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越境ECを検討しているけれど、どうやって始めたら良いのか分からないと悩んでいる企業のマーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。この記事では越境ECについて、展開パターンやメリット・デメリット、始め方、成功の秘訣まで詳しくご紹介します。
越境ECとは
越境ECとは、一言で言うと「国境を越えたEC(電子商取引)」のことです。たとえば日本の企業が自社のオンラインストア上で商品を米国の消費者に販売することも越境ECですし、AmazonなどのECモールに商品を掲載して米国の消費者に販売することも越境ECです。
越境ECの展開パターン
越境ECを展開する方法はいくつか存在します。ここでは主な3つのパターンを紹介します。
1. 自社ECサイトの構築・運営
展開したい国の言語や通貨などに対応したECサイトを自社で構築する、もしくは既存の国内向けECサイトを対応させるという方法です。
立ち上げや集客にかかる手間やコストが大きく、最も難易度が高いと言える方法です。その一方で、自由度が高いので自社に合ったブランディングができる、ECモールに支払う手数料が抑えられるため利益率が高くなるといったメリットがあります。
近年では、Shopifyなど越境ECに標準で対応したECプラットフォームが登場しているため、それらを上手く活用することで立ち上げのコストを下げてスタートできるようになってきています。
2. 現地に対応したECモールへの出店
Amazonなど、展開したい国に対応したECモール上に出店する方法です。欧米ではAmazonの他にebay、中国では天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)などが有名です。
あらかじめ現地の言語や通貨に対応できているなど出店の手間が抑えられるだけでなく、集客の面でのメリットもあります。例えるなら、すでにお客さんがたくさん来ているスーパーマーケットに自社の商品をいきなり並べることができる、というイメージです。ただし、他の数多くの商品の中に埋もれてしまいやすいこと、モールの手数料を高く取られるため利益率が上がりにくいことなどのデメリットがあります。
また、現地の保税区を活用するという方法もあります。保税区とは、海外からの輸入品を関税などの課税を留保したまま現地内に保管できる区域のことです。例えば米国には外国貿易区(FTZ)という保税区があります。商品をその区内の倉庫にあらかじめ送って保管しておけば、モール上で商品が売れたら倉庫からすぐに発送できるため、配送料や時間を短くできるというメリットがあります。
3. その他
上記の他にも、転送サービスなどを使って国内向けのECサイトから海外配送を行う方法や、海外で代行販売を行っている業者に商品を買い取ってもらう方法などもあります。これらの方法は、新たに自社でサイトを構築したりマーケティングを行う必要もないため、低コストで海外の顧客に商品を届けることができます。しかし、顧客とコミュニケーションが取りにくい、顧客データの収集や分析も間接的になるためやりにくいなど、マーケティング戦略やブランディング活動において大きな制約が生じるというデメリットがあります。また、海外への高額な配送料や代行業者の手数料などによって利益が出にくいこともあり、これらの方法ではビジネスを大きく育てることは難しいと言えるでしょう。
越境ECの市場規模
数年前から日本でも一般化してきた越境ECというビジネスモデルですが、現在ではどれくらいの市場規模になっているのでしょうか。
世界の越境ECの市場規模
経済産業省によると、世界のBtoCにおける越境ECの市場規模は2022年で約808兆円(5.44兆ドル、1ドル148円で計算)でした。日本国内のBtoCにおけるEC市場規模が同年で約22.7兆円という数値からも、その巨大さが感じられると思います。
世界の市場規模はその後も上昇し続けており、2026年には約1,100兆円(7.62兆ドル、1ドル148円で計算)に到達すると予測されています。(*1)
近年では新型コロナウイルスの影響で行動制限が行われたことをきっかけにオンラインショッピングの普及が加速したことも、この越境EC市場の背景としてあります。
