なぜアメリカではペット用サプリがトレンドなのか？

今、アメリカではペット用サプリメント（以下、サプリ）が流行しています。アメリカで急激に高まっている健康志向の考えが、ペットにも広がっているからかもしれません。ペットの健康を維持したいという消費者インサイトはとても繊細で、ニッチな製品も売れています。今回は、ペット用サプリ市場の現状と、それを求める消費者心理を考察します。

健康投資は人もペットも拡大傾向。

最近、健康維持のために食事にサプリを加えるアメリカ人が増えています。この傾向は特に新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)以降、顕著になりました。

そして興味深いことに、この流行は自分自身の体のケアだけにとどまらず、ペットに対しても広がっているのです。今や多くのアメリカ人が、ペットの健康のために専用のサプリを購入するようになりました。

ここからは、アメリカのペット用サプリのトレンドと、ペット用サプリの消費者について、もう少し深く見ていきましょう。

ペット用サプリとは。

ペット用サプリは、人間用のものと同様、栄養素を補うために摂取するものです。食事だけでは足りない栄養素を追加することで、ペットの毛並みがより美しくなったり、元気になったり、痛みを軽減したり、さらに長生きできたりするようになります。

アメリカでは2021年現在、ペット用サプリ産業の市場規模は19億ドルで、2030年まで成長し続けることが予測されています。特に、犬、猫、鳥の飼い主がこのトレンドを牽引しているようです[1]。

これは、ペットをただの動物としてではなく、自分の子供や家族の一員と同じように扱うようになることが大きな要因と考えられます [2]。ペットのヒューマニゼーション（人間化）が強まった結果、ペットの「存在価値」の意味が動物から家族に変わったことにより、ペットにとって最適な健康法を求める飼い主が増えているのです。

今アメリカでペットの飼い主が求めるサプリとして人気が高いのは、オメガ3系、プレバイオティクス、プロバイオティクスです。中でも腸内環境は、人間だけでなく、ペットにとってもブームとなっています。

なぜアメリカでペット用サプリがトレンドなのか？

Google Trendsのデータによると、ペット用サプリは以前から存在していましたが、ここ数年、より安定した人気を得ています。

（参考）Google Trendsの「ペットサプリメント」検索結果

ペット用サプリがアメリカのオーナーたちの間でトレンドになっているのには、いくつかの理由が考えられます。

まず、COVID-19のパンデミックは、多くのアメリカ人の健康やウェルネスに対する意識に影響を与えました。これは精神的な健康も含まれ、多くの人が癒しを求め、ペットを購入する選択を検討しました。実際、2300万世帯以上（5人に1人）がパンデミック中にペットを購入したというデータが出ており、アメリカ全体でペットを飼う世帯が増えたのです[3]。

また多くの人が、より健康に気を配り、健康的な習慣を身につけるようになりましたが、これは家族の一員であるペットに対しても同様でした。 アイルランドの公共食品会社であるKerry Groupの調査によると、犬や猫の飼い主全体の4分の1が、パンデミック前よりも現在の方がペットの健康に気を遣っていることがわかりました。 また、そのうちの69％が、免疫力を高めるサプリメントやペットの健康増進につながるアイテムの追加を検討しています [4]。他にも、ある調査によると、Z世代（44％）とミレニアル世代（27％）は、ペットのために「専用フードや健康食」にお金をかける傾向が高いことがわかりました[5]。この若い世代は、インターネットで購入前に製品について調べたり、物を買ったりすることがあたり前なので、近くの店舗に売っていないニッチなペット用サプリでも、簡単に調べて、購入検討しているのです。

ペット用サプリの消費者像とは？

では、ペット用サプリを購入する人はどんな人たちなのでしょう。オーナーたちのインサイトは 大きく分けて３つが挙げられます。

1.人間基準の健康志向

前述の通り、そもそもペット用サプリを購入しようとする人は、健康やウェルネスに大きな関心を寄せていると考えられます。自分や自分の家族とペットの健康は、同等に気を配るのがあたりまえだと思っているところも特徴的で、実際、ペット用サプリの購入検討者の中には、ペットのためのサプリを選ぶ際に、人間用の食品として認知されているブランドの中から探す人もいます。

ある調査によると、愛犬に毎週サプリメントを与えている人のうち、45％の人が、人間用にも入っている特定の成分が配合されているものを求めていると回答しています。また、37％の人が「知っているブランドの原材料が使われていることを求める」と回答しています。
このように、ペットフードやサプリメントに、人間用の食品ブランドがついていることは消費者の信頼を得るのに有効な手段です。それは、人間にとって十分なものであればペットにとっても十分なものであるはずだ、という考えが根底にある人が多いからです [6]。

2.欲しいものがあれば、店頭でもネットでも購入する

多くの人にとって、ペットは子どものような存在です。親が子供においしいものを食べさせ、健康な体を作らせるために、どんなことでもするのと同じように、多くのペットオーナーはこのような考え方を持っており、サプリメントの購入に関心のある人はこの傾向が特に強くなっています。

そのため、情報収集やあらゆる販路での購入にも積極的です。ペットのためになるレビューの良いサプリメントを見つけたら、それが店頭であろうとオンラインであろうと関係ありません。むしろ、そのサプリメントを確実に手に入れるために、チャネルをまたいで在庫を確認する傾向があります。このような消費者は、他のペットオーナーと比較すると、Amazonのようなウェブサイトで購入する可能性が高くなっています。

3.トレンドセッターである

ペット用サプリを積極的に購買する消費者は、ペット製品以外の分野においても最新トレンドや新しいブランドについて非常に詳しい傾向があります。また、新しい製品を試してみることにもあまり抵抗がありません。様々な情報を入手したり試したりするので、ブランド間の違いにも詳しくなり、その経験や情報を積極的に発信する人も多くみられます。これらはまだあまり知識のないペットオーナーにとっては、貴重な情報源でもあり、ペットオーナーたちのトレンドはこうして醸成されていきます。

まとめ：パンデミックの影響をマーテティングチャンスに！

ペットにサプリを与えるなんて本当に流行っているの？と、まだ実感がない人もいるかもしれませんが、実は、ペット用サプリメントの消費者は、パンデミック後のアメリカにおける健康動向を反映する興味深い存在です。

例えばペット用サプリの国内ECや越境ECを検討されてみてはいかがでしょうか。ペット用サプリのようなニッチなトレンドと、その消費者に注目することで、健康・ウェルネス系の商品やサービスを扱う企業は新しいターゲット層の発見につながるかもしれません。

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