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米国マーケティングトレンド研究会 2021.06.30

バーチャルウェアは、ポストコロナのファッション業界の未来か?

最新のファッショントレンドの一つに、バーチャルウェアというものがあります。バーチャルで服を購入し、そのバーチャルウェアの販売元に自身の写真を送ると、あたかも自分がその服を着ているかのように写真を合成・加工してくれるのです。ゲームの世界の話のように聞こえるかもしれませんが、これは工場を減らして環境を破壊することなく、たくさんの服を売り買いすることができるエコな方法と言えます。

コロナウィルスの世界的な流行は、すべてのブランドや製品をデジタル化へと導きました。電子商取引は予想をはるかに上回るスピードで成長しており、ますます多くのブランドが、自宅にいながらにして顧客に商品を届ける方法を見つけ出しています。

高級ファッションブランドにとって、このデジタル化への移行は文字通りの意味を持っており、いくつかのブランドは、バーチャルウェアにトライしています。

バーチャルウェアとは?

パンデミックが始まった頃、多くのファッションブランドは、通常の対面式ファッションショーをバーチャルイベントに移行しました。

ある企業では「非接触型サイバーファッション」と呼んでいますが、バーチャルウェアは、所有しているが触ることができないものです。バーチャルで服を購入し、そのバーチャルウェアの販売元に自身の写真を送ると、あたかも自分がその服を着ているかのように写真を合成・加工してくれるのです。

販売されているバーチャルウェアのデザインは非常に派手なものが多く、2000年代初頭のSF映画や、とてつもなく高級なファッションショーの衣装のようです。現実にはなかなか着られないものが着ることができる醍醐味があると言えるでしょう。1

なぜ人々はバーチャルウェアを買うのか?

画像:スウェーデンのブランドCarlings は「Last Statement T-Shirt」を販売しています。特定のシャツを購入し、そのTシャツにInstagramやFacebookのフェイスフィルターの要領で、デザインを加えることができます。Tシャツに表示できるデザインは、政治的な主張をデザインしたもので、何枚ものTシャツを買わなくても、自分の意見を簡単に表現することが可能です。2

パンデミックによって、あらゆるバーチャルなものが魅力的になりました。Eコマースの専門家は、パンデミックがオンライン市場にかつてない成長をもたらしたと述べています。オンラインの世界はかつてないほど進化しており、2020年はオンラインの成長にとって歴史的な転換点になると考える専門家もいます 。3

一方で、残念なことに、衣料品や小売は成長率が大きく落ち込んでいます。ロックダウン対策で人々が家に閉じこもらざるを得なくなったため、新しい衣類の必要性が大幅に減少したということです。2021年2月の時点でも、企業や工場の需要は大きく減少していました。4

ある意味、バーチャルな衣料品のオンライン販売は以前から存在していました。しかし、それらはゲームの中でしか利用できないものでした。ゲームのプラットフォームであるSteam(スティーム)には、「Steam Community Marketplace」というものがあり、そこでは「ゲームプレイでは役に立たない」見た目を良くするためだけのアイテムが販売されています。衣服や武器などの仮想的なアップグレードは、現実のお金で売り買いが行われ、ゲーム会社は販売による利益の一部を得ることができます。5

バーチャルウェアの最大の魅力は、現実世界の資源を一切使わないことでしょう。世界のファッション業界では、年間約17億トンのCO2が排出されています。これは、国際線の航空機が1年間に排出するCO2よりも多い量です。6

Carlings(カーリングス)という2018年からデジタルウェアを販売している会社は、ソーシャルメディアでより良い写真を撮るためだけに新しい服に資金と資源を費やす人々に代わるものとして、デジタル製品を提供しています。1枚のバーチャルウェアの価格は日本円で約1300円〜4000円7で、これはソーシャルメディアで生計を立てているインフルエンサーのような人々にとって、素晴らしい選択肢です。また、常に新しい服を購入したりしなければ、工場からのCO2排出量を削減することができるのですから、悪いことはありません。8

バーチャルウェアはトレンドになるか?

にわかには信じられないかもしれませんが、このトレンドには大きな可能性があります。若い世代だけでなく、ファッションに敏感な人々は、これまで以上にインターネットを利用しており、また環境にも関心を持っています。

調査によると、ジェネレーションZやミレニアル世代は、これまで以上に気候変動への関心を高めているようです。この問題に対する情熱は、彼らのソーシャルメディアでの存在感に表れています。ある調査によると、Z世代とミレニアル世代は、上の世代に比べて気候変動に関する投稿の頻度が非常に高いことがわかっています。9

バーチャルウェアを、環境意識の高い人々のためのエコフレンドリーな選択肢として位置づけることで、このトレンドがより主流になってゆく可能性があります。さらに、今回のパンデミックでは、対面式のイベントの多くが、バーチャル空間でも同じように効果的に開催できることが証明されました。さらに技術が進歩すれば、バーチャルイベントでバーチャルウェアが使われるようになっても不思議ではありません。

 


参照元:

  1. https://www.telegraph.co.uk/business/2021/06/21/inside-cyber-fashion-market-digital-clothes-sell-thousands/
  2. https://carlings.com/en/atf/campaign-page/
  3. https://unctad.org/news/how-covid-19-triggered-digital-and-e-commerce-turning-point
  4. https://www.reuters.com/business/retail-consumer/what-recovery-clothes-retailers-cut-orders-while-factories-fight-survive-2021-02-08/
  5. https://bettermarketing.pub/how-valve-makes-billions-in-passive-income-f0372e8693d2
  6. https://www.wbur.org/hereandnow/2019/12/03/fast-fashion-devastates-environment#:~:text=The%20global%20fashion%20industry%20emits,by%20international%20flights%20and%20shipping.
  7. https://www.papermag.com/carlings-neo-ex-2620957136.html?rebelltitem=21#rebelltitem21
  8. https://www.jantrendman.com/en/trends/carlings-digital-collection
  9. https://www.pewresearch.org/science/2021/05/26/gen-z-millennials-stand-out-for-climate-change-activism-social-media-engagement-with-issue/

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