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「うま味」は日本では一般的な用語ですが、海外ではどうでしょうか?長い間、アメリカ人は「うま味」という味覚をあまり意識していませんでした。1980年代以降、英語で「うま味」は流行語となって注目されるようになり、今では高級調味料の同義語となっています。アメリカ人の「うま味」への考え方を理解することで、アメリカでのターゲット層を見つけられます。
「うま味」と言えば、どんな食べ物を思い浮かべますか?
干し椎茸、味噌などの発酵食品、昆布やかつお節、しょう油、お肉などが思い浮かぶかもしれません。日本人は、どのような料理にうま味成分が含まれるか、それを食べると人はどのように感じるかを簡単に理解できます。しかし、アメリカでは「うま味」からあまりリアクションは起きません。
「うま味」は長い間、第五の味覚として認識されてきましたが、実際のところ、一般の人々には浸透していません。 このブログでは、アメリカでの「うま味」の歴史、そして、一部のブランドが製品を販売するためにこ「うま味」を取り入れている事例についてご紹介します。
アメリカでの「うま味」の歴史
アメリカ人の食文化では、甘味、酸味、塩味、苦味の4つの基本味に馴染みがあります。これらの言葉を聞くと、具体的な感覚が思い浮かびます。例えば、酸味は体をビクッとさせる感覚を生み出しますし、塩味は人をしょっぱい顔にさせます。しかし、うま味と言っても、ほとんどのアメリカ人はリアクションしません。多くの人が「それは第五の味覚だよね」と言うかもしれませんが、具体的に説明することはできません。
Google Ngramという、一定期間の印刷メディアでの単語使用頻度を収集しているサイトによると、うま味という言葉は1980年代頃から英語で使用されるようになりました。その後、2010年代に大きなブームが起こりました。〔1〕
なぜうま味が1900年代初頭に発見されたにも関わらず、英語圏では長い間認知されなかったのか、いくつかの理由があります。
「うま味」というワードは、もともと英語ではない
うま味は1979年以来英語の一部として認識されていますが、他の味覚を表すワードほど直感的ではありません。甘味、酸味、塩味、苦味は英語では複数の意味を持ち、話されたときに特定の感情やイメージを想起させることがあります。甘さは優しさを意味することもありますし、酸味は嫌悪を意味することもあります。苦味は怒りを意味することもあり、塩味は恨みを意味することもあります。
「うま味」は味覚を表すワードの内、唯一、一つの文脈しか持たず、そのため一般人に浸透する機会が少ないのです。 うま味が正式に「第五の味覚」として米国で認識されるようになったのは1990年以降で、多くの科学的研究が、池田菊苗博士の本来の発見を承認した後のことです。
うま味のネガティヴな認識?MSGによる汚名
一部の人にとって、うま味はモノソディウムグルタメート(MSG)と直結しています。化学的性質は似ているため、多くの料理のプロが同じものだと主張しています。最近はMSGの評判が変わってきていますが、アメリカではかなりの歴史的な嫌悪感と不信感があります。〔2〕
元々、MSGは第二次世界大戦中にアメリカの兵士に与えられ、食べ物をより風味豊かにするために使用されました。その後、加工された食品に添加され、1950年代には一般市民にも愛されました。しかし、1960年代になると、加工食品と食品加工前に添加する薬品に対する反発が広がりました。これにより、過度に加工された食品、非自然な食品から人々は離れていきました。
また、中国系アメリカ人の医師が、名高い医学専門誌である「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、大量のMSGが入った中国料理を食べた後、絶えず身体に不快な症状が起きていることを執筆しました。他に多くの人々も同様の症状を経験したと主張し、一部のアメリカ人は「中華料理症候群」という病状が存在すると信じました。
その後、アメリカ人の間でMSGに対する悪評が広まり、MSGは、含まれている製品を避ける理由としてよく使われるようになりました。しかし、最近の研究では、MSGとその症状との間には明確な関連性がないことが証明されており、MSGを避ける行為は最近では軽減されつつあります。
また、アメリカにはアジア系に対する反感を抱く長い歴史があります。これは1800年代に最初の中国移民が到着して以来、文化のトレンドに影響を与えてきました。アジア文化に対する厳しい態度はなかなか変わりにくかったのですが、最近では徐々に変わってきています。その中には、アジア料理やうま味に対する考えも含まれます。
高級なイメージを持つうま味
歴史的な背景にもかかわらず、過去10年程度でうま味は高級料理、レストラン、食材を連想させる言葉として広まりました。うま味はプロの料理人が最も使用する言葉の一つであり、高級食品を扱うウェブサイトでもよく見かけます。
「うま味」という言葉は、第五の味覚として広く認知されていますが、多くのアメリカ人にはつかみどころがないため、それは自動的に遠慮され、より高級な調味料としてとらえられることがあります。一般のアメリカ人が毎週買い物をする平均的な食品店では、うま味豊かな味をうたった製品を見つけることはあまりできないでしょう。しかし、トレーダージョーズやホールフーズなどでは、どれだけのうま味が含まれているかをアピールする多くの製品が並んでいます。〔3〕
ダイニングのトレンド:「うま味ボウル」
アメリカの一部の地域では、うま味を簡単な方法でレストランのメニューに取り入れ始めています。それが「うま味ボウル」です。アメリカ人がよく知っているアサイボウルのように、うまみのある食材を使って作られます。
うま味ボウルは通常、ご飯の上に肉、チーズ、特定の野菜などのうまみのある食材をトッピングしています。海藻や味噌ベースのソースなど、アジア的な要素が加わることもあります。一般のアメリカ人の好みに合った「うま味」をたっぷりと詰め込んでおり、興味深くてなじみのある味わいです。
このトレンドの最も興味深い点はそのネーミングです。他のレストランの「プロテインボウル」や「セイボリーボウル」といった名称をのメニューと内容は似ており、あまり変わりませんが、「うま味ボウル」というネーミングが特徴的です。
結論
うま味は、アメリカ人に浸透するまで困難な道のりを歩んできました。しかし、今では高級調味料としてとらえられ、高級なダイニング体験を示すものとされています。宣伝・広告でうま味を使用する場合は、高級なダイニングやグルメフード、高級な食材を使った料理に興味のあるアメリカ人をターゲット層としましょう。
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