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2023年も注目のファッショントレンド「Quiet Luxury(クワイエットラグジュアリー)」。THE ROW(ザ・ロウ)、BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)といったブランドが打ち出したこのテーマは、過度な装飾はなく、ミニマルなデザインだが確かな品格が感じられる、そんなルックで、今、アメリカ人の間でも流行しています。そしてこの流れの中で、高級ブランドではありませんが、Uniqlo (ユニクロ)の売り上げが急増しているのです。
「クワイエットラグジュアリー」トレンドとは。
アメリカ人にとって「日本のファッション」といえば、“Kawaii(かわいい)”、つまり、原宿の若い女の子たちのような、カラフルでデコラティブな洋服やたくさんのアクセサリー、派手なウィッグ、個性的なメイクを思い起こさせるものでした。しかし最近、そのイメージが徐々に変わりつつあります。
それは「クワイエット・ラグジュアリー」トレンドの台頭の影響が大きいかもしれません。この完全なミニマリズムではなく、ノームコアよりは洗練されているファッションスタイルは、アメリカ人のファッション感も変えつつあります。そしてこの流れの中で、より多くの人々が日本のファッションブランドの中にあるシンプルで品の良いものに注目し始めたのです。
そもそもクワイエットラグジュアリーとは、その名の通り「静か」「主張しない」ラグジュアリーの意味で、”Stealth Wealth” とも呼ばれます。例えば、シンプルな単色のカシミアセーター、仕立ての良い白いシャツなど、一目見てブランド品だと分かるロゴやモノグラムなど過度な装飾はなく、一見どこのブランドか大衆の人々が見ても気が付かないけれど、分かる人には分かる、タイムレスなファッションスタイルです。
富裕層がブランド品で自分の富をアピールするのは格好良くないと考え、その代わり、高価なブランドのシンプルな服を着ることで、自分の服の良さをさりげなくアピールしているところにあります。シンプルな服の真価は、高級品を買える人たちにしかわからないからです。
なぜクワイエットラグジュアリーがアメリカでトレンドなのか?
アメリカでもこのような着こなしがビッグトレンドとなって人気を集めているのには、いくつかの理由があります。
まず、アメリカ人が好むデイリーファッションにおいて、色鮮やかで派手な物を買うことをやめるシフトが起きていることです。2021年に新型コロナパンデミック規制が解除された当初は、多くの人が鬱憤を晴らすようにお金を使いたい気分でした。その時のファッショントレンドは「ドーパミン・ドレッシング」と呼ばれ、脳内をドーパミンで満たすもの、例えば、ハッピーになれるものを身につけるというものでした[1]。
しかし、アメリカ経済が苦戦し、消費が減っている現在では、人々はお金をすぐに使うことはしなくなりました。その代わりに、よりシンプルで質の高いものを購入する方向にシフトチェンジし始めました。実際、「クワイエットラグジュアリー」がアメリカで流行り、ファッショントレンドとなったのは、大不況真っ最中の2008年でした。
他に考えられる理由として、人気テレビドラマ「Succession(邦題:メディア王 〜華麗なる一族)」の影響があります。世界的巨大メディア企業を経営し、富を維持しようとする超富裕層のローガン・ロイ一族の物語を描いています。このドラマの中で、登場人物の一人が、バーバリーのバッグを持っている他の金持ちのことを「派手すぎる」と馬鹿にするシーンがあります[2]。
経済の不確実性と人気番組の影響で、クワイエット・ラグジュアリーが急速にアメリカの流行に敏感な若者のお気に入りのスタイルとなりつつあるのです。
(引用元)UNIQLO.com
ユニクロは一般庶民にとってのクワイエットラグジュアリーブランドのポジション!
