っています。[1]
緑のM&M’Sのデザインを変更した理由と、それに対する反響は?
アメリカの消費者がインクルーシブであることや多様性を求めていることを受け、多くの企業がそれに応えようとしています。若い消費者(ミレニアル世代とZ世代)は、自分たちの価値観に合っていると思えるブランドから購入する傾向が強いという調査結果もたくさん出ています。緑のM&M’Sのデザインを変えることで、同社は消費者に対して、これまでとは異なる性別の役割について考えていることを映し出したかったのです。
しかし、M&M’Sの今回の変更は消費者から評価されなかったばかりか、消費者から多くの批判が浴びせられてしまったのです。
M&M’Sがデザインを変えたのは、左派の消費者からの「圧力」によるものだと不満の声が上がりました。また、「こんな小さな変更では意味がない」という意見もありました。さらに、「キャラクターの外見を変えても、現実の世界のインクルーシブであることや多様性には何の影響もないので、デザインの変更は無意味である」という声もありました。
つまり、このリブランディングは完全に裏目に出てしまい、M&M’Sのイメージはかえって悪くなってしまったのです。
なぜ、リブランディングは失敗してしまったのか?
今回のM&M’Sのリブランディングが失敗してしまった理由はいくつかありますが、最大の問題点は以下だと考えられます。
M&M’Sの親会社であるマース・リグレー社のチーフ・グロース・オフィサーであるキャサリン・スライト氏は、次のように語っています。「M&M’Sは長年、カラフルであることを通して人々に楽しみを届けようと取り組んできました。それは私たちのブランドの信念です。幸せになる権利は誰もが持っているもので、楽しいという気持ちを通じて、人々は自分の居場所を見つけるのだ、と私たちは信じています。[2]」
このブランド・アイデンティティは立派なものですが、ブランドキャラクターとは何の関係もありません。M&M’Sの広告のほとんどは、キャラクターがおかしな状況に陥ったり、くだらない会話をしたりするショートストーリーです。これらの広告の目的は見る人を笑わせることであって、幸せな瞬間を楽しむようにインスピレーションを与えたり、自分の居場所があるように感じさせたりはしていないと言えるでしょう。
今後、広告の方向性を変えていくことをM&M’Sは発表していますが、ただ単にキャラクターのデザインを変更しただけで他の取り組みが伴わないのであれば、表面的だと言わざるを得ません。社会的責任からではなく、ただ単に消費者に寄り添うために、インクルーシブであるかのようにみせかけたという印象を与えてしまうのです。
結論:リブランディングにはタイミングと作戦が必要。
M&M’Sのキャラクターデザイン変更は、一見すると良いアイデアのように見えます。消費者は、包括性、男女平等といった社会的に進歩的な取り組みに好意的だからです。しかし、具体的な取り組みが伴わないまま、方針だけが表面的に伝わってしまうと、すぐに消費者に見破られてしまうのです。
今日、アメリカの消費者からの支持を得るためには、細心の注意が必要です。社会不安や政治的な対立によって、社会的に良い影響があるようなリブランディングであっても悪意をもって受け止められ、逆効果になってしまうこともあります。そのため、現在のアメリカの社会環境を深く理解しているマーケティングの専門家との連携は不可欠です。包括性、反性差別、反人種差別など、ブランドとの親和性を高めるような先進的なアイデアに基づいたリブランディングであっても、適切なタイミングで細心の注意を払って行わなければ、リスクにさらされることになりかねません。
米国でブランド表現の変更や新しいマーケティング・キャンペーンを検討されている方は、成功させるために現地の専門家と協業されることをお勧めします。
アメリカ市場調査レポートから:Z世代・ミレニアル世代のブランドロイヤルティーにみられる傾向。
最近の若い人は、あまりブランドロイヤリティーを持たなくなっているようです。このことは、ミレニアル世代とZ世代を対象とした市場調査で明らかになりました。彼らがブランドロイヤリティーをもつきっかけになっているのは、製品の価格 […]
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