加えて日本においては円安によって、海外から日本の市場を見ると相場が安くなっていることもあり、越境ECの流通額が増加しています。日本は長らく続く少子高齢化と出生率の低下により総人口の減少が続いており、国内需要は縮小し続けています。そのため、日本国内だけをターゲットにしたビジネスを取り巻く環境は、今後さらに厳しくなっていくことが予想されることからも、日本企業は特に越境ECに注目すべきなのです。
米国の越境ECの市場規模
ここで、EC市場の先進国と言われている米国の市場についても見てみましょう。経済産業省によると、2022年の米国におけるEC市場規模は前年比7.4%増の1兆328億ドルとなっています。米国も新型コロナウイルスの影響でECの利用は急増していましたが、2021年以降も成長を維持していくとみられています。
日米間の越境ECの市場規模を見てみると、2022年の米国の消費者が日本から購入した総額が1兆3,056億円となっています。(*1)この数値は2020年は9,727億円(*2)、2021年は1兆2,224億円(*3)と拡大を続けており、米国市場はまだまだ狙うべき巨大なマーケットと言えます。
越境ECのメリット
ここまで越境ECの市場の将来性について見てきましたが、ここでは越境ECを行うメリットを整理してみます。
1. 新しい顧客の獲得
越境ECの一番のメリットは、日本にいながら海外の新しいマーケットの顧客にアプローチできる点です。
特に、国内需要が先細りしている日本の企業にとっては、年々拡大を続けている巨大なマーケットに新たな需要を作り出せる可能性は、この上ないメリットと言えるでしょう。
2. 実店舗運営と比べたハードルの低さ
オンラインという点では、現地で実店舗を経営するよりもはるかにコストを抑えてスタートできる点も魅力です。様々な越境ECのプラットフォームが登場したり、越境EC支援のサービスを行う企業が増加していることも、参入のしやすさにつながっていると言えます。
3. 海外からの日本人気が活かせる
日本のインバウンドが好調なことも、越境ECの追い風となっています。訪日観光客が日本で「爆買い」するなど、海外で人気のある日本製品は多数存在していると言えます。つまり、日本製品を越境ECで購入したいというニーズが海外には大きく存在しているのです。帰国後に越境ECで再購入する、という行動も増えてくるかもしれません。
越境ECのデメリット
このように、越境ECには多くのメリットがありそうですが、一方でデメリットも存在します。越境ECを始める前に、まずはどちらも把握しておくことが重要です。
1. 輸送コストの高さ
まず直面する大きなデメリットとして、輸送コストの高さが挙げられます。国内への配送よりも高額になるため、現地の消費者がECサイトで購入する際の大きなハードルとなるケースも多いです。Google Analyticsなどでアクセス分析をすると、ユーザーが商品をカートには入れたのに、その後に配送料の高さを見て離脱したという動きが顕著に表れます。
また、国を跨ぐことで配送経路が複雑になったり、配送先の国や業者によっては日本では考えられないほど対応がルーズなところも多かったりするため、遅延や紛失のリスクも高くなります。
2. 現地の法律や規制への準拠
販売を行う国や地域の法律や規制に対応する必要がある点も、軽視できないデメリットです。たとえば、米国カルフォルニア州のCCPAやEU域内のGDPRなどの個人情報に関する法律や、米国の障がい者の人権を守るためのADAという法律などに準拠する必要があります。これらに違反した場合、罰金を課されるリスクもあり、知らなかったでは済まされない事態につながります。
3. 現地の顧客サポートの難しさ
現地での顧客対応も、現地の言語を使えるだけでなく、文化や習慣を理解しておくことも重要になってきます。時差もある中で、顧客に対してタイムリーで適切な対応ができないと、ECビジネスとして最も大事な信頼を獲得することができません。
越境ECの始め方・準備
ここまで越境ECの可能性やメリット、デメリットをお伝えしてきました。国内の競合企業より一足先に越境ECを始めたいという気持ちになった方もいるかもしれませんが、見切り発車では成功できません。
ここでは、越境ECを始める際の準備として、まずどのようなことを決める必要があるのかをお伝えします。
1. 取り扱う商品
