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アメリカのウェンディーズはソーシャルメディアで一風変わったブランドボイス戦略を行っています。企業としての専門的な側面を前面に出すのではなく、アグレッシブで、面白おかしく、そして少し意地悪とも言えるようなスタンスをとっています。その「意地悪な」ブランドボイスは、消費者の話題になることで実を結んでいます。それは、ウェンディーズが顧客とうまく調和していることの証であり、とても好意的に受け止められています。
1月12日は「ナショナル・ロースト・デー」です。ほとんどのアメリカ人は、この祝日があるということすら知りません。しかしながら、大手ファーストフードチェーンのウェンディーズは毎年、この日にソーシャルメディア上でイベントを行っています。ただ、ウェンディーズはローストデーに伝統的なローストレシピを作ったり、メニューからロースト商品をおすすめしたりするのではなく、公式ツイッターアカウントで他社を「ロースト(ジョークでからかうの意)」しているのです。
型破りな施策ですが、これがウェンディーズのブランドボイスなのです。
独特なブランドボイスのウェンディーズ
ウェンディーズのキャラクターになっている女の子は、とても無邪気でかわいらしい印象です。しかし、彼らのオンラインでの印象は、それとは正反対です。ウェンディーズはソーシャルメディア上で、大人気ない存在感を放っていると話題なのです。
ウェンディーズに対する評判は、礼儀正しく感じが良いというものではなく、攻撃的で時には意地悪だ、というものです。それは特に、他のブランドとの関りにおいてみられるものです。
ウェンディーズといえば、マクドナルドを揶揄することで有名です。2017年、ウェンディーズはツイッターでマクドナルドを「ロースト(ジョークでからかう)」し、ウェンディーズ製品との品質比較をし、成功しました。それ以来、ウェンディーズは、様々なブランドを「ロースト」するようになったのです。そして、各々のブランドは、ウェンディーズに「ロースト」してほしい、とリクエストすることもできるのです。
It’s #NationalRoastDay™
Drop the “roast me” below 👇Oh, and don’t forget to get free medium fries with purchase, in the app.
Gotta do something with all this salt.— Wendy’s (@Wendys) January 12, 2022
ウェンディーズのアカウントでは、質が悪い製品や不味い食品を販売する会社について、遠慮なく言及しています。また、倫理観が欠如していたり、顧客に対して不誠実な対応をしたりする企業を非難することもあります。
これは2022年の今も続いています。多くのブランドがウェンディーズの公式アカウントと冗談を言い合おうとし、ウェンディーズはそれを受けて意地悪なジョークで返しています。そしてウェンディーズは、この風変わりな戦略を、ソーシャルメディア上だけでなく、トラディショナルメディアでも繰り広げているのです。2022年2月下旬には、「マクドナルドのフライドポテトは劣悪だ」と嘲る広告を出しています。[1]
ウェンディーズのこういった姿勢は攻撃的にも見えますが、顧客はこれを楽しんで見ています。また各社とも、ウェンディーズのアカウントと絡みたいと思っているのです。「ロースト」されることで、ソーシャルメディアの注目をたくさん集めることができるからです。
なぜウェンディーズのブランドボイス戦略はうまくいったのか?
よく知られていることですが、Z世代やミレニアル世代などの若い世代の人々は、大企業を信頼しなくなってきています。企業の取り組みはすべて、自分たちにもっとお金を使わせるためだと彼らは考えており、不信感を持っています。そのため、企業が発信するメッセージや製品に共感しにくくなっているのです[2]。
そんな中、ウェンディーズのマーケティング戦略には、楽しさという要素が見て取れます。ウェンディーズは、何かを売るプロモーション戦略においても、笑いをとりに行こうとしている、若い消費者の目にはそう映っているのです。その大胆なコミュニケーション戦略は、ウェンディーズブランドの醍醐味ともなっています。
これまで多くのブランドは、消費者と接点を持つために、中立的な立場を保ち、できるだけ多くの人に好感を持ってもらおうとしてきました。結局のところ、ネガティブ要素がないブランドのことは、誰も嫌いにならないというわけです。
そんな中、Z世代とミレニアル世代は、違った考えをもつようになっています。彼らが支持するのは、「正直で、自分たちが関心を持っている問題に立ち向かうブランドだ」という調査結果がでています。彼らは、中立的な立場を貫くブランドには魅力を感じません。なぜなら、ビジネス上の信念を感じとることができないからです。
ウェンディーズは、自らの考えを明確にし、臆せずそれを公にしています。これこそが、ミレニアル世代やZ世代が好感を持つ点なのです。
結論 :ウェンディーズのブランドボイス戦略を採用すべきブランドとは?
ウェンディーズブランドは、ユニークで親しみやすいブランドとして確立されていますが、オンライン上で、アグレッシブなアプローチを取るのはリスクが伴うブランドボイス戦略でした。彼女のブランドボイスがうまく機能しているのには、いくつかの理由があります。
1つ目は、開始当初、それは非常に独特な戦略だったため、目につきやすかったことです。
2つ目は、ウェンディーズの顧客は若い人が多くソーシャルメディアに精通しているため、たとえアグレッシブだったとしても、彼らにとっては魅力的であったことです。
3つ目は、ウェンディーズの発信するコメントや広告は純粋に面白いということ。
4つ目は、ツイッターユーザーは、議論が白熱するのを楽しみにしており、ウェンディーズのブランドボイス戦略に適したプラットフォームだということです。
このような要因が重ならなければ、この戦略はうまくはいかなかったでしょう。
ウェンディーズ以外にも、こうしたブランドボイス戦略をとる企業があります。Duolingo(語学アプリを提供するブランド)はTikTokで同じようなブランドボイス戦略をとっています。彼らは、他社を「ロースト」するのではなく、TikTokに笑いを求めるZ世代やミレニアム世代の声をまねて、からかっています。
コツは、ユーザーが各ソーシャルメディア・プラットフォームをどんな目的で使っているのかを把握し、その声に応えることです。彼らのニーズに沿った発信をすることで、消費者はそのブランドが自分たちの好き嫌いを分かってくれていると実感でき、そのブランドに対する信頼感が増します。そして、消費者は安心してブランドを支持し、周囲におすすめをし、そしてもちろん、製品をたくさん購入するようにもなるのです。
しかし、消費者の声を正しく理解するには、細心の注意が必要です。「偽物」というレッテルを貼られて信頼が失墜してしまわないように、ブランドボイス戦略に長けているマーケターと共に企画を進めることが重要です。
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