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遅い夏休みをとって、家族でロードトリップに出かけた。
コロナ禍で旅行に行くことは考えてなかったが、日本が連休だと聞いて、3日後だが、行こうと思い立った。
秋の気配が、背中を押してくれた。2021年の夏は、今を逃せば二度と戻ってこないのだ。
目指すは、カリフォルニアから西に14時間ほど走ったところにある、ニューメキシコ。
サンタフェから北に90分程走ったところにはタオスという小さな町があり、今回はそこのAirBを拠点にすることにした。
まだ幼かった娘を中古のホンダ・オデュッセイに載せ、ニューメキシコまでロードトリップに出かけたことがある。
ホワイトサンズの砂を、彼女の小さな運動靴にぎっしり詰め込み、持ち帰った。
さすがにもうその白い砂もオデュッセイも残ってないが、脳裏に思い出はたくさん残っている。
あれから20年の月日が流れ、娘はすっかり大人になった。
彼女は、最近まで新型コロナウィルスの患者を病院でケアしながら、国家試験の勉強をしていた。
数日前に合格通知を受け取ったばかりで、これから仕事探しをはじめるところだった。
思い返せば、最初のニューメキシコへのロードトリップも、私が職探しをはじめるタイミングだった。
カリフォルニアの大学でデジタルアートのCertificateを取得し、アメリカで仕事を見つけようとしていた。
が、見つかる保証はどこにもなく、直後に911が起きて、出鼻を挫かれた。
私のアメリカでの職探しは、そんな最悪のコンディションのなかではじまったのだった。
あの時、仕事が見つからなかったら、今頃は娘も私も日本で職探しをしていたのかも知れない。
「パパ、この砂を持って帰っていい?」と幼い娘は言った。
「パパ、ホワイトサンズには行かないの?」と大人になった娘は言った。
前の旅行で何を覚えていると私が聞いたら、娘は迷わずホワイトサンズとこたえた。
しかし、今回はさほど興味をもっていないようだった。
旅行先には適齢期というものがあり、ホワイトサンズは小さな子供向きなのかも知れない。
いずれにしても、成長したということだろうと理解した。
「なぜ、ニューメキシコなんですか?」と、うちのメンバーに聞かれた。
特に理由はなかったのだが、ジョージア・オキーフの旧家に行きたくなった。
ずっと行きたかったのだが、その思いを封印していたといった方が近いだろうか。
なにせ、それはカリフォルニアから1500キロを超えた先にある。
20年前に、オキーフの旧家の前まで行きながら、予約がないという理由で門前払いになった。
それが、心に残っていた。
飛行機で行かないのか、とよく聞かれるが、ロードトリップの良いところは、その有り余った贅沢な時間にある。
家族でさまざまな話をする。
とりとめのない話だが、この上なく楽しい。歌を歌い、車内で食事だってする。
妻は、ライスジャーを抱え、旅の車中でおにぎりを握ってくれる。
これがいつしか私たちの伝統的なロードトリップのスタイルになっている。
伝統とは良いものだ。それだけで一体感が生まれ、何年、何十年前のうきうきした気分を引っ張りだしてくれる。
結果的に、私たちはジョージア・オキーフの旧家に辿り着くことはできなかった。
今度の旅では、その門前を見ることさえできなかった。そう言って家族で大笑いした。
ジョージア・オキーフ・ミュージアムの予約を取っただけで、旧家の予約をとり忘れていたのだ。
それらが別々のロケーションだということを忘れていた。
それでもなぜか問題ないと思えた。
それって、またいつの日か、ここに来る理由を残したということなのだから。
旅の醍醐味は、やはりその道中にある。プロセスをいかに自由に楽しめるか?
仕事も似ている。チームで創作し、皆が成長するプロセスを楽しみたい。
だから家族も職場のチームも、息のあった人たちに囲まれていたいと思うのだろう。
次回、ジョージア・オキーフの旧家にたどり着けるのは、いつのことになるだろうか?
その日がまた来るのを楽しみに待つことにしたい。
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