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米国マーケティングトレンド研究会 2021.04.06

美容トレンド:セフォラが実績ゼロの美容ブランドを採用した理由。

米国進出において、販路開拓は多くの日本企業が最初にぶつかる分厚い壁とも言えます。新しい市場で、ブランド認知されていない中、強い売り場を獲得することは容易なことではありません。しかし、そんな厳しい状況を乗り越えてきたスタートアップ企業が存在します。今回は、設立間もない、美容スタートアップがセフォラと独占契約を結び、そこからわずか4年で大きく飛躍した成功事例をご紹介します。

セフォラのバイヤーが賭けに出た

Peace Out Skincare(ピース・アウト・スキンケア)は2017年に、サンフランシスコで設立された美容スタートアップです。代表的な商品に、独自成分が配合されたニキビパッチ(ニキビを治療するシールのようなもの)があり、特にZ世代から熱い支持を集めています。他にも毛穴の黒ずみ、シワ、シミなど、肌のトラブルをワンステップで解決する製品で話題を呼んでいます。

このブランドのすごいところは、設立から間もなく、すぐに大手コスメ専門店セフォラと独占販売が実現していることです。Peace Out Skincare創業者Enrico Frezza(エンリコ・フレッザ)によると、通常セフォラでは1カテゴリーごとに、年間わずか4〜5ブランドしか新しいブランドは採用されません。そんなセフォラが、当時実績ゼロのブランドと組んだことは異例の事態でした。なぜセフォラはこのブランドに興味を示したのか?その理由はブランド立ち上げの背景にありました。

30年間変わっていないアクネケアの市場を変えたい

すべてのはじまりは、創業者Enrico Frezzaのコンプレックスでした。彼は大人ニキビに苦しみ、何を試しても効果がなく、さまざまな成分を独学で勉強する日々を送っていました。そんな中、辿り着いたのが「ハイドロコロイド」。もともと医療の現場で傷口を治す際に使用されていた成分でした。この成分を自身のニキビに使ったところ、今までにない希望の光が見えました。これをベースにさらに効き目の高い成分を組み合わせ、ニキビを一晩で改善させる独自の処方を開発したのです。

Peace Out Skincareは効果的な製品をつくることの他に、もうひとつ実現したいことがありました。それは、アクネケアの市場イメージを変えることです。米国でのアクネケア市場は長い間、ネガティブなイメージが染み付いていました。他の化粧品分野は、気分を高めるポジティブなブランディングがされていたのに対して、アクネケアだけは「マイナスを平常に戻す治療」でしかなく、それ以上のプラスがない世界。Peace Out Skincareは手軽にニキビを治せて、なおかつ明るく楽しいライフスタイルブランドでありたいというミッションを持っていました。この志が後に若いZ世代を惹きつける大きな要因となります。

参照元:Peace Out Skincare

当時、セフォラもZ世代へリーチできる強いブランドを探していました。Peace Out Skincareは、売上実績はないものの、たしかな商品力とZ世代にアピールできるブランドへと成長すると見込まれたのです。

ティックトック・マーケティングでさらなる飛躍

世界中のセフォラ店舗に商品が入るようになり、着々と実績を積んでいったPeace Out Skincareは、2018年からは自社ECサイトの展開を開始しました。ブランド力を高め、自社ECでの売上を増やすために、彼らが特に力を入れたのがティックトックマーケティングでした。

Peace Out Skincareは商品と相性の良いマイクロインフルエンサーへ積極的にギフティング(無償で商品をプレゼント)を行なっていました。そのギフティングから生まれた一つの動画がきっかけとなり、注目を集めることになったのです。

動画を投稿したのはマイクロインフルエンサーのKaelyn White(ケイリーン・ホワイト)。彼女はプレゼントされたPeace Out Skincareの毛穴ケア商品の感想を述べながらBefore / After動画を投稿。すると、彼女の動画に乗っかる形で、現れたのが、Z世代から絶大な人気を誇る大物インフルエンサーのHyram Yarbro(ハイラム・ヤーブロ)です。Hyramの影響力については「コロナ禍で600万フォロワー突破:化粧品業界がいま知るべき、TikToker」でご紹介しています。

ティックトックには他のユーザーの投稿に、自身の投稿をコラボさせることができるDuet(デュエット)と言う機能が付いています。Hyramは

よくこのDuet機能を使い、化粧品に関するコンテンツを発信しています。

日頃から正直かつ辛口な意見を発信することで有名なHyramがPeace Out Skincareに高評価を残したのです。

Hyramのティックトック動画はこちら:https://vt.tiktok.com/ZSJjWVMFg/

この動画は見事にバズりました。視聴回数:1,200万回、ライク:240万、シェア:60,000回を獲得。さらにPeace Out Skincareのフォロワーも1,350人から20,000人に増え、ティックトックで一気にブランド認知を向上させました。その影響はブランド認知にに留まらず、売上増加にもつながっています。たった一日で、15,000個もの商品が完売。ティックトック動画発信から3週間で6ヶ月分の在庫がはけてしまったのです。1

こうして、Peace Out Skincareはわずか4年でゼロからブランドを築き上げていきました。たしかな商品力、強いブランディング、明確なターゲット、そして販路開拓の成功がこのブランドを短期間でここまで成長させたに違いありません。これから海外展開を視野にいれている日本企業に是非参考にしていただきたい事例です。

ワイズアンドパートナーズでは、日本の美容ブランドをアメリカで広める統合的なマーケティング支援サービス「The JBeauty Collection」を運営しております。ブランド戦略、販路開拓、メディアリレーションの3つの軸からご支援しております。ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

 


参照元:

1 https://www.shopify.com/blog/peace-out-skincare-tiktok

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