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米国マーケティングトレンド研究会 2022.03.18

【ブランディング成功例】オーツミルクブランドOatlyが賞賛される理由

日本でも注目が集まっている「植物性ミルク」。中でも、アメリカではスウェーデン発のブランド「Oatly(オートリー)」がオーツミルクの代名詞になるほど人気を博しています。SNSを通じた顧客とのコミュニケーションは一風変わったものでありながら、彼らの遠慮がなく遊び心のあるブランドパーソナリティは、ファンを惹きつけるものがあります。

乳製品は人間の健康に欠かせないとして、長い間アメリカの食生活指針の主要カテゴリーに定められてきました。しかし、その一方でアメリカの人口の1/3が乳糖不耐症であることも事実としてあり、近年、乳製品の健康上の立ち位置が議論されるようになりました1。また、乳製品の生産過程で発生する大量の二酸化炭素を含む、様々な環境問題も問題視されています。これらの理由から「代替ミルク」の需要が高まりあらゆる植物性ミルクのブランドが誕生しました。

その中で、スウェーデン発のブランド「Oatly」が特に人気を集めています。Oatly はオーツ麦を使用してつくられたオーツミルクブランド。数ある代替ミルクブランドの中、どのようにファンを増やしていったのでしょう?

オーツミルクはよりサステナブルな植物性ミルク

アーモンドミルク、ライスミルク、ココナッツミルクなど様々なオプションがある中で、オーツミルクは比較的サステナブルな植物性ミルクと言われています。例えばアーモンドミルクの栽培には大量の水が使用され、ミツバチの大量死を巻き起こし、環境に多大な影響を与えていることが問題視されています。ココナッツミルクは、フィリピンやインドネシアの熱帯雨林の破壊や、生産者の貧困問題が挙げられます。対するオーツミルクはCO2排出量も少なく、使用する水、土地、エネルギーを比較的少量に抑えることができることで、アメリカの消費者から好まれています。

Oatlyは特に環境保全への取り組みに注力しており、製品パッケージにはカーボンフットプリント(企業が活動していく上で生まれるCO2の排出量)が表示されています。Oatlyが毎年発表しているサスティナビリティレポートでは、彼らのブランドと製品が、環境への影響をいかに真剣に考慮しているかが記されています。生産の現状を明確に述べ、環境への影響をどのように軽減するのか、また気候変動とどのように闘っていくのかが丁寧に語られています。

米マーケティング会社Cone LLCの調査によると、対象アメリカ人の94%が、社会貢献のためであれば、ブランドスイッチを行う(いま使用しているブランドから新しいブランドへ切り替える)と答えています。Oatlyの環境問題に対する姿勢は、業界を問わず、今すべてのブランドに求められていることの一つです。

Oatlyが愛されるもう一つの理由:「偽らない」ブランドパーソナリティ

Oatlyファンが続出する理由は、「偽らない」ブランドパーソナリティにあります。その一例に、SNSコンテンツや広告などで発信されるメッセージが話題を呼んでいます。中でも印象的なものはこちら:

参照元:The Challenger Project

ヘッドラインは「げ!これ、クソまずい!」と書かれています。消費者から実際Oatlyに届いたネガティブレビューを広告コピーに採用しているのです。広告のボディコピーはこのように書かれています。

「Oatlyの味が嫌いな人もいる。『オーツの味しかしなくてまずい!』と言われることもある。そりゃそうだ。オーツでつくったのだから。でも多くの人は、たんぱく質や繊維などがバランス良くとれて、美味しいと言っている。味の好みは人それぞれ。まずければ、あなたが個人的に嫌いなヤツに飲ませるといい。そういうのはビジネスではウィンウィンと言うのだ。」

世の中の多くの広告は商品や企業の良いところにしか光が当たりませんが、Oatlyはネガティブなコメントを逆手に取り、ユーモアを交えながらも正直に消費者と向き合っています。この姿勢こそ、ファンの信頼を獲得している理由です。このような対応はあまりにも露骨で、潜在的顧客を遠ざけてしまうのではないかと考える人もいるかもしれませんが、Oatlyのメッセージは消費者に賞賛されました。

Oatlyのクリエイティブディレクターはこのように語っています。「最も重要なことは、敬意を持って消費者に接することです。広告で消費者の時間を奪うからには、彼らを笑わせたり、彼らの興味を惹く何かでなければなりません。そうでなければ、意味がありません2。」

自社のブランドの弱みを消費者に見せることは、企業にとってリスクと捉える人も多いでしょう。しかし、いまの時代、ブランドの信念やスタンスを消費者に打ち出さないことの方がリスクです。Oatlyのような消費者との向き合い方は、これからのブランドコミュニケーションに必要不可欠と言えるでしょう。

Ys and Partnersはアメリカと日本の両国で、消費者調査に基づくブランド戦略構築を得意とする統合型マーケティングエージェンシーです。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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参照元

  1. https://agarwal-abhinav.medium.com/ganbaru-the-japanese-art-of-resilience-6d550b6d380d
  2. https://www.japantimes.co.jp/news/2021/04/18/national/americans-japan-positive-survey/

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