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宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』はアメリカで広く賞賛され、オープニング興行収入は1位を記録しました。『少年とサギ』は、その『君たちはどう生きるか』の英語のタイトルです。
さて、この映画がマーケティングに頼らずに成功した理由は、宮崎駿監督の評判だけでなく、アメリカの多くの若者たちがスタジオジブリの世界観を愛しているからです。
はじめに
スタジオジブリの最新作『少年とサギ』は、2023年12月8日にアメリカの映画館で公開されました。初週末に1,280万ドルを稼ぎ、その週の興行収入ランキング1位の映画となりました[1]。
宮崎駿監督の作品としては最大のオープニング週末興行収入を記録し、これまでの最高興行収入記録を持つジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』(興行収入1,900万ドル)を上回る勢いでした[2]。また、ゴールデングローブ賞で最優秀アニメーション映画賞を受賞しました。
この映画の成功の驚くべき点は、マーケティングをほとんど行わずに公開されたことです。観客には「先入観なく映画を楽しんでほしい[3]」という思いから、宣伝マーケティングはカットされました。
宮崎駿監督はこの作品が最後の映画になると発言しましたが、後にその発言を取り消しました[4]。宮崎駿監督の「最後の作品」としてスタジオジブリの映画が公開されたのは今回が2度目ですが、『少年とサギ』は、以前に「最後の作品」として公開された『風立ちぬ』よりもはるかに成功しています。
何がこの映画のデビューを成功に導いたのでしょうか?
宣伝マーケティングをカット:アメリカでの映画の公開
『少年とサギ』は、他のほとんどの映画とは異なり、公開前に大規模な宣伝マーケティングが行われませんでした。
2023年9月6日にGKIDS公式YouTubeチャンネルで予告編が公開されました(GKIDSはアメリカとカナダにおけるスタジオジブリ映画の公式配給元です)。また、タイトルも『君たちはどう生きるか』から『少年とサギ』に変更されました。
この映画のマーケティング戦略の核心は、「宮崎駿作品だから人々は観に来るだろう」という単純な考えに集約されていました。そして案の定、2023年12月にアメリカで公開された『少年とサギ』は、公開当初興行収入最高の映画となりました。
しかし、宮崎駿氏のストーリーテリングの魅力だけが、この映画の成功の原動力ではないようです。『少年とサギ』の人気には、もう一つ別の要素があり、それがアメリカの若者を劇場に引き寄せた可能性があります。
ジブリの世界観とコンテンツクリエイター
スタジオジブリ映画の魅力の一つは、その独特な世界観にあります。「ジブリコア」とも呼ばれ(「スタジオジブリの映画に共通する美しい雰囲気」の意味)、ミレニアル世代やZ世代は長い間、宮崎駿監督の映画の雰囲気に魅了され続けています。
特に、スタジオジブリ映画で人気があるのは有名なキャラクターではなく、自然や食べ物が調理されているシーンです。あらゆるソーシャルメディアプラットフォームで、「ghibli food」と検索すると、何百万回も再生された動画がいくつも見つかります。それらは、ジブリ映画の料理シーンです。同じように、「ghibli music」と検索すると、何百万回も再生された動画がいくつも見つかります。それらは同じジブリの曲が何度も繰り返し再生されている動画です。
ASMRや勉強動画、商品の開封動画、個人オーガナイザーに関連したコンテンツ、そしてもちろんアニメコンテンツを制作・投稿するコンテンツクリエイターの間で、ジブリの世界観は非常に人気があります。
アメリカの多くの若者にとって、宮崎駿監督の映画は単なる映画ではなく、彼らが体験したいと思う視覚的なジャンルなのです。
新型コロナウイルスのパンデミックの中に、「ghibli aesthetic」というワードの検索数がGoogle Trendsで明らかに増加した時期があります[5]。検索数が最も多かった週には、Appleが新しいiOSのアップデートをリリースし、ユーザーが自分のホーム画面を完全にカスタマイズできるようにしました。iOS14は、これまでテクノロジーに精通したAndroidユーザーに限られていたホーム画面のカスタマイズ性を一般のiPhoneユーザーにも提供しました。
毎日長時間見るスマホ画面を、スタジオジブリ作品のようにカスタマイズする機会に多くの人が飛びついたのです。
ジブリの世界観の魅力とは?
