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米国マーケティングトレンド研究会 2023.05.18

人間か、AIか。コンテンツ制作はChatGPTだけに頼るべきではない3つの理由

マーケティングの世界は、OpenAI社のChatGPTをはじめとするAI技術で盛り上がっています。コピーライティングや画像制作の仕事を数分でこなすことができるため、将来的にコンテンツマーケティングチームやクリエイティブ職が不要になるとの見方もあります。しかし、ChatGPTだけに頼るのは、現状では成功のための戦略とは言えません。ライターやデザイナーなどクリエイターの仕事が完全に取って代わられない理由があります。

今やAIは生活の一部に。

AIは今や私たちの生活の一部となっています。Webサイトに訪問したユーザーの困りごとを解消するためのチャットボット、写真に写った人を自動的にタグ付けするスマートフォンの機能、さらには入力時のスペルミスを自動的に修正するオートコレクトなど、小さいながらもAIが日常生活に欠かせない存在になっていることがわかるでしょう。

そして最近は、話題のChatGPTの登場により、一部のマーケターがクリエイティブチームの一部をChatGPTが生成するコンテンツに置き換えることを検討して始めています。果たしてコンテンツマーケティング戦略において、AIが生成するコンテンツをうまく活用できるといえるのでしょうか? ここでは、うまく機能しないと考えられる3つの理由について探っていきたいと思います。

なぜマーケターは、人間よりもChatGPTの利用を検討しているのか?

まず初めに、ChatGPTやその技術が起こしているムーブメントについて簡単におさらいします。(こちらも合わせてお読みください!「新しいテクノロジー「ChatGPT」は、ビジネスのあり方を変えるのか?」)

ChatGPTは、サンフランシスコのスタートアップ企業OpenAI社によって作られたAIソフトウェアです。マイクロソフト社がこのプロジェクトに100億ドル以上の資金を投じたように、発売以来、システム系の大企業からも注目を集めています[1]。ChatGPTのダウンロード数は100万を超え、今や「AI」という言葉の代名詞となりつつあるのです。

(参考)ChatGPTのWEBサイトより

ChatGPTのようなAI技術は、ターゲットを理解しようとするマーケターにとって有用な技術です。なぜならAIは人間よりも多くのデータを分析し、パターンを認識することに長けているからです。そのデータの分析処理能力が高いだけではなく、驚くべきスピードでコンテンツを生成することができます。例えばブログ記事を1分以内に書き上げたり、キャッチフレーズやスローガン、その他のコピーのアイデアを生み出したりすることが容易にできるのです。

しかし残念ながら、現在のChatGPTは長期的かつ安定した成果をもたらすコンテンツマーケティング戦略構築のために活用することには、まだまだ不十分なものだと考えられます。

マーケティングコンテンツの作成をChatGPTだけに頼るべきではない3つの理由

1. 作成されるコンテンツが単純で退屈、反復された内容が多い
ChatGPTでコンテンツを生成するときは、質問やコマンドを入力します。簡単な入力で大量のコンテンツを作ることができるので、効率的です。

ChatGPTにコンテンツ作成を依頼する場合、質問やコマンドで促す必要があります。ChatGPTがマーケッターに支持される理由の1つは、簡単な入力で大量のコンテンツを作成できることです。例えば、業界トピックについてまとめたWEBサイト用のブログをChatGPTに書かせることもできます。例えば「舞茸の栄養効果についてブログを書いてください」とChatGPTに投げかけたところ、以下のような文字量のコンテンツが1分以内に生成されました。このような簡単な質問であれば、他の商材でも同じような記事を作成できる可能性があります。

(参考例)ChatGPTのプロンプトへの回答 “舞茸の栄養効果についてブログを書いてください”

しかし、ChatGPTは回答例を繰り返す傾向にあるので、複数の人が同じ質問をした場合、だいたい同じような内容の回答案が5〜6点はリストアップされてしまいます。さらにキノコに関する情報を集めるためにすでに複数のWEBサイトを見ている読者にとっては、すでに知っていることばかりで、何の価値もない情報と感じるかもしれません。

他にも、ChatGPTを使って他言語のコンテンツを作成する場合は特に危険です。そのコンテンツがネイティブスピーカーにどのように読まれるかわかりませんし、予想したようなクリックが得られないことも起きるでしょう。

サイト訪問者数を増やすには、他の競合が持っていない情報を提供する必要があります。単純なChatGPTのプロンプトに頼ってコンテンツを生成すると、最初は閲覧されるかもしれませんが、ユーザーの興味を維持できない平凡なものになる可能性が高くなります。
だからこそ生成されるコンテンツがターゲットにインパクトを与えられるほどのレベルであるかどうかを確認するためにも、消費者インサイトやブランドゴール、市場、その他のニュアンスを理解する人間が介在することが必要となるでしょう。