越境ECでどの商品を販売するかを決めます。ニーズの有無の前に、そもそも越境ECに向かない商品、例えば賞味期限の短い食料品などは、長い配送期間に耐えられない可能性があるので、避ける必要があります。他には、条約や国際輸送の決まりで配送ができないケースもあるので、事前に調べておきましょう。
2. ターゲットとする国や地域
どの国や地域をターゲットに商品を販売するかを決める必要があります。商品より先にターゲットから決めるケースも少なくありません。商品のニーズがあるか、その国の法律や規制、商習慣に対応できるか、配送コストが現実的かなどを考慮しながら設定していきます。
3. 越境ECの展開パターン
本記事の冒頭でも紹介した通り、越境ECには自社でECサイトを構築・運営する、ECモールを利用するなど、いくつか方法があります。ターゲットとする国や地域のECストアのシェアなども調べつつ、それぞれのメリットとデメリット、コストなどを比較して決定します。また、立ち上げはもちろん、その後の運営や集客、ビジネスの成長に応じた拡張性や柔軟性なども考慮しておくと良いでしょう。
4. ターゲットとする国や地域の法律、規制、商習慣など
越境ECのデメリットにも挙げたように、ターゲットとする国や地域の法律や規制に準拠し、商習慣を考慮していく必要があります。事前に調査をして必要な対応を把握しておくことはもちろん、できれば現地に精通した専門家に、準備期間中にチェックをしてもらうことをプロセスに含めることも検討してください。
5. 物流計画(配送、倉庫など)
越境ECのパターンにもよりますが、商品の注文が入った場合に、どこからどのような経路で購入者に届けるかの物流を整備しておくことが必要です。在庫の管理や配送経路の想定が不十分だと、注文から配送までに時間がかかり過ぎてしまい、購入者からのクレームやキャンセルなどにつながります。またデメリットにも挙げたように輸送コストが高くなりがちなので、適切な経路、利用する業者やサービスなどを選びつつ、フェアな金額設定を目指しましょう。
6. 越境ECの運営体制
越境ECをスタートすると、日本国内と同じように、日々現地のユーザーから問い合わせや注文が発生しますので、適切に対応していく必要があります。デメリットにも挙げた時差、言語、商習慣や文化の違いなどを考慮しながら、運営できる体制をあらかじめ検討しておきましょう。
越境ECを成功させるためのポイント
ここまで挙げてきたような注意点を考慮して準備を行ったとしても、越境ECで成功することは容易なことではありません。
その一番の要因は、参入する企業やブランドにもよりますが、いくら日本では人気で知名度のある製品でも、現地では認知ゼロからのスタートになる点です。このことを理解せず、日本で通用したパッケージやマーケティング手法をそのまま海外で使った結果、箸にも棒にも引っかからない、という事例をよく見てきました。どんなに素晴らしい製品でも、そのままでは海外のマーケットには受け入れられない可能性があるため、事前に専門的なリサーチや検証を入念に行い、現地の消費者のインサイトを深く理解することが大事です。その上で、商品をローカライズする、現地のマーケットの中で可能性のあるポジションを模索するといった、ゼロイチの観点での戦略を立てることが必要なのです。
また、越境ECの開始後も、配送や顧客対応などオペレーションとしての運営だけでなく、ビジネスを拡大していくための集客施策、各種データの取得と分析、ECストアの改善などを行っていく体制の構築も必要です。特に集客施策は、現地のユーザーのインサイト、文化、トレンドなどを深く理解しておかないと、全く効果が出ないでしょう。
ターゲットとなる国のことを自社だけで理解することが難しい場合は、現地のことに精通した専門家やパートナーの協力が必須と言えます。専門家やパートナーを正しく選ぶことですら難易度が高いですが、ビジネスの命運を握る部分ですので、妥協せずに見極めることが大切です。
ワイズアンドパートナーズでは、2002年から「日本のブランドを世界で有名にする」を使命に、多くの日本企業の越境ECを含む海外進出、現地でのリサーチやマーケティング、ブランディングまでをトータルに支援しています。まずは弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。
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