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かつて、ラーメンといえば、そのほとんどは日本からの移民、つまり日系人が食べていたものでした。ラーメンはアメリカの一般的なスープ料理とは異なるため、文化的な障壁があり、多くのアメリカ人はラーメンを食べたいと思わなかったのでしょう。しかし、現在ではその壁もなくなり、多くのアメリカ人がレストランや家庭でラーメンを好んで食べています。
アメリカ人にとってラーメンとは?
2000年代前半まで、アメリカ人が食べたいと思う日本食といえば、寿司、刺身、天ぷら、照り焼きの味付けなどが主流でした。ラーメンは、2004年頃から徐々に新しい日本食として広がりをみせています。
そして、2023年、ついにラーメンは最も求められている日本食の一つとなりました。その証拠にGoogleトレンドで主な日本食を比較して見ると、寿司に次いで、ラーメンは多く検索されています。
もともと、多くのアメリカ人が知っているラーメンといえば、“インスタントラーメン”だけでした。日清食品が1971 年に米国でインスタントラーメンの販売を開始し、1978 年には「Mikey Likes It」というキャッチフレーズとコマーシャルを活用した大規模な広告キャンペーンを展開[1]。これがヒットし、インスタントラーメンは、忙しい人々や手早く食事を済ませたい人々の主食となったのです。
その後、キッチンが無い学生寮でも簡単に作れるということから、大学生にも受け入れられ、ラーメンといえば空腹の大学生が食べるインスタントラーメンというイメージが根付いていきました。
1980年代に入ると、アメリカでもJapanophilia(日本ブーム)が起こり、西海岸や日系移民のコミュニティを中心にラーメン屋がいくつかオープンしました。ただし、この時はまだ、日系以外のアメリカ人が集う日本食レストランのメニューには、ほぼラーメンはありませんでした。
なぜアメリカ人は最初、ラーメンを食べなかったのか?
最初、アメリカ人にラーメンが広がりにくかった理由はいくつか考えられます。そのひとつが、ラーメンがアメリカの一般的なスープ料理と違う、ということです。
日本のラーメンは、熱々のスープを冷ましながら最初に麺や具を食べ、最後にスープを飲み干すように作られていますが、当初アメリカ人は、シチューやスープのような感覚でラーメンを捉えていたため、当然のようにスープを最初から飲もうとしました。また、通常、スープはスプーンしか使わないので、箸も使うことにも、大きな違和感を感じたようです。
実際、オレゴン州ポートランドで 90 年代初頭に創業した「まる金ラーメン」でも最初は通常のラーメンを作っていましたが、最終的にはアメリカの食文化を反映するようにスープの温度を下げたり、麺の硬さを変えたりとレシピを変更しました[2]。これにより多くの顧客を獲得することにつながりましたが、それは裏腹に、本来のラーメンの美味しさが広がりにくいことを意味していました。
アメリカにラーメンが広がった2つの理由
では、どのようにしてアメリカでラーメンが普及したのでしょうか。2000年代半ばのプチブームを経て、2010年代に入ってから着実にラーメン人気が高まりました。ラーメンが注目されるようになったのは、高級レストランの評判と、実は大人気アニメの影響が大きいと考えられます。
レストラン 百福 の影響
日清食品の創業者である安藤百福の名を冠し、2004年にデビッド・チャンがニューヨークでオープンさせたのがレストラン“百福”です。この店は、アメリカでラーメンを普及させる上で重要な役割を担いました。
当時、アメリカ人の多くは、ラーメンを「すぐに食べられるもの」としか考えていませんでした。しかしこニューヨークにオープンしたレストラン百福は、ラーメンをメインディッシュとし、きちんとした料理として出したのです。これはニューヨークの食通の間に、ラーメンという料理の概念を高めることつながりました。
日本のアニメ NARUTOの影響
日本人からしたら冗談のように聞こえるかもしれませんが、これは本当の話しです。2005年9月にアメリカで放映開始されたアニメ「NARUTO -ナルト-」は、ドラゴンボールやセーラームーンなどそれまであった有名なアニメに匹敵するほどの人気を獲得しました。アメリカでアニメが終了してから6年経った今でも、Googleの州別検索結果によると、NARUTOは最も検索されるアニメとなっています[3]。アニメやマンガを見たことがある人なら知っていると思いますが、主人公のナルトは、行きつけの“一楽ラーメン”で多くの時間を過ごします。さらに、ラーメンが食べたくて買ってきてもらったり、ラーメンを食べている夢を見たりするシーンも出てきます。
アメリカの若者は、この作品で初めてラーメンを知り、「大人になったら自分も食べてみたい!」と思うようになったようなのです。
ラーメンの進化、ポイントは汎用性にあり!?
アメリカの文化に適応するために、レシピと伝統は時間の経過とともに変化しています。実はラーメンはその汎用性の高さによって人気を保ってきたのかもしれません。
たとえばベジタリアンやヴィーガンの影響を受け、大根や人参、エノキなどの野菜をたくさん入れたアレンジレシピがソーシャル メディアで流行しました[4]。
また、アメリカナイズされたラーメンのレシピのほとんどは、できるだけ多くの量を器に盛ることに重点を置いています。
他にも、以下のようなアメリカらしいラーメンにまつわるトピックスをご紹介します。
・ラーメンハック
今でもまだ、アメリカ人にとって身近なラーメンは“インスタントラーメン”です。しかし、かつては労働者がさっと食べるもの、空腹の大学生が食べるもの、というスナックのようなイメージでしたが、今はTikTokやInstagramで新たな人気の波がきています。
この2つのプラットフォームで流行しているのが「#ラーメンハック(ramen hacks)」です。インスタントラーメンにたくさんの具材を追加トッピングする様子がアップされています。ただのインスタントラーメンを食べるより、健康的だとアピールするこれらの動画は、その真意はともかく、大流行しているのです。
また、麺を茹でるときに卵を加えたり、アメリカンチーズを一枚加えたり、その他のシンプルな具材を加えたりするラーメンハックもあり、いろいろな楽しみ方が広がっています。
・ラーメンバーガー
2010年代半ばからのもう一つのトレンドは、ラーメンバーガーです。これは、バンズの代わりに麺を使ってハンバーガーを作るというものです。
ラーメンバーガーは、Ramen Shackを経営するカリフォルニア出身の日系人、Keizo Shimamoto氏が考案しました。2013年8月に行われたニューヨークのフードフェアに出店以来、連日行列ができるほどの人気メニューに。アメリカをはじめとし、カナダ、ドイツ、フィリピンなど海外にも広がっています。
まとめ :食文化の歴史にヒントが!
2023年現在のアメリカでは、ラーメンは若者向けの安っぽいスナックではなく、高級なレストランで出されるメニューとして、家庭的な食べ物として、そして無限にカスタマイズ可能な料理として定着しました。
アメリカのラーメンには、日本のようにメンマや海苔は入っていません。しかし形を変えながらもハンバーガーやステーキ、パスタなど、アメリカ人が大好きな食べ物の仲間入りをし、深く愛されるフードの一つとなりつつあります。
食文化の歴史や流行の理由を知ることはとても興味深く、これからアメリカ人に日本食がどのように受け入れられていくかを予測する上で、たくさんのヒントがつまっていますね。
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