2.新しい情報でコンテンツを生成することに向いていない。
例えばあなたが「価値があるな」と感じる情報はどのようなものでしょう?のどこにもなかった知識やユニークな情報ではないでしょうか?残念ながらChatGPTを中心としたAIでは決してそういったユニークなコンテンツを生成することができません。

なぜならAIは「良い」と認識される会話や説明のパターンを模倣するようにプログラムされているので、そもそも人間がすでに作り出したものからしか学ぶことができないからです。ChatGPTはデータ分析を通じてマーケッターが効率的に戦略をプランニングできるパターンを見つけることを助けるかもしれませんが、新しいアイデアを生成することには長けていないようです。

またChatGPTは情報量で遅れをとっていることも不安要素です。「2021年以降の世界情勢に関する知識が限られている」といわれています。例えば、ChatGPTに英国人向けのコピーを書かせた場合、2022年にエリザベス2世が 逝去されたことがアップデートされておらず、スピーチの中で女王に対して言及する可能性があります。このような間違いは、人間がチェックすれば防げるはずのものではありますが。

そもそもコンテンツマーケティングを成功に導くためには、新しい視点を取り入れたり、長年使われてきた製品でも時代やターゲットにあった新しい切り口で表現したりすることが非常に重要です。アップデートされていない情報や使い古された情報の羅列は逆効果になってしまう可能性すらあります。

3. 一見正しく見えるが、誤った情報が含まれている可能性がある。
ChatGPTで生成されるコンテンツは、基本的に入力者が望む答えを出すように設計されています。その結果、説得力があり読みやすいけれど、誤った答えが返ってくることがあります。

そもそもChatGPTは、内容の正しさを優先するのではなく、正しいと納得させることを優先するようにプログラムされています。例えば、“アメリカで最も人気のある日本の缶詰を教えてください”とChatGPTに入力した結果が以下の通りです。

(参考例)ChatGPTのプロンプトへの回答 “アメリカにおける日本の缶詰の人気について教えてください”

アメリカでどんな日本の缶詰が人気なのか調べている人にとって、これはとても参考になる回答に思えるかもしれませんが、残念ながら正しい情報ではありません。

例えば1つ目のツナ缶について、そもそもほとんどのアメリカのスーパーマーケットでは、日本の缶詰は売られていません。アメリカ人がツナ缶を使って料理をするときに日本製を使うことはなく、アメリカでよく使われるツナ缶50銘柄のリストでも、日本の銘柄は一つもあがっていません[2]。それなのに、ChatGPTでは最もポピュラーな日本の缶詰としてツナ缶が一番になってしまっています。

日本の缶詰 が、日本の専門店以外の店で売られていることは少なく、すでにアメリカブランドを中心とした非常に安定した缶詰市場があるのに、日本の缶詰がアメリカで「人気」と呼ぶのは、非常に誤解を招きかねません。よって本来であれば、その前提で回答が出ていないとおかしいのです。

以上3つの観点から見ても、ChatGPTが適切な回答を与えていることを確認する唯一の方法は、人間がクロスチェックすることだと言って良いでしょう。そうしなければ、誤解を招くような質の低いコンテンツを公式発表してしまう事故を起こしかねないのです。

まとめ:人間の力はまだまだ必要!

ChatGPTは、医学的な事実の説明や概念の曖昧な要約は得意ですが、人間味を感じさせるようなことは苦手です。小さなブランドをマーケティングの力で大きなブランドに変えるような人間的な洞察力はありません。また、新しいターゲットを獲得しファンを増やす術も持っていません。特にZ世代にとって、ブランドが発信するコンテンツにおける最も重要な価値は信頼性です[3]。AIにだけ頼ってコンテンツを生成することは、将来Z世代が大きな購買力を持つまで育ったときに、ブランドの成長を失速させてしまうかもしれません。

消費者は現在、顧客や従業員、製品の品質を大切にするブランドを求めています[4]。さらにかつてないほどパーソナライズ化、つまり企業側がそれぞれのユーザーの属性、趣味嗜好、行動データ履歴といったデータにあわせて情報提供することがあたりまえになりつつあるともいえます。

そのような状況において、ブランドとブランドファンとのつながりを形成するためにコンテンツはますます重要になっています。その重要なタッチポイントをAIに託してしまうと、長期的な成功を得ることはできないでしょう。まだまだ人の心の機微を詠む人間の力が必要なのです。

 

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参照元

  1. https://www.forbes.com/sites/qai/2023/01/27/microsoft-confirms-its-10-billion-investment-into-chatgpt-changing-how-microsoft-competes-with-google-apple-and-other-tech-giants/?sh=5914e8ca3624
  2. https://www.nutritionix.com/grocery/category/fish/canned-tuna/188
  3. https://www.ey.com/en_us/consulting/is-gen-z-the-spark-we-need-to-see-the-light-report/gen-z-finding-meaning
  4. https://www.forbes.com/sites/annaschaverien/2018/12/12/consumers-do-care-about-retailers-ethics-and-brand-purpose-accenture-research-finds/?sh=3d1545ae16f2
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