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SNSでバイラル現象が起き、企業やブランドが注目を浴びる要素は何でしょうか?
残念ながら、悪評を伴う形で広がることもあります。しかし、時にはブランドの製品やサービスが期待を上回ることでSNS上でバイラルが起きることもあります。
最近、あるブランドは製品の耐久性が映像によって拡散され好評が広まりました。このブランドは、バイラルが起きた映像に対して素早く対応し、その対応によってさらにイメージを向上させることに成功しました。
今回のブログでは、この優れた対応について取り上げ、効果的なソーシャルメディアマーケティングとカスタマーリレーション戦略について考察します。
車は車両火災で全焼、中にあったタンブラーは無事
2023年11月15日、ダニエル・レタリングという女性がTikTokに動画を投稿しました。この動画には、車両火災で全焼した彼女の車の残骸が映っています。車のほとんどは黒焦げになっています。しかし、車のカップホルダーには明るいオレンジ色の部分が見えます。
このオレンジ色の部分は、スタンリーというブランドのタンブラーです。このタンブラーは、車全体が炎に包まれた大事故にもかかわらず、見事に無傷でした。動画では、ダニエルがそのタンブラーを手に取り、中の氷がタンブラーの中で音を立てる様子が映っています。
ダニエルは言います、「みなさんはスタンリーのタンブラーは、漏れてこぼれるか心配していますが、溶けてしまうことを考えたことがありますか?昨日の火事の中タンブラーは焼けず、まだ中に氷が残っていますよ!」
彼女の車は完全に破壊されていましたが、スタンリーのタンブラーは火災で燃えなかっただけでなく、中の氷が溶けないほどしっかりと断熱されていました。
このブログを書いている時点で、その動画投稿から2週間も経っていないにもかかわらず、この動画は8800万回以上再生され、800万以上のいいねを獲得し、XやFacebook、InstagramなどのSNSで数千回共有されています[1]。
スタンリー、ダニエルのビデオに素早く対応
スタンリーは、100年以上の歴史のあるブランドです。創設者が開発した保温技術は、時代と共に進化し、現在ではカップ、マグカップ、タンブラーなどのさまざまなドリンクウェアを一般の人向けにウェブサイトで提供しています。
実はスタンリーは、過去にもTikTok動画が話題になっています。スタンリーカップでフレーバーウォーターを飲むという動画がTikTokでトレンドとなりました。このトレンドは「WaterTok」とも呼ばれ、数千回もの再生回数を誇る動画が存在し、多くのTikTokユーザーの間でスタンリーのブランド認知度が拡大しました。
しかし、ダニエルの動画のようなバイラルが起き、急激に拡散したのは同ブランドにとって前代未聞のことでした。Googleトレンドによると、スタンリーは年間を通じて一定の検索数を保っていましたが、11月15日の動画投稿後に検索数が急激に増加しました。
ダニエルの動画でバイラルが起き、拡散してからわずか24時間後、スタンリーの社長であるテレンス・ライリー氏が、スタンリーTikTok公式アカウントに動画を投稿しました。そこでは、ダニエルに感謝の意を伝え、彼女が火事から無事であることを喜んでいます。そして、会社は彼女に新しいスタンリーのタンブラーを送るだけでなく、新しい車を購入しプレゼントすることした、と述べています。
スタンリー社の社長とマーケティングチームの正しい判断
動画がバイラルヒットするたびに、顧客に車を買ってあげるべきでしょうか?もちろんそんなことはありませんが、今回スタンリーはプレゼントすることにしました。
ダニエルに車をプレゼントするという選択肢は、様々な理由からスタンリーのチームが行った最も良い対応です。ダニエルの動画が彼らにとって過去1年間で最大の無料広告になりましたが、他にもこの対応を選択した理由が考えられます。
この対応が優れた戦略である3つの理由
1. スタンリーにはその資金力がある
スタンリーは米国で最も急成長しているアウトドア用品ブランドとして最近ランク付けされ、歴史もあるブランドです。2021年だけでも76億ドルの収益を上げました。これはダニエルの動画投稿以前の数字であり、スタンリーは特定のデモグラフィックにおいて知名度があります。
この会社にとって、新しい車に1万ドルから2万ドルの支出は財政的に実現可能なことであり、それは広く知られています。もしスタンリーがダニエルに新しいタンブラーだけを送った場合、オンラインで批判が出ることになったでしょう。そんなに成功している会社が、多くのポジティブな広告に繋がった投稿をしてくれた女性を助けようとしないのか、と人々は疑問に思ったことでしょう。
2. スタンリーの対応が迅速であった
ダニエルの動画にバイラルが起きた後、24時間以内にスタンリーは応答しました。これは彼らが常にオンラインで顧客の行動に注意を払っているだけでなく、彼女が新しい車を買うという決断が迅速であったことを示しています。
この迅速な意思決定は、スタンリーがこの状況で正しいことを理解し、財務部門などを通すといったことをせず行動した会社として、評判を高めています。この迅速さは、スタンリーが謙虚で感謝の気持ちがあり、道徳的に正しいという印象に繋がっています。
3. 動画の無料広告の価値は新しい車以上である
ダニエルの動画は8,800万回以上再生されており、多くの企業の有料広告キャンペーンよりも再生回数が多いです。平均的なFacebook広告の1,000回のインプレッションあたりのコストは1ドルから3ドル程度です[2]。これらの数字に基づけば、ダニエルの動画の価値は88,000ドルから246,000ドルです[3]。しかも、これは彼女のオリジナル動画だけの数字であり、動画が再投稿されたり、共有されたり、あらゆるSNSで拡散された数字を含みません。
顧客への感謝の重要性
今回のケースでは、スタンリーの行動が顧客に与えたブランドの信頼感が最も重要な点です。スタンリーが投稿した動画の中で、社長のテレンス・ライリー氏は「今後、このようなこと(新車のプレゼント)は行わないだろう」と述べていますが、視聴者は、スタンリーが顧客を大切にするブランドであることを理解しました。
ある統計によると、企業の売上の80%は顧客のわずか20%から生まれる、と出ています。既存顧客を維持することは新たなロイヤルカスタマーを見つけることよりも健全な戦略です。既存顧客との関係を築くことに投資することで、顧客のロイヤリティと満足度が向上するだけでなく、顧客が楽しめるコミュニティを作り上げることもできます。
スタンリーの場合、顧客への感謝の姿勢を明確に示しました。彼らは古くからの顧客にも新たな顧客にも、彼らのサポートに感謝し、適切な場合にはお礼をすることを示しました。
すべてのブランドが影響力のある顧客に車を贈ることができるわけではありませんが、感謝の気持ちを示すためにできることはまだあります。例えば、四半期の目標達成やソーシャルメディアのフォロワー数の目標達成などでセールを行うことなどです。
まとめ
マーケターは毎年何百万ドルもの費用をかけて、エージェンシーや社内のマーケティングチームにバイラルが起き拡散される方法を探すよう依頼しています。ソーシャルメディアのコンテンツは通常、インターネット上で多くの人に拡散してくれる人が見つかることを願って、公開する前に数週間にわたって修正を重ねます。
毎年たくさんの人々がそんな状況を作り出そうと多額の費用を費やしてコンテンツを発信していますが、『顧客が共感する瞬間が自然に発生したもの』よりも優れているものはありません。さらに、この種のコンテンツに対する対応も同様に重要です。
顧客への感謝を示すことは、オーガニックなエンゲージメントを促進し、顧客のロイヤリティを高め、今はあなたの商品を必要としていない潜在的な顧客にも印象を残す素晴らしい方法です。将来的にその種の商品が必要になった時、彼らは最初にあなたのブランドを思い浮かべるでしょう。
ワイズアンドパートナーズでは、2002年から「日本のブランドを世界で有名にする」を使命に、日米双方から企業のマーケティング、ブランディングを支援しています。まずは弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。
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