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先日、女子テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンを棄権したことが、日米共に大きな話題となっています。賛否両論ある中、アメリカの企業の多くは彼女をサポートする意向を見せています。特にマインドフルネスアプリのCalm(カルム)が取った行動には称賛が集まり、企業が社会問題に対して示すスタンスの重要性について考えさせられます。
大坂なおみ選手の全仏棄権。全面サポートするアメリカのブランド、Calm(カルム)から学べること。
先週、大坂なおみ選手が試合後の記者会見を拒否したことによって罰金処分を受け、全仏オープンを棄権する決断をしました。大坂選手は2018年の全米オープン以来、精神状態の不調が続き、記者会見やメディアの取材に応じることを大きなストレスに感じていたとSNSで明かしました。
自身のメンタルヘルスを優先させ、棄権と言う選択を取った彼女に対して、ナイキやマスターカードなど多くのスポンサー企業や世間の人々から、称賛の声が寄せられています。
そんな中、マインドフルネスアプリのカルムが取った行動に注目が集まります。カルムは大坂選手の罰金金額$15,000の同額を若者のメンタルヘルスを支援するLaureus(ローレウス)へ寄付することを発表しました。さらに、今後2021年のグランド・スラム大会中にメンタルヘルスを理由に記者会見を欠席したい選手がいれば、罰金の$15,000をカルムが代わりに支払い、その同額をローレウスへ寄付するとSNSで発信しています。
カルムのミッションに基づいた行動。一貫したブランディング。
大坂選手のSNS投稿からは、世間のメンタルヘルスに対する軽視について問題提起していることが伺えます。そして、彼女のツィッター投稿には「罰金の大分がメンタルヘルスのチャリティーへ寄付されることを願う」とも書かれていました。カルムは言葉で大坂選手を応援するのみならず、彼女の願いを叶えるべく、行動を起こしたのです。
「もし選手が物理的な怪我を負った場合、記者会見をする義務はないのに、なぜメンタルヘルスに対して同じ考えが適用されないのか?メンタルヘルスを優先させることにつきまとう社会的スティグマを終わらせるべきであり、今回の寄付がスポーツに励む若者を支援し、それを実現するきっかけとなってほしい」1とカルムの広報担当者は語りました。
カルムは「世界をもっと幸せに、健康にすること」をミッションに掲げ、
2012年にサンフランシスコにて設立されたマインドフルネスアプリです。瞑想、リラクゼーション、睡眠の質を高めるための音声ガイダンスを主軸としたサブスクリプションサービスを展開し、現時点で1億ダウンロードを突破しています。2
人々の精神的な健康を支援するカルムにとって、今回のできごとは決して無視できないことでした。メンタルヘルスの問題は、他人事ではありません。National Institute of Mental Healthの2019年の調査によると、アメリカ人の5人に1人(約5,150万人)が精神状態の不調を抱えています。3メンタルヘルスにまつわる理解は徐々に広まってきてはいますが、カルムの広報担当社の発言にもあったように、まだまだ社会的スティグマは否めません。
他人の目には見えない「心の病」を打ち明けること、そして仕事を差し置いてそのことを優先させることに対して、社会はもっと温かい目で見守ることはできる。そのことに使命感を抱いたからこそ、カルムはここまでのアクションを起こせたのでしょう。
社会に対してスタンスを示さないブランドは、リスクをおかしている。
このような社会問題が浮き彫りになったとき、企業が示すスタンスはこれまで以上に重要です。今回の例のように、直接的に自社の業界やミッションにまつわることであれば、なおさら、ブランドの意思表明をすることが求められています。
ブランドが想像する以上に、消費者はブランドのことを見ています。もし今回の一件でカルムが静観していたら、何の話題にもならず、世間からスルーされていたでしょう。それだけでなく、カルムをいつも使っているファンの中には違和感を覚えた人もいたのではないでしょうか。「世界をもっと幸せに、健康にする」と言うこのブランドのミッションは、ただ言葉が上滑りしているだけと捉われてもおかしくありません。
カルムが言葉と行動の両方で大坂選手をサポートしたことによって、既存ファンはさらにブランドのことを好きになりました。それは、彼らのSNS投稿についたコメントを読めば明確です。そして、今回の一件で、私のようにアプリを初めてダウンロードした新規ファンを獲得したことにも、成功したと言えるでしょう。
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