では、このクワイエットラグジュアリーを演出できるブランドはどこなのでしょうか。
富裕層の間では、The Row(ザ・ロウ)、Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)、Khaite(ケイト)、Loro Piana(ロロ・ピアーナ)、Brunello Cucinelli(ブルネロ・クチネリ)、Miu Miu(ミュウミュウ)、Max Mara(マックス マーラ)などが挙げられます。ただしこれらは簡単に手が届くブランドではありません。そこで注目が高まっているのが、「Uniqlo(ユニクロ)」です。手ごろな価格とシンプルで高品質なアイテムが人気を集めています。北米では「ユニクロって何?」から始まったこのブランドが、輝くときがきているのです。
そもそもユニクロの魅力である常に高品質でありながらシンプルなデザインは、アメリカではあまり評価されてきませんでした。明るい色や主張の強いファッションがワードローブに欠かせないという風潮があったからです。実際、ユニクロが2005年にニュージャージーに1号店をオープンしたにもかかわらず、米国の店舗が収益を上げ始めたのは2022年〜2023年です[3]。
ユニクロブームの象徴として、2022年4月、とあるTikTokのユーザー@caitlinphilmoreによる動画が流行しました。その中で、ユーザーは、自分が持っているラウンドミニと呼ばれるユニクロのバッグからすべてを取り出す様子を見せ、小さな外見にもかかわらず、大量のアイテムを収納できることをアピールしています。バッグの色は単色で装飾品もなく、地味な印象でしたが、この動画は何千回と再生され、より多くの人がユニクロのバッグを購入するきっかけとなりました。TikTokでは、「Uniqlo bag」というタグが8700万回以上再生されています[4]。ラウンドミニはクワイエットラグジュアリートレンドにぴったりあてはまると評判でユニクロの中で最も売れたバッグとなりました。
ファッショントレンドは見た目だけで決まらない時代。
ユニクロのバッグを流行らせた動画の内容が、その機能性を示すものであったことは必然的なものだったといっても過言ではありません。
不安定なアメリカ経済状況と実用主義的なアメリカ人の考え方が組み合わさって、貴重で限られたお金をより効率的に機能するファッションアイテムに使いたいと考えることは、当然のことだからです。
日本でも2~3年前までは、インスタ映えする派手なファッションや、安くて着回しが効くアイテムに需要がありました。より多くのアイテムを持ち、毎日違う服を着ているように見せたい、常にトレンドのものをアップデートしていたい、というソーシャルメディアファーストな考えが先行していたからでしょう。しかし今、消費者を惹きつけるのは、「本当に長持ちする質の良いものを購入すること」に変化しつつあります。
アメリカのZ世代は、外見を超えたレベルでファッションを選ぶといわれています。ファッションブランドの社会的影響、環境への配慮、その企業の労働者の待遇に関心を持つ傾向が強いのです[5]。言い換えれば、そのブランドのファッションアイテムが世の中でどのように機能するか、サステナビリティがあるかどうかが見た目と同じくらい重要になっているのです。
まとめ:日本のファッションブランドはアメリカに定着するか?
アメリカにおける日本の“ソフト面”におけるパワーは年々大きくなっていて、テレビからアート、食品に至るまで、日本の影響を端々に感じられます。
しかし、ファッションだけは、文化を浸透させるには時間がかかりすぎているかもしれません。果たしてこのクワイエットラグジュアリーのトレンドが一時的なものになるのか、定着していくのか、今の時点では定かではありませんが、ユニクロのように確かな品質と手の届く価格の日本のブランドがアメリカのファッションシーンで台頭するための扉は、開かれたといえるでしょう。
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参照元
- https://www.businessinsider.com/americans-spending-goods-versus-experiences-supply-chain-crisis-2021-10
- https://www.tiktok.com/@amyodellwriter/video/7215384887254076715?q=quiet%20luxury&t=1683789370395
- https://www.scmp.com/lifestyle/fashion-beauty/article/3210969/japanese-fast-fashion-giant-uniqlo-mission-conquer-us-and-replicate-success-enjoyed-asia-and-europe?module=perpetual_scroll_0&pgtype=article&campaign=3210969
- https://www.theguardian.com/fashion/2023/apr/14/how-uniqlos-15-crossbody-bag-conquered-the-world
- https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/the-influence-of-woke-consumers-on-fashion
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