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今、アメリカでは、日本酒の人気が徐々に高まってきています。多くのデザイナーによって日本酒の醸造所が作られるほどです。しかし現段階では、日本酒は、まだアメリカ市場に大きく食い込んでいるほどではなく、多くのアメリカ人の日本酒に対する現在の認識は、まだまだポジティブとはいい難く、知識が深いものではありません。しかしながら、適切なマーケティング戦略によって、近い将来、日本酒は大きくブームとなる可能性を秘めています。
アメリカで日本酒に興味が持たれ始めた?
アメリカ人はアルコール、特にハードリカーを好んでおり、長年にわたり、 テキーラ、ウォッカ、カンパリ、シュナップスなど、他の文化圏から多くのお酒を取り入れてきました。一方で、日本酒は長年アメリカに存在していますが、バーや食料品店で注文されることはあまりありません。
しかし、最近、一部のアメリカ人の間で日本酒にまつわる新たなムーブメントが起きていると語る記事が、とあるメディアで掲載されました。日本酒を飲んでみたいという人が増えているのです。アメリカにおける日本酒の歴史、日本酒に対する認識、そしてなぜ日本酒が次のトレンドになり得るのかをみていきましょう。
アメリカにおける日本酒の歴史
アメリカの新聞で初めて日本酒が取り上げられたのは、1853年にマシュー・ペリー提督が日本に渡ってから間もなくのことでした。アメリカの新聞に初めて日本酒が掲載されたのは、その1853年のことです。新聞には、日本が持っている、大豆、米などの交換可能な品目について記述されていましたが、酒は「Sake」ではなく「Saki」と書かれてしまっていたのです。そのため、今日でも多くの英語圏の人が日本酒を「Saki」と間違って呼んでいしまっています。
それ以降、日本酒は日本からアメリカに輸入されるか、西海岸やハワイに移住した日本人移民によってもたらされるようになりました。
そして最初の酒蔵は1901年、カリフォルニア州バークレーに開設されました。その後、多くの酒蔵がオープンし、日本酒の人気は、日本から持ち込まれた日本人コミュニティの枠を超えて広がっています。今では、北米酒造組合(Sake Brewers Association of North America)があるほどです[1]。
日本酒に対するアメリカ人の意見
アメリカにおいて、日本酒は100年以上の歴史があるにも関わらず、なかなか主流になることができませんでした。ほとんどのアメリカ人がビール、ワイン、テキーラ、ウイスキーの好きな銘柄を挙げることができますが、日本酒の銘柄を挙げられる人はまずいません。
それどころか、日本酒に対するアメリカ人の意見は、あまり肯定的なものではありません。例えば、日本酒といえば、ストレートで飲む以外に、「酒ボム」と呼ばれる飲み物が最も一般的です酒ボムとは、ビールの入ったジョッキに小さなカップに入った日本酒を落とし、できるだけ早く飲み干すという飲み方です。当然のことながらこの方法で日本酒を飲むと、味がマスキングされてしまうのです。この飲み物は若者の間で人気がありますが、日本酒を味わう訳ではなくある種の宴会芸のようなものなのです。
多くのアメリカ人にとって日本酒の味が魅力的でないのは、安酒以上のものを飲んだことがないという単純な理由からです。味や品質にどれだけバリエーションがあるか、冷やしたり燗をつけたりできることすら知られていないのです。
新たな「日本酒」ブーム
最近、ニューヨークタイムズに「Sake is Booming in America」という記事が掲載されました。その中で、アメリカの日本酒の需要がかつてないほど高まっていると報じています。2012年から2022年の間に、アメリカに輸出される日本酒の量は、1400万リットルから3600万リットルに倍増。実際、2019年には、米国は世界最大の日本酒の輸入国となっていました[2]。
このような日本酒人気は、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)パンデミックの時に、特に強まりました。アメリカではコロナウイルスによる不安や経済的ダメージのストレスからか、2020年にはアルコールの売上が大幅に増加 [3]。外食の場面でお酒を手に入れることができなくなったため、日本酒は小売店で購入できる酒としてブームが起きたのです。
それまで“日本酒は通常寿司と一緒に飲むものだ”というイメージいだいていたアメリカ人にとって、その誤解を解くいい機会でした。
2023年現在、アメリカには20以上の醸造所があります。その中で最も大きな酒蔵が、日本酒をメインストリームに浸透させるという明確な目標を掲げて、最近アーカンソー州に酒蔵をオープンさせました。日系人の多いカリフォルニアや流行の発信地であるニューヨークのような州ではなく、アーカンソー州なのは、アメリカ最大の米の生産地だからです。
アメリカ国内に酒蔵が増えれば、消費者が選べる選択肢が増えるでしょう。日本酒の魅力と可能性をより多くの人に知ってもらうために、より多くの蔵元がオープンすることに期待が寄せられます。
アメリカでの日本酒ブームを阻むもの
こうして少しずつ、広がりを見せ始めた日本酒ですが、爆発的なブームで全米に広がるためには、まだまだいくつかの障壁があります。
まず、香りと風味を少しずつ楽しむ日本酒は、小さな器で飲むことが主流です。しかしながら特に伝統的に日本酒を入れるのに使われてきたお猪口は、見た目には美しいですが、アメリカでは非常に珍しいものです。日本酒を飲むのに適した食器がないため、日本酒を飲むこと自体が面倒だと好まれない可能性があるでしょう。
また、まだまだ日本酒の味を知らない人が多いので、日本酒単体で飲んでもらうのは難しいかもしれません。一般的に知られているカクテルや、お茶のようにミクソロジーのレシピを組み合わせることで、日本酒を一般に普及させることができるかもしれません。酒ボム以外の美味しい飲み方を広げていくことが、トレンド醸成には欠かせないのです。
飲み方、という点では、寿司以外の食べ物とのペアリングを訴求することも重要です。例えば、アメリカではビールとフライドチキン、ワインとチーズといった組み合わせが一般的です。日本酒を一般的な食べ物と一緒に紹介することは、日本酒の人気を確固たるものにする最善の方法かもしれません。
まとめ:世界に日本酒が受け入れられる重要性
実は最も大きな懸念点は、新しい文化を取り入れやすいZ世代のアルコール離れです(参考>「アルコール離れが加速するZ世代。アメリカの「缶カクテル」のトレンドを紹介!」https://ysandpartners.com/jp/blog/alcohol-trends-genz-us/)。調査データによると、Z世代はミレニアル世代に比べ、アルコール消費量が約20%減少しています。しかし、多くの飲料メーカーが、ノンアルコールのクラフトビールやシードル、その他の飲料を推し進め、このトレンドに乗ろうとしています。ノンアルコール飲料がトレンドになれば、日本酒がメインストリームで輝くことは難しくなるかもしれません。この世代にも日本酒=味や香りを楽しむ美味しいものと思ってもらうことは、とても重要なのです。
最近、日本国内での日本酒の人気が低下しているとの調査結果もあります。だからこそ、海外も含めて、日本酒を「美味しい」思ってもらう人を増やし、評価を高めて消費を促進することは、必要不可欠となりつつあります。そしてそれは、文化の維持という側面においても重要なことかもしれません。
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参照元
- https://sakeassociation.org/2019/07/an-expanded-history-of-sake-brewing-in-the-us/
- https://www.thrillist.com/drink/nation/why-american-sake-producers-are-on-the-rise
- https://www.publichealth.columbia.edu/public-health-now/news/study-shows-uptick-us-alcohol-beverage-sales-during-covid-19-pandemic
- https://globalnews.ca/news/9411516/alcohol-consumption-decline-gen-z/
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