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米国マーケティングトレンド研究会 2021.09.07

スタバのパンプキン・スパイスラテは、どのように文化に根付いたのか?

アメリカでは18年前から、日本では2006年から市場にお目見えしたスターバックスの「パンプキン・スパイスラテ」。アメリカでのパンプキン・スパイスの伝統的な人気にあやかり、アメリカではすっかり季節の商品として定着しています。パンプキン・スパイス製品のようにアメリカの消費者をわくわくさせる季節の商品は他にはあまりありませんが、その購入意欲は人々のホリデーシーズンの記憶と深く結びついています。

スターバックスは、2006年から、世界的に有名な「パンプキン・スパイスラテ」を日本で販売開始しました。「パンプキン・スパイスラテ」は、アメリカでは毎年秋になると発売が待ち望まれる商品です。実際、多くのニュースネットワークが「パンプキン・スパイスラテ」の発売日を発表するほど重要なイベントになっています。しかし、なぜそんなに人気があるのでしょうか?

そもそも、パンプキン・スパイスとは?

パンプキン・スパイスは、シナモン、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、オールスパイスを組み合わせたもので、もともとはカボチャの味付けに使われていました。レシピにパンプキン・スパイスが登場したのは、1936年のThe Washington Post(ワシントン・ポスト)紙が最初です。1950年代には、McCormick(マコーミック社)などのスパイス会社が、パンプキンパイに使われるスパイスをすべて組み合わせた缶入りのパンプキン・スパイスを販売しました。パンプキン・スパイスには、実際にはカボチャは入っていないところがミソです。

これらのスパイスを使った最初のパンプキンパイは、最初の感謝祭で食べられたと伝えられており、それ以来、パンプキンパイは感謝祭の伝統的なメニューとなっています。

スターバックスは、「パンプキン・スパイスラテ」を最初に作った企業ではありませんが、最初に普及させた企業と言えます。スターバックスは、秋のシーズナルドリンクを持つことによって、ホリデー商戦の成功を確実にしようとしたのです。2003年に一部の店舗で発売された「パンプキン・スパイスラテ」は、2004年秋に全米で発売されました。[1]

パンプキン・スパイスは秋の人気商品となり、他のブランドでもパンプキン・スパイスメニューが作られるようになりました。スターバックスの広報担当者によると、デビュー以来、「パンプキン・スパイスラテ」は5億杯以上販売されているそうです。[2]スターバックスでは、パンプキンスパイス商品だけで、毎年1億5千万ドル以上を売り上げていると言われています。パンプキンスパイス製品を販売しているのはスターバックスだけではないことを考えると、アメリカ人は本当にパンプキンスパイスが大好きなのだということがわかりますね。

なぜアメリカ人はパンプキンスパイスが好きなのか?

パンプキン・スパイスのようにアメリカ人を熱狂させる季節性商品は他にはほとんどありません。これは、なぜなのでしょうか。

その理由のひとつは、カボチャがアメリカ文化と深く結びついていることが挙げられるのかもしれません。

初期のアメリカ入植者は、現代のアメリカ人のようにカボチャ好きではありませんでした。ヨーロッパでは珍しいカボチャですが、北米大陸では豊富にあります。初期の入植者たちはカボチャの調理法を知らなかったため、他に食べるものがないときの「最後の手段」としてカボチャを食べていたのです。[3]

それが、感謝祭や秋の収穫を連想させるようになってからは、カボチャは幸せのシンボルとなっていきました。アメリカは非常に若い国であるため、文化も非常に若いと言えます。ヨーロッパからの入植者によって植民地化されたため、ヨーロッパと多くの文化的特徴を共有しています。しかし、カボチャは、アメリカ人が自分たちの祖先と比較したときに「アメリカ独自のものだ」と思えるものです。[4]

また、アメリカ人である筆者の視点では、アメリカにおける限定食品の珍しさも関係しているかもしれません。日本のように季節ごとにその季節限定のお菓子やフレーバーがたくさんあるのとは違い、アメリカのブランドは通常このようなマーケティング戦略を取りません。実際、ある調査によると、アメリカ人の40%は、パンプキンスパイスの商品を、他の商品と同じように1年中販売することを望んでいます。

「パンプキン・スパイスラテ」のように、このモデルを使って明らかに成功したものもありますが、この季節限定の戦略を採用しているブランドは非常に少ないため、「パンプキン・スパイスラテ」の特別感が増しています。アメリカの歴史に完全にマッチしているだけでなく、特定の時期にしか味わえないため、多くの消費者にホリデーシーズンが始まる前の秋の楽しみを提供することができます。

スターバックスとパンプキンスパイスラテから学べること。

2021年、スターバックスは「パンプキン・スパイスラテ」の販売を一足早く開始しました。これに対抗して、ダンキンドーナツなど他のブランドでもパンプキン・グッズのメニューを一足早く発売しました。これは、多くのアメリカ人が、パンプキン・スパイスをはじめとする秋をテーマにしたグッズを展開するには、8月下旬が適していると考えているからでしょう。Morning Consult(モーニングコンサルト)社の世論調査によると、アメリカ人の4人に1人が同様に考えています。 [5]とはいえ、人々の発売の希望時期としては、やはり「9月上旬」がダントツです。

秋口を迎える前の8月にパンプキングッズが発売されるのは違和感があるかもしれませんが、「パンプキン・スパイスラテ」がアメリカのポップカルチャーの中で重要な位置を占めていることは間違いありません。パンプキン・スパイスグッズ(特にスターバックスのラテ)は、夏が終わり、ホリデーシーズンの準備を始める最初のサインだと言えるでしょう。スターバックスがこれらの商品で大きな利益を上げている理由の一つは、おいしいからだけではなく、季節の変わり目であり、ホリデーシーズン到来の象徴でもあるからと言えます。

その地位を維持するためには、パンプキン・グッズを他のカフェブランドよりも早く発売することが不可欠かも知れません。

これらのグッズの成功から得られる最大の学びは、有名になるためには、ブランドや商品に感情を持たせる必要があるということです。スターバックスは、「パンプキン・スパイスラテ」を通じて、秋の気分を「創造」しました。今、消費者はメニューにパンプキン・スパイスがあると、たとえ8月にラテを飲んでいたとしても、ホリデーの始まりを気分的に楽しむことができます。移民が多く、異なる文化を持つアメリカでは、このようなひとつの感覚を瞬時に作り出すのは難しいことです。しかし、私たちをひとつにするものはまだあり、それが何かを見つけることが、製品を安定して売ることができる一番の方法に違いありません。


参照元:

[1] Why the pumpkin spice latte will never die

[2] Everything you need know about pumpkin spice marketing

[3] Here’s why Americans love pumpkins so much

[4] Pumpkin spice products poll

[5] Pumpkin spice products poll

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