【リブランディング成功例】ターゲット層を男性から女性へ変えて収益が10倍に! スタンレー社

スタンレーは110年の歴史を持つドリンクウェアブランドですが、最近リブランディングを行い、マーケティング戦略を全面的に変更しました。これにより、過去3年間で利益を10倍に伸ばしました。このブランドの人気は、多くの記事やニュースストーリー、ビデオエッセイの題材となっています。人々は、なぜスタンレーのドリンクウェアがこれほど多くのアメリカの家庭に広がったのかを理解しようとしているのです。このブログでは、アメリカのトレンドにまでなったブランドの成功を考察します。

はじめに:

現在、アメリカで最も人気がある小売アイテムは、スタンレーのドリンクウェア「スタンレーカップ」です。スタンレーは110年の歴史を持つドリンクウェアブランドで、断熱効果のあるカップやタンブラーなどの商品を販売しており、ここ3、4年で利益が一気に高みに達しました。特に、「スタンレー・クエンチャーH2.0フローステート」という40オンスの飲み物が入る断熱タンブラーがアメリカでベストセラーの一つとなっています。

このカップは非常に人気があり、TikTokやInstagramの #stanleytumbler タグで検索すると、何千回または何百万回ものビューがある動画が表示されます。

110年の歴史を持つブランドでありながら、これほどまでの人気を得たのはここ数年間のことです。ではなぜニッチなキャンプ用品ブランドだったスタンレーは、今やタンブラーを「Stanleys」という愛称で呼ぶほどの人気ブランドになったのでしょうか。

スタンレーブランドの元々のターゲット層

スタンレーは1913年にウィリアム・スタンレー・ジュニアによって設立されました。彼はガラスの代わりにスチールを使用し、内容物を数時間保温できる断熱ボトルを発明しました。当初この商品は「割れない」ことを強調して宣伝され、ブルーカラーの労働者をターゲットにしていました。

この当初ターゲット層は、建設業など屋外で体を動かす職業に従事する男性でした。仕事中に屋外で使用しても製品が「割れない」ことがスタンレー製品の大きな魅力でした。

その後長年に渡り、スタンレーはアウトドアで使用できる製品を追加し、男性をターゲットにし続けてきました。スタンレーのブランディングは、キャンプ、ハイキング、狩猟、釣りなどが好きな男性にアピールすることに重点を置いていました。製品の色やスタイルはそれほど豊富ではない代わりに機能性や耐久性に焦点を当て、強さやタフさに憧れを持つアメリカの平均的な男性にアピールしてきました。

スタンレー・タンブラーがどうのようにバイラル化したか

スタンレー・タンブラーの元々のファンは、消費者むけに商品レビューを行うInstagramページ「The Buy Guide」の創設者たちでした。2017年、創設者の一人がスタンレー・クエンチャー・タンブラーをレビューしました。

このレビューは、断熱性と新色の緑色を称賛するシンプルなものでした[1]。The Buy Guideがこの投稿を共有して間もなく、彼らのフォロワーたちもスタンレー・タンブラーを購入し、タンブラーを称賛する投稿をし始めました。その後、人気のリアリティ番組の元出演者が、The Buy Guideのリンクから購入したスタンレー・クエンチャーについて投稿し始めたことで、新たに多くの注目がタンブラーに集まり、さらに人気が拡大しました[2]。

スタンレーはインフルエンサーマーケティングを行ったことはありませんでしたが、The Buy Guideのフォロワーたちからの肯定的な反応を見て、彼らとコラボレーションすることにしました。The Buy Guideはスタンレー社からスタンレー・クエンチャーを卸値で購入することを許可されました。彼らは1万個を購入し、5,000個ずつ2回に分けて販売しました。1回目は4日で完売し、2回目は1時間以内に完売しました[3]。

それ以来、スタンレー・タンブラーは過去5年間で爆発的に人気が高まりました。2019年には7,300万ドル以上の収益を上げました。2023年現在、同社は年間7億5000万ドルの収益を上げています[4]。

