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最近のニューヨークポストに、ギリシャ料理店の店主と旅行者の間で起きた問題が掲載されました。今日は その問題を参考に、アメリカ人の観光客が個人旅行を計画する上で必ずと言っていいほど参考にする「レビューサイト」と「インフルエンサー」について考えてみたいと思います。
(以下、ニューヨークポストに掲載された記事から、一部、翻訳引用しています。[1])
とあるハネムーナー(新婚旅行のカップル) が、旅行先で訪れたレストランに対し、「観光客を騙すレストランである」と告発し、店主は「そのハネムーナーたちの売名行為である」と応酬しています。これは、外国人観光客と日本の観光地との間で起きそうな問題でもあります。
この問題となったギリシャ、ミコノス島のレストランは、TripAdvisor(トリップアドバイザー)での評価は1455件で、星はわずか2.5。ひどいサービス、強引なおすすめ、法外な価格などを理由に、多くのアカウントが星1つの評価をつけています。
1) トリップアドバイザーの評価が、アメリカ人旅行者にどの程度影響をしているのか?
アメリカ人の旅行者が、日本を含む海外旅行の計画を立てる際、どの程度トリップアドバイザーを参考にしているかと聞かれたら、“最も信用している情報源のひとつである”と回答するでしょう。これは一部アメリカ人の意見かも知れませんが、あまりにも英語の情報が不足している日本という国のなかで、お店の窓にトリップアドバイザーのロゴがついた「Travelers’ Choice」などのシールを見かけだけで、ちょっとウキウキした気分にさえなるに違いありません。だから、日本の飲食店オーナーは「自分のお店の評価がどうなっているのか」や「果たして英語ではどのような感想をもたれているのか」に興味をもつ必要があると思います。
しかし、このギリシャ料理店のように、2.5の低評価にも関わらず利用し、騙される観光客が後を絶たないのは、なぜでしょうか?
いくつかの理由が考えられますが、ひとつには旅行中のレストラン選び(特にランチ)は、あらかじめ予約せずにその場のノリで決めることが多いということが挙げられるでしょう。観光地にいって、ついロケーションで決めてしまった、というパターンです。本やCDで言えば、ジャケ買いです。海の目の前で雰囲気がそれなりなら、表に出ているメニューと料金でつい衝動的に入店してしまうものなのです。しかし、この旅行者の行動心理を見て、レビューサイトの評価なんて気にしなくて良いということにはなりません。
2)お店に圧力をかけるようなインフルエンサーは、本当にいるのか?
そのギリシャの飲食店オーナーは、取材を受けたKennedy News[2] に対し、次のように語ったようです。「残念ながら、お店の商品やサービスを宣伝する代わりに、法外な値引きを要求したり、無料で食事させるように圧力をかけたりする悪名高いインフルエンサーもいるのです。私たちは、そういったインフルエンサーに屈することはありません」。
この手の話は、よくアメリカのメディアの話題に上ります。これほど多くのトラベルブロガーがインフルエンサーを目指した時代はなかったことを考えれば、道徳観をもたない(もしくは交渉がすべてと考える)“にわかインフルエンサー”も一定数はいると考えた方が良いでしょう。そのレストランオーナーによれば、そのギリシャの観光地は、ある種のインフルエンサーによく狙われる場所になっているということですが、そもそも観光地とはそういう場所であるという認識が必要ですね。
このケースの場合は、ただハネムーンを楽しもうとしていただけの外国人旅行者と、有名観光地でレストランを営む悪徳オーナーのストーリーでした。新婚夫婦は、ビール、アペロール・スプリッツ、カキ12個で $570(1ドル135円換算で76,950円)を請求されました。きちんとしたメニューを見せてもらおうとしたが断られ、食べ物を注文するよう圧力をかけられ、渡された請求書もギリシャ語であり、とても驚いたと語っています。
このニューヨークポストに掲載された事件の記事を見ながら、私にも古い記憶が蘇ってきました 。ニューヨークのセントラルパークで食べたランチ、妻が頼んだ何の変哲もないクリームスパゲッテイに「ホワイトトリフの追加トッピングはいかが?」とテーブルで言われ、OKと言ったが最後、トリフをチーズのようにすりすりかけられ、出てきたレシートにはパスタ一皿350ドル(1ドル135円換算で47,250円)を超える印字があり、愕然としたことを思い出しました。これほどレビューサイトが盛んになる前の時代の話で、もちろん私たちは泣き寝入りし、友人たちへの土産話にして憂さを晴らすしかありませんでした。
それ以来、私たちは白トリフと聞くたびに怖くてオーダーできなくなりましたが、もしこれが今の時代であれば、多くの旅行者は(それがインフルエンサーであろうとなかろうと)ソーシャルメディアやレビューサイトを使って「もうここには二度と行かない」とアドバイスをしたに違いありません。「特に白トリフの誘いにはのらない方が身のためですよ」と。
3)トリップアドバイザーのレビューは、誰も検証することはできない、という反論。
その前述したギリシャ料理店のオーナーは、「トリップアドバイザーには、虚偽のクレームが匿名で多く寄せられたため、レストランの入り口に、メニューと価格を載せた大きな黒板を3つ置くことにしたのです。もしそのレビューが本当に実際のお客さんによって書かれたものであれば、少なくとも当店の価格の幅について知ってもらい、注文する前にメニューを十分に確認してもらおうと考えたのです」とニューヨークポストに語っています。
ポジティブに捉えれば、このオーナーは、レビューサイトをみて対策を立てたということになります。しかしながらこのケースの場合はレビューが悪用されたわけですね(どのように悪用したかと言えば、大きな黒板に書かれた牡蠣の表示金額の下に小さく100gあたりの金額と但し書きをし、詐欺まがいの行いをしたとのことです)。もし心を入れ替え、きちんと対策を立てていれば、まだ道は開けたはずなのですが、そうはしなかったようです。
- 彼の言い分:
・トリップアドバイザーを通じて匿名のユーザーから寄せられる苦情はすべて嘘である。
・ゲストは注文する前に、もっとメニューと価格を注意深く見るべきだ(客が悪い!)
・好きなものを食べたり飲んだりした後に支払いを拒否することを勧める人が、トリップアドバイザーには多く存在するのが残念でならない。
・誰もトリップアドバイザーのレビューを検証することはできないし、クレーマーがお互いの苦情内容をコピーしているにすぎない。
彼の言い分がすべて嘘かと問われたら、事実関係を確かめられない私たちは、“わからない”と回答するしかありません。しかし、その上で、レビューの悪い店には行かないと回答するでしょう。それほど、レビューには力があるのです。
以上がギリシャで起きた問題です。
最後に
このニュースを見ていて、日本のレストランに感じるのは「外国人差別」をしている店が少なくないということです。たとえば、まだ閉店時間でもないのに、外国人旅行者たちを断ったという場面に幾度となく遭遇したことがあります。ガラガラの店内をみて、なぜ入れてくれないのか、と彼らは不満そうでしたが、その店の店長は、どうやら断るフレーズしか教えられていないようで、断るためのフレーズを何度も繰り返していました。
さて、トリップアドバイザーの英語コミュニティでは、そのお店がどのように評価されているのでしょうか?お店側が事の重大さに気づくまでしばらく時間がかかるかも知れません。もっとも、そういう閉鎖的なお店は、日本人にしか来て欲しくないから日本語のレビューしか気にしない、と言うのでしょう。
トリップアドバイザーのレビューの問題はともかく、いくら英語がわからなくとも、少なくとも(無意識に行っているのであろう)外国人旅行者への差別は今すぐやめるべきでしょう。
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