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最近、アメリカでは、特に若い世代を中心に健康志向・ヘルシー志向の人が増えています。そして多くの人の中で肉の摂取量を減らすことへの関心が高まっており、食事に植物性食品を加えることを検討し始めています。今回は、その植物性食品にあたる日本の代表的なフード「豆腐」がこの潮流に乗ってアメリカ人に受け入れられるのかどうか、さまざまな観点から考えてみます。
アメリカにおける「豆腐」の歴史
遡ること1878年、アメリカで最初と言われている豆腐を販売する会社がサンフランシスコにオープンしました。当時、アジア系アメリカ人の多くは、アメリカ西海岸、特にカリフォルニアで生活をすることが多かったので、豆腐の市場はこれらの移民コミュニティから派生し、全米には普及しませんでした。
その後、豆腐が注目されるきっかけとなったのが、1960年代から70年代にかけてのカウンターカルチャーの時代です。若者たちは公民権や反戦などの平和的なメッセージに賛同し、抗議行動を起こしていました。このような平和への願いの中には、動物の権利も含まれており、ベジタリアンが若者の間で流行。動物性タンパク質の代替として、豆腐を食べるようになったのです。
しかし残念なことに、このような人たちは“ヒッピー”と呼ばれ、「愚かで不真面目で、尊敬に値しない人々だ」と、多くのアメリカ人から肯定的な目で見られることはありませんでした。そのため彼らが好んで食べる豆腐も、多くのアメリカ人にとっては「あれは変な人たちが食べるものだ」と、嘲笑の的となってしまい、それは2000年代まで続いたのです。
ベビーブーマー世代(50代後半~70代半ば)やX世代(40代前半~50代半ば)は、豆腐に対してこのようなイメージが少なからず残っています。しかしながら、その下の世代、ミレニアル世代はヒッピーと結びつけて考えることはほとんどありません。豆腐は肉の代表品として注目されています。
また、コーネル大学が発表した調査によると、特に20代の若い女性は、他の種類のタンパク質よりも豆腐を好むのは調理が簡単だから、という理由から、豆腐を使った料理を最もよくしていることがわかっています[1]。
こうして豆腐は、アメリカでも一般的に知られた食品になりました。ミレニアル世代とZ世代は、レストランで豆腐を喜んで食べています。しかしながら、まだまだアジアほど一般的に食べられているわけではありません。大多数のアメリカ人は、豆腐を含む大豆食品を週に1食(またはそれ以下)しか食べていないのが現状です[2]。
なぜアメリカ人は豆腐料理を作らないのか?
なぜアメリカ人は豆腐料理を作らないのか、その答えは、「作り方を知らないから」です。
若い世代の多くは豆腐の調理法を学び、サラダからメイン料理まで日々のレシピに取り入れていますが、ほとんどのアメリカ人はそうではありません。
豆腐に種類があることや料理に加えることも知らず、ただそのまま食べなければならないと思っているため、味気ないものだと思い込んでいるのです。
豆腐がアメリカの家庭で普及しないもう一つの理由は、豆腐を豆腐として食べるという認識がなかなか広まらないことにあります。つまり、主に肉の代用品として捉えられているのです。豆腐そのものを楽しむという習慣はなく、肉を食べる人にとって豆腐は必要のないものとして扱われています。 長年にわたって肉の代用品として認識されてきたことが、ここにきてハードルになってしまっています。
「豆腐は肉の代わり」を象徴する商品:Tofurkey(トーファーキー)
植物性肉のブランドとして、年配の方の間で最も有名なのが「Tofurkey(トーファーキー)」です。この代用肉は、1995年、ベジタリアンのセス・ティボットと、ベジタリアンのケータリング業者であるセス&ロンダ・ウローベル夫