では、わずか4年で収益を10倍に増やすためにスタンレーはどのようなことを行ったのでしょうか？

スタンレーのリブランディング：ブランディングの劇的な変化

スタンレーは新たな注目が女性から集まっていることに気が付いたため、リブランディングを行いブランドや製品を劇的に変化させました。

シンプルで実用的な製品を最小限のカラーオプションで提供する代わりに、女性にアピールする明るいパステルカラーのタンブラー作りを始めました。カップのデザインやハンドルの形も少し変更しました。

リブランディングにおける最も顕著な変化は、スタンレーのロゴでした。これまでのスタンレーのロゴは「Stanley」という文字のシンプルなイメージでした。それが熊のロゴに変更され、熊には翼、王冠、そして稲妻が描かれています（ウィリアム・スタンレー・ジュニアが会社を設立する前に電気工学の仕事に携わっていたことから、稲妻は電気を象徴しています）。このロゴは最後にもう一度変更され、ソフトで可愛らしいイメージの現在のものとなりました。

前例のない成功

リブランディングの取り組みと、スタンレー・タンブラーの継続的なバイラル人気により、同社は短期間で急成長しました。2023年のクリスマス商戦では、スタンレーのタンブラーは大人やティーンエイジャーの間で最も人気のあるギプレゼントの一つでした。

限定版カップを手に入れるために開店前から行列に並ぶ、スタンレー・タンブラーの熱心なファンや、在庫がすぐに完売する状況、さらには製品を盗み、オンライン販売で多額の利益を得る泥棒のことまで、スタンレーに関する記事が複数掲載され、驚くべき現象が起きていることが報じられました。

では、スタンレー・タンブラーの何がアメリカ人をこれほどまでに熱狂させているのでしょうか？

個性を表現できる、スタンレー・タンブラー

予想以上の結果を生み出した最大の成功要因は、顧客がタンブラーをパーソナライズできる方法やアイテムを増やしたことです。

画像: スタンレーのウェブサイトより
顧客はテキストや画像、その他のシンボル等を追加して、自分だけの個性的なタンブラーにカスタマイズできます。

カラーの選択肢も大幅に増え、ミレニアルやZ世代が好むパステルカラーが多く取り入れられています。また、スナックホルダーやストローカバー、ステッカーなど、スタンレー・タンブラーをさらに充実させるための、他のウェブサイトで購入できるアクセサリーも数多くあります。

スタンレー・タンブラーへのこだわりは、TikTokでハッシュタグ＃stanleytumblerを検索してみると明らかです。一つのタンブラーだけではなく、複数のスタンレー・タンブラーを持つことが今では人気となっています。ブランドが限定版やコラボ商品を展開し始めたことにより、ファンたちは複数のカップを集めるようになりました。

まとめ

この110年の歴史を持つブランドは、新たなマーケティング戦略と新しいターゲット層、そして100年以上に渡り販売されてきた優れた製品により、過去最高の利益を記録しました。

スタンレー・タンブラーの成功は、インフルエンサーとのコラボレーション以上のものです。カスタマイズ可能なアイテムとしてのリブランディングにより、スタンレー・タンブラーはアメリカの多くの女性が憧れるライフスタイルの象徴となりました。

スタンレー・タンブラーのターゲット像は、アクティブで健康的、物事に興味関心があり、生活の中で水分補給の重要性を理解している人です。スタンレー・タンブラーを購入すると、自分自身をケアしているような気持ちになり、健康的な気持ちになります。タンブラーを購入しカスタマイズすることで、個性をさまざまな形で表現できます。

この確立された製品を人々の感情と結びつけることで、スタンレーは現代のトレンドとなったのです。

ワイズアンドパートナーズでは、2002年から「日本のブランドを世界で有名にする」を使命に、日米双方から企業のマーケティング、ブランディングを支援しています。まずは弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。