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アメリカの大学には、授業の一環として、3ヶ月のインターンシップ・プログラムがある。ここでは、日本からの短期留学生(通常1年程度)に話を絞って説明することにするが、これが企業側から見れば、結構厄介なことになっている。
この企業研修プログラムは、学生にとってはアメリカ企業で働ける願ってもないチャンスである。労働ビザも不要であるから人気は高く、彼らの日本の就職活動の前哨戦としてメリットも大きい。
大学からみれば、3ヶ月の間、講師への支払いが免除されるというメリットがあり、企業側からみれば、無給で労働力が確保できるというメリットがある。
まさに、三方良しの関係にあった。しかし、そのバランスはもはや崩れつつある。
学生から見れば、インターンシップは授業の一環であるから、学びたいというより当然教えてもらえると思っている。特に最近の学生は「すべてが学びである」というふうに考えない人たちが多いから、自身のスキルに直接結びつかなかったり、就活のストラテジーに外れたものをやりたがらない傾向にある。
企業から見れば、学校のようにきちんと実習制度をつくって受け入れるべきなのであろうが、よくよく考えると、企業が大学に働かされている気にさえ陥るようになった。なぜなら多くの日本人留学生は、アメリカ人学生のような英語ネイティブでもなく、マーケティングスキルもない。滞在も短期的であることから、正直言って作業以外に何もやってもらえることがないからである。
このインターンシップ・プログラムも、コロナ禍でしばらくは音沙汰がなかったが、9月から再開したようで、久しぶりに大学の事務局から連絡がきた。
「Ys and Partnersを希望している学生がいるのですが興味はありますか?」
履歴書を見たら、日本の私立大学の学生だったが、最近は彼のように2年生から短期留学してくる者もいる。彼らの短期留学の目的は、あくまでも日本での就活にあり、就活の準備を1年早め、2年生から始める学生が増えたということなのだ。
「しかし、コロナ禍に留学してくるとは、もしかすると骨がある奴かも知れない」。そう期待して、彼とは対面で会うことにした。
「有名私立大学」「体育会系」「部長」加えて「イケメン」で就職偏差値としては申し分がない。さらにアメリカ留学とインターンシップの経験という装飾を付加して、最強の履歴書が出来上がりつつあった。
「なにをやらせてもらえるのでしょうか?」と彼が何度も私に聞くので、「アメリカで、なにができますか?」問いかけた。
「コミュニケーションが得意です」と彼。「でも英語は話せません」と言った。
日本語のコミュニケーションなら任せてくださいと言っている、目の前の日本人留学生の感覚に唖然とした。
「ここは日本ではないのだけど、ちゃんと認識してるのかな?」
日本に帰国したら、多くの大手企業の内定を取り付けるに違いない、そんな日本では優秀と言われる男子と話をしながら、価値について考えた。
「英語はうまくないけど、コミュニケーションは得意なので、体当たりでいきます!」。昔、そう言ってインターンポジションを勝ち取った留学生がいたことを思い出した。営業志望の若者なら、それくらい言って欲しかった。
大学時代のもっとも学べる時期に、アメリカにきて就職活動のポイント稼ぎに囚われている。日本人学生とつるみ、日本の野球選手が出場するアナハイムスタジアムに通い、現地のコミュニティに溶け込むこともないため、カルチャーや価値観の違いも勉強しようとしない。
せっかくアメリカに来たのだから、大きなショックを受け、自身の価値観がゆさぶられるような経験をして帰ってもらいたいものである。
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