ホーム ブログトップ 【ブランディング】クラウドキッチンのブランディング事例から学ぶ、シンプルさの重要性。

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米国マーケティングトレンド研究会 2021.03.04

【ブランディング】クラウドキッチンのブランディング事例から学ぶ、シンプルさの重要性。

多くの飲食店が新型コロナウィルスによるパンデミックの規制によりフル稼働できないため、クラウドキッチン(食事スペースを持たない厨房)の利用が増えています。パンデミックの中で開業する飲食店の中には、クラウドキッチンとデリバリー注文に全面的に力を入れているところもあります。It’s Just Wings(イッツ・ジャスト・ウィングス)は、作りやすさ、アクセシビリティ、メニューのシンプルさを重視したブランディング戦略で市場に参入したことで、クラウドキッチン利用の好例となりました。

はじめに

アマゾンが、オンライン注文をより迅速に処理するためのミニ倉庫として、顧客向け施設のない店舗である「ダークストア」のテスト運営を公に開始したときは話題になりました。同様に「ゴーストキッチン」は、「クラウドキッチン」としても知られていますが、これはオンラインでのレストラン向けの注文を、ゲスト用のスペースを持たずに処理することで機能します。昨年の間に新型コロナウィルスの激震がアメリカを襲い、アメリカ全人口のワクチン接種完了時期は2022年後半になるという複数の報道がある中、このモデルはレストランが顧客を危険にさらすことなくビジネスを行うための素晴らしい方法といえます。

しかし、このモデルは新しいレストランに課題も投げかけています。それは、ブランディングです。

ブランディングが重要。ブリンカーインターナショナル初のクラウドキッチン。

自社のブランドをゼロから立ち上げ、人々に印象づけるためには、何をどのように進める必要があるのでしょうか。特にレストランを始める際には、顧客にどのような料理体験を提供できるのかを伝える必要があります。

デジタルの世界でのブランディングをマスターしたと思われる企業の一つが、100万ドル規模のチェーンレストラン「Chilis(チリーズ)」のオーナーである、ブリンカー・インターナショナルです。多くの州でレストランの開店禁止令がまだ厳しかった2020年の夏の間に、全米にあるチリーズの約80%の店舗が閉店しました。しかし、ブリンカー・インターナショナルは、規制が解除された際には可能な限り多くの店舗を再びオープンさせようとしていました。1

2020年、ブリンカー・インターナショナルは初のバーチャルブランドレストラン「It’s Just Wings(イッツ・ジャスト・ウィングス)」を立ち上げました。このブランドはデリバリーのみを目的としており、既存のチリーズのキッチンのリソースを使用しています。イッツ・ジャスト・ウィングスはその名の通り、手羽先のチキンを提供しています。また、フライドオレオのようなデザート、様々なソースや、食事の注文によるカーリーポテトの無料プレゼントのような企画も行っています。

イッツ・ジャスト・ウィングスは、ローンチから数ヶ月以内に週に300万ドルの利益を上げ始めました。彼らはインスタグラム上で1つの画像イメージをポストしているだけですが、既に4,000人以上のフォロワーを獲得しています。当初は1億5000万ドルの売上が見込まれていましたが、その数値をかなり上回っています。

この成功の要因として、豊富なリソース、ロケーション、マンパワーにより、他のレストランができないようなスタートダッシュができたことを指摘されることもありますが、イッツ・ジャスト・ウィングスの最も特別なことは、そのブランディングメッセージがとても効果的であったことです。イッツ・ジャスト・ウィングスを説明する言葉は、そう、「シンプル」なのです。

注文するレストランを選ぶとき、通常はレストランにより異なるメニューが表示されます。特定の文化の料理に焦点を当てたレストランでも、メイン料理は、味の特徴、健康上のメリット、そして価格等、それぞれが大きく異なる場合があります。

「選択のパラドックス」という心理学的な概念がありますが、これは、選択肢が多すぎると顧客が圧倒されてしまうため、売上に悪影響を及ぼす、というものです。イッツ・ジャスト・ウィングスでは、主食の選択肢は手羽先しかありません。それと、サイドディッシュとしてのフライドポテト。あとは、どのソースにするかと、デザートを食べるかどうか、ということになります。

画像2:イッツ・ジャスト・ウィングスのウェブサイトのトップページには、「圧倒的手羽先、激安価格」というスローガンが掲げられています。

それは何ですか?It’s Just Wings.

店名からスローガン、メニューに至るまで このバーチャルレストランは、シンプルさに基づいています。彼らが提供している料理は、派手さも風変わりな珍しさもなく、親しみのあるものです。メニューの中で最もわくわくするのはソースの種類の多さですが、それ以外は、見やすく、わかりやすく、注文しやすく、食べやすい構成になっています。

彼らのスローガンである 「Killer wings, stupid prices (圧倒的手羽先、激安価格)」はたった4つの単語しか使っていませんが、このレストランのすべてを物語っています。客層は若く、おそらく男性です。彼らのターゲットは、お腹が空いていても、何を食べたいのかをあまり難しく考えたくない人たちです。UberEats(ウーバーイーツ)やDoorDarsh(ドアダッシュ)のようなサービスには多くの選択肢がありますが、このブランドは、今までこういったサービスで注文したことがない人にも単純明快だということにおいて、他のブランドと一線を画しています。

7,000人以上の参加者に対し、購買習慣について質問した調査によると、購入に踏み切るかどうかの最大の要因は、シンプルさであることがわかりました3。これは、注文プロセスにおけるシンプルさかもしれないし、食事のプロセスにおけるシンプルさかもしれません。イッツ・ジャスト・ウィングスの場合、そのシンプルさはブランド名を見ても一目瞭然です。

メニューのシンプルさと宅配便の利便性の組み合わせにより、このビジネスが去年急速に成功した理由は想像にかたくありません。

まとめ

一般的に、手羽先はパンデミックが始まって以来、売上が急増しています。WingStop(ウィングストップ)のようなレストランは昨年記録的な売り上げを記録し、新たな需要を満たすためにさらなる拡大を始めています。4

イッツ・ジャスト・ウィングスがパンデミック中の手羽先人気を予見していたわけではありませんが、おそらく彼ら自身の運とブランドのシンプルさの両方を利用することにより、成功に至ったのでしょう。

パンデミックの間、人々は家にいることが多くなり、移動が少なくなったにもかかわらず、多くの不安によりさまざまな決断を下すことが難しくなっています。あなたの製品やサービスを瞬時に理解できるようにシンプルにすることは、このような時代に注目を集めるためのかしこい方法だと言えるでしょう。

 

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