「ジブリの世界観」を愛するコンテンツクリエイターのほとんどは、特定のカテゴリーに分類されます。彼らは通常、落ち着いたライフスタイルを実現し、家の装飾、整理整頓、勉強、リラックスできるものに重点を置いています。
なぜスタジオジブリ作品はこのようなコンテンツクリエイターに人気なのでしょうか?
まず第一に、多くのスタジオジブリの映画は自然の美しさを強調しています。風にそよぐ草や美しい清流など、美しい風景が描かれています。また、美味しそうな食べ物や可愛らしいキャラクター、象徴的な音楽が数多く登場し、視聴者を映画の世界に瞬時に引き込みます。
ジブリの世界観は、何も問題が存在しない世界を表現しており、物事が自然に存在しています。自然や食べ物、睡眠など、リラックスできる概念に焦点が当てられています。色彩も暖かくパステルカラーが使われていて、視聴者は心が穏やかになります。この世界観は、ストレスを解消する手段としても人気があります。一部のファンにとっては、ジブリ映画の映像をソーシャルメディアの投稿に使用したり、自分の空間に取り入れたりすることは、ある種のセラピーのようなものです。
したがって、宮崎駿監督が新しい映画を公開すると、これらのファンは自分達の好きな世界観で描かれた新しい要素を体験するために映画館に訪れるのは当然のことのようです。
ジブリの世界観を好むデモグラフィックとは?
ジブリの世界観に興味を持つ人々のデモグラフィックは、考慮すべき興味深いターゲットオーディエンスです。リラックスしたい、健康になりたい、可愛いイメージで空間を埋めたい、落ち着いた雰囲気を作りたい、このような人々に自社製品をアピールしたい場合には、ジブリ関連のアカウントを参考にして、オーディエンスとの繋がり方を考えてみると良いでしょう。
このグループの大部分はアジア系アメリカ人ですが、さまざまなバックグラウンドを持つ人々がいます。彼らは日本製品や他のアジア製品に親しみを持っています。また、文房具やお菓子、静かに遊べるゲーム、勉強にも興味があります。というのも、彼らの中には大学進学前後の年齢の人も含まれるからです。
このジブリの世界観に興味を持つ消費者は、通常、整理整頓や穏やかな生活、リラックスに関心を持っています。日常生活におけるストレスや不安を軽減するような製品がある場合は、このターゲット層を考慮すると良いでしょう。
また、製品のプロモーションにインフルエンサーとのコラボレーションを検討している場合は、ジブリの世界観を使用しているYouTuber、TikToker、またはInstagramのインフルエンサーを探すといいでしょう。
まとめ
『少年とサギ』は、宮崎駿監督が最高の映画監督の一人と考えられているからというだけでなく、多くのアメリカ人がオンラインコンテンツを通じて彼の作品に触れてきたからこそ、アメリカの興行収入で非常に良い結果となりました。
このような消費者グループの一部は既に、日本の映画、デザイン、食べ物などを好み、彼らは多くの日本製品の理想的なターゲット層です。
ジブリの世界観を好み、使用するアメリカのニッチな人の心を理解することは、アメリカであなたの製品を気に入ってくれるだろう消費者をより的確にターゲット化することに繋がります。
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参照元
- https://www.latimes.com/entertainment-arts/movies/story/2023-12-10/hayao-miyazaki-boy-and-the-heron-box-office
- https://www.boxofficemojo.com/brand/bn4084398594/
- https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/studio-ghibli-hayao-miyazaki-final-film-trailer-marketing-1235507079/
- https://www.theverge.com/2023/9/8/23864856/studio-ghibli-hayao-miyazaki-retirement-postponed-yet-again
- https://www.youtube.com/watch?v=f7EDFdA10pg
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