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アメリカの日本食レストランで出された「寿司」をみたときに、カルチャーショックを受けたことはありませんか?高級寿司店でも回転寿司でも、アメリカのレストランでは日本とは違うお寿司が出てくることが多いでしょう。日本の伝統的な寿司はなぜ人気が出たのか、その中でもアメリカ人に受け入れられなかった点はどこにあるのか、寿司文化の広がりから日本食がアメリカで受け入れられるためのヒントを探ってみましょう。
アメリカにおける寿司の歴史
アメリカで最初の日本食レストランは1894年にサンフランシスコで開店し、寿司は1950 年代以降は日本食レストランで提供されるメニュー提供の一つとなりました。その後、1960 年代前半から半ばにかけてカリフォルニアを中心とした米国の大都市圏に寿司バーがオープン。中でも1964 年から 1966 年にかけてオープンしたロサンゼルスの「川福」がアメリカで最初の本格的な寿司屋と言われています。ここは日本でおなじみの寿司屋のような店構えで、カウンターで板前さんがお客さんをもてなしながら握っていました[1]。
その後、1980年代に入ると、アメリカでは「ジャパノフィリア(日本びいき)」の波が押し寄せたこともあり、寿司は全米で爆発的な人気を獲得しました。今では、アメリカだけではなく世界中の多くの国で愛されるフードカルチャーとなっています。
アメリカ人と寿司に関する興味深い人口統計データ
米国にあるアジア系アメリカ人のレストランチェーンPei Weiはどのような新しい寿司をメニューに加えるべきかを決めるために、2015年に寿司に対する感情について顧客調査を行いました [2] 。
<調査結果>
- 寿司を食べたことがあると回答した男性は36%、女性は27%で、男性の方が多い
- 18~34歳の84%が寿司を食べたことがあるのに対し、65歳以上は50%にとどまっており、若い人の方が食べている
- 寿司を食べたことがない人の62%が「いつか食べてみたい」と回答
- 寿司を食べたいと思っているけど食べたことがない人の 94% は、生の魚への抵抗感を示している
- 初めて寿司を食べた人のうち、51%以上が予想よりも食べてよかったと回答
好奇心が旺盛な若年層ほど、新しいもの=寿司への興味が高くなっていますが、生の魚を食べる文化がないアメリカ人にとっては、その点がハードルになっている様子がうかがえる興味深い結果となりました。
アメリカの寿司と日本の寿司の主な違い
アメリカの寿司と日本の寿司には、たくさんの違いがあります。ここではその主なものとその理由を紹介します。
巻き物と握り寿司
ほとんどのアメリカ人は寿司といえば、“巻き”しか知りません。そのため、多くの人が寿司のことを「スシロール」と呼んでいます。レストランで出される寿司もほとんどがこのスシロールです。もちろん“握り”寿司も存在します。スーパーの鮮魚売り場の近くには、マグロやサーモン、エビなどを使った握り寿司が簡単に手に入りますが、生魚に抵抗があるアメリカ人にとっては、手に取るのに抵抗があるようです。
また、巻き物と言っても、基本はカニかま、アボカド、サーモン、厚焼き玉子などが入っていて、海苔がシャリの内側に巻かれた、カリフォルニアロールが人気です。生魚と海苔に抵抗があるアメリカ人向けに作られたこのレシピは、今やアメリカのポップカルチャーの象徴的な料理として定番となりました。
具材とトッピング
先に挙げたカリフォルニアロールが象徴するように、日本の寿司と違って、アメリカの寿司屋は一つの巻物にいかに多くの具を入れられるかを競っているようです。例えばとあるアメリカのレストランに置かれている寿司メニューリストは、1ページか2ページにたくさんの具材が入った巻き物が大きな写真付きで載っていて、様々な種類の中から注文できるようになっています。
もう一つ大きな違いを感じるのは、具材の種類です。アメリカのレストランでは、寿司は食べてみたいが、初めての寿司で生魚を食べたくないという人たちにも受け入れられるようなレシピに力を入れたと言われています。アボカド、キュウリ、蟹、海老の天ぷら、そしてクリームチーズまで、さまざまな具材が巻かれています[4]。日本のように生のお肉は好まれませんが、加熱したお肉と生野菜を巻いたものは人気です。
そして、具材が違う理由のもう一つに、レストランは企業努力で寿司を安く提供するために、日本の食材を輸入するのではなく、地元の食材を使っているということが挙げられます。その結果、スシロールは独自の進化を遂げました。
丸ごと一本 で購入
アメリカの寿司レストランでは、一種類の寿司を数個ずつ、あるいは板前がバーで一個ずつ渡すのではなく、ロール(巻き物)単位で客に販売します。1巻に最低でも8〜10貫分は入っています。
アメリカ人の多くは寿司で冒険をしたがらないので、好き嫌いの分かれるロールを何種類も出されるより、自分の好きな具の組み合わせを見つけてそれにこだわりたい人が多いようです。
また、アメリカの巻き寿司の具の多さを見ると、「大きいことは良いことだ」というアメリカの理想がしっかり定着していることがわかります。
職人ではなくシェフの仕事
伝統的な寿司作りやカウンターがある店づくり、新しい板前を育てるプロの板前との深いつながりが少ないので、アメリカの寿司文化は日本のような豊かな歴史や職人を持つものになりませんでした。
その代わり、料理学校などでは12週間の寿司コースなど、短期間で寿司作りの基本を学べるようなプログラムが用意されています。寿司を芸術や職人仕事として捉えるのではなく、食べ物を扱う仕事の一つとしてとらえることで、様々な人が寿司作りに挑戦しやすくなっているのです。日本独特のルールや厳しい修行はなく、多くのシェフが寿司のレシピに独自の工夫を凝らすようになりました。
アメリカの寿司は本来の寿司から離れつつあるのも、こういった背景があるからかもしれません。
まとめ :形を変えて受け入れられる日本食
このように寿司は米国で独自の文化として定着しつつありますが、まだ進化していないわけではありません。寿司ブリトー、寿司バーガー、寿司ドーナツ、寿司ピザなど、これまでにないほど奇抜な「寿司」レシピを生み出しています[4]。
寿司に限らず、日本食に対するアメリカ人の熱狂は、かつてないほど高まっています。ニューヨーク・タイムズ紙は、2023年の食のトレンドは「Japan-Adjacency」であると予測しているほどです。
しかしそれらは必ずしも、日本の食べ方に忠実ではありません。伝統的な日本食をアメリカ人に受け入れられるような形で提供するレストランが、現在の顧客から大きな支持を得ることができるのです。
自分たちの商品やレシピが、アメリカ人にどのような形で好まれるのか、アメリカ人の好みや食文化の違いを知り、そして理解することがアメリカで成功するための重要なポイントになっています。
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