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アメリカでは、サンクスギビングデーの翌日の金曜日、通称ブラックフライデーは、一年で最も忙しいショッピングの日です。2023年、一般の消費者はブラックフライデーに約400ドルを費やしました。(2022年と比較すると約7ドル増加)[1]。支出の増加から、アメリカの一般の消費者は年々、抵抗なく気軽にお金を使うようになってきている、と思われるかもしれません。ところが、消費スタイルがどのように変化しているのかという視点で分析してみると、違う一面を伝えられるかもしれません。この記事では、2023年のアメリカにおけるブラックフライデーの状況と、そこから推測できるアメリカ人の消費行動の変化、消費者心理についてまとめています。
アメリカのブラックフライデーの歴史
アメリカでブラックフライデーは長い間存在しています。1930年代には、サンクスギビングデーの翌日にショッピングに押し寄せる大勢の人々についての報道があり、信じられないほどの渋滞や通りを埋め尽くす人々が問題となりました。近年では、ブラックフライデーの混雑がちょっとした迷惑というレベルを超えて、危険な出来事に発展しています。
2006年以来、ブラックフライデーのセール関連の口論が発展し、それによって少なくとも17人が命を失い、100人以上が負傷しています[2]。特売の商品を手に入れようして店のドアが開くのを待ち望み、ドアが開いた後に殺到した買い物客の群衆によって店員が踏みつけられるという事件もありました。これらは、アメリカ人がブラックフライデーでセール品を買うことに、どれだけ執着しているかを示しています。
パンデミック以来、ブラックフライデーの買い物客数は、コロナ禍のロックダウン、経済的な安定、そして一般のアメリカ人の習慣の変化に合わせて幾度か変動してきました。しかし、2023年には外出自粛義務がなくなり、一般のアメリカ人はもはや、新型コロナウィルス感染の危険性について考えなくなったと推測されます。そのため、2023年の消費スタイルは2020年代初頭と比べて、より恒久的なものと言えるでしょう。では、その消費スタイルとはどのようなものでしょうか。
実店舗での買い物減少、支出が増加
ニュースでは、『2023年ブラックフライデーは過去最高の支出額を記録したものの、買い物客の数は過去の数値に及ばなかった』と報道されました。店舗で買い物をするのではなく、オンラインで商品を購入する客が増えたのです。では、この変化はなぜ起こったのでしょうか?その理由はいくつかあります。
サンクスギビングデーに店舗が閉まることが増えている
ブラックフライデーという名前からも分かるように、通常はサンクスギビングデーの翌日の金曜日から始まります。しかし、90年代以降、一部の店舗ではサンクスギビングデーの夜にも営業するようになりました。この「ブラックサーズデー」というパターンは、いくつかの理由で店舗に人気となりました。まず、営業時間を延ばすことでブラックフライデーの混雑を緩和する試みであったこと。そして、サンクスギビングデーの夕食が通常の夕食時間よりも早い時間(通常は午後7時ですが、サンクスギビングデーのディナーは午後4時頃に食べられます[3])であるため、早割りショッピングのために店舗を開けることは、売り上げを増加させる簡単な方法でした。
過去にウォルマートやターゲットなどがこのスケジュールを採用していたため、スタッフに対して長時間労働を強いたり、家族と一緒に休暇を楽しむ機会を与えなかったりと、批判を浴びてきました。過去15年間において、両チェーンストアではブラックサーズデー/フライデーイベントで人が亡くなるという事態も起きています。そして2023年、ウォルマートとターゲットの両社はサンクスギビングデーには店舗を閉めることを発表しました。
ブランドロイヤリティの低下
2023年の状況分析から、顧客はブランドロイヤリティに対して価値を感じなくなってきていると言えます。RetailBrewに掲載された記事は、『2023年は2022年と比較して、顧客の間でブランドロイヤリティが急激に低下しているという傾向が見られる』と述べています。[3]
これは、さまざまな要因によるものですが、第一に、顧客は自分が好きなブランドに固執するよりも、最も安い価格を探すことに興味を持っていることです(次のセクションで詳しく説明します)。また、ブランドへの信頼も一般的に低下しており、Z世代がますます積極的な消費者になっていることに起因しています。
McKinseyによる調査では、アメリカとイギリスのティーンエイジャーに新しいサービスや製品を見つけるプロセスについて尋ねました。回答者のうち30%は、すでに気に入っているブランドで取り扱っているかをチェックすると答えました。しかし、62%は、お気に入りのブランドがあっても、購入する前に複数のオプションを検討すると答えました。[4]
言い換えれば、強力な消費者となってきているZ世代は、商品を購買する際にはブランドロイヤリティをあまり重視しない傾向にあります。ブラックフライデーでも、彼らは店舗に向かわず、自宅で選択肢を比較し、オンラインでショッピングをしていました。
オンラインショッピングはより便利で、価格比較ができる
Z世代のブランドロイヤリティの低下、そしてオンラインショッピングの利便性により、ブラックフライデーのショッピングは直接店舗へ行くものから、オンラインでのイベントへと変化しました。消費者は最初に見つけたお得な情報から商品を手に入れるために、店舗に向かうのではなく、購入前にオンラインで価格を比較する時間を取るようになりました。[5]
小売業者はこの変化に気付き、消費者の購買行動を利用しています。この20年ほどの間に、サイバーマンデーはブラックフライデーと同じように、アメリカのホリデーシーズンの買い物客に定着しました。
では、なぜサイバーマンデーなのでしょうか?なぜブラックフライデーの買い物を、自宅でオンラインショッピングしないのでしょうか?その理由は2つあります。1つ目は、多くの人々がブラックフライデーにはまだ家族と休暇中であり、オンラインショッピングよりも家族と過ごす時間が重要視されるためです。2つ目は、すべてのアメリカ人がコンピュータにアクセスできるわけではないからです。スマートフォンの登場によってこの問題は大分解消されましたが、初期のサイバーマンデーの頃はコンピュータにアクセスすること自体が特権でした。多くの人にとって、コンピュータにアクセスできるのは仕事の時だけでした。そのため、休暇が終わって月曜日に仕事に戻ると、オンラインショッピングを始めたのです。
まとめ
ブラックフライデーの買い物パターンは、一般のアメリカの消費者の現状について多くを示しています。2023年のパターンからは、大きなポイントが明らかになりました。消費者はギフトや贅沢品にお金を使いたいと思っています。ただし、彼らは非常に慎重に行動します。今まで以上に、消費者は商品を購入する前には情報収集し、比較検討をしています。リピーター、そして新規の顧客を惹きつけ獲得するには、競合他社との比較でどれだけ優れているかにかかっています。
そのため、自社製品が他社と比べて優れているポイントをマーケティング活動によって明確に強調することが重要です。なぜ他社製品よりも自社製品を選ぶべきか、消費者がすばやく理解できるようにしましょう。また、競合他社が顧客を惹きつけるためにどのような戦略を使っているかを理解し、どの点で差別化できるかを見極めましょう。
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