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米国マーケティングトレンド研究会 2022.05.06

ケンタッキーがスローガンをちょっぴり変更!その背景を読み解く

アメリカ本国で、自社のスローガンを少しだけ変更したケンタッキーフライドチキン。「IT’S」 finger lickin’ good “から「THAT’S」 finger lickin’ good “への変更は、一見小さなことのようですが、KFCブランドのマーケティング戦略を際立たせています。着目すべきはブランドや製品の直接的な訴求ではなく、「お客様の体験」に重点を置いている点。従来のスローガンを活かしながらも、その中の一語を変更することで実現している所も興味深いです。その背景を読み解いていきましょう。

ケンタッキーフライドチキンは、世界中で知られるファーストフードブランドです。売上高で見てもマクドナルドに次ぐ世界第2位を記録しています。そのKFCは、最近新しいCMOに変わり、同時にクリエイティブ・エージェンシー「ミューレンロウ」が参画しました。この上層部の交代による最初の変化のひとつが、上記のKFCスローガン変更です。文字としては小さな部分ですが、その背景には大きな変化があります。

KFCのスローガンの変遷も知っておきたい。

ここでアメリカのKFCのスローガンの変遷を見ておきましょう。「So good」や「no one does chicken like KFC」などさまざまなものがあります。ただ、多くのアメリカ人がKFCの一番ポピュラーなスローガンを挙げるとすると「It’s Finger-Lickin’ Good」になります。意味は「チキンがあまりにおいしいので、食べ終わった後、指までなめてしまう」です。このスローガン、実はCOVID-19の大流行が始まったときに、衛生面などから問題視されてしまいます。KFCは2020年に人々が実際に手を舐めることを助長しないよう、この「フィンガーリッキン」という表現を停止しました。しかし、パンデミックの規制が緩和されるとこのスローガンがまた世に出ることになったのです。 「It’s finger lickin’ good 」が、KFCのイメージとしてかなり定着しているのを伺わせるエピソードですよね。そのスローガンが、今回変更されるわけですから大きな転換と言えるでしょう。さて、「IT’S」 finger lickin’ good “から「THAT’S」 finger lickin’ good “となり、メッセージ性にはどんな変化が生まれたのでしょうか。

IT’S と「THAT’S」でどれほど意味がかわる?

日本の感覚で言えば、代名詞の変更は小さなことのように見えますよね。”it’s “と “that’s “の違いを紐解いていきましょう。英語に詳しくなければニュアンスを汲み取るのが難しい部分かと思いますが、実は結構変わってきます。例えば従来の「It’s finger lickin’ good 」は、KFCというブランドの商品に対する訴求をダイレクトに表現しています。極端に言えば「指をなめてしまうほど、この製品は優れている」というようなイメージです。

一方で「That’s finger lickin’ good 」は商品訴求よりも、もっと柔らかなイメージでお客様側の体験にフォーカスしています。「おいしい商品はありますよ!」といった呼びかけではなく、食べるという体験から得られるお客様の「喜び」や「驚き」といった感情を想起させます。KFCを初めて食べたお客さまが口にする言葉のようにも見え、よりナチュラルなコミュニケーションが生まれていると言えるでしょう。

顧客体験に寄り添う表現のポイント

同じ「指を舐めるほどおいしい」というスローガンでも、自社視点から顧客体験を重視した形では大きくイメージが変わっていきます。こういったブランドの判断は他社にとっても良い参考になりますね。

市場調査において、近年では自社や製品に焦点を当てるよりも、顧客や社会的意義に焦点を当てた方が効果的ということが分かっています。「商品を売る」という端的な所に固執せず、「製品を通じて、顧客とどんなコミュニティを形成していくか」という観点が重要。小さな文字の変化であっても、「顧客の体験」「顧客の感情」を中心に据えるという点は今後大きな意味を持つでしょう。

また、KFCのクリエイティブチームはブランディング効果を高めるために「それぞれのお客様にとってのfinger-lickin’ goodとはどんな光景か」表現する広告も制作しています。短いフレーズの中に、さまざまな体験がありうることをPRしているわけですね。ここでも、ブランド側は商品の良さを直接訴求するのではなく、お客様の気持ちがどのように動くかに焦点が当てられています。

ブランディングには、顧客の生活圏や言語への深い理解が必要

「It’s」→「That’s」のようなニュアンスの差分は重視しない人も多いかもしれませんが、お客様には企業姿勢として伝わります。新しい言語市場や海外市場に参入する際には、そういった細部にまでこだわりブランディング戦略を提案できる、その国の文化に精通したクリエイターも不可欠です。海外市場への進出やリブランディングを考えている場合は、ターゲットを深く理解しているコンサルティング会社の利用をおすすめします。

Ys and Partnersはアメリカと日本の両国で、消費者調査に基づくブランド戦略構築を得意とする統合型マーケティングエージェンシーです。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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参照元

  1. The Gaming Industry Wants Advertisers to Take It Seriously
  2. 10 Facts About Americans and Twitter
  3. Essential Snapchat Stats
  4. How Frank’s RedHot Gets Slam Dunk Viewability Measurement for In-Game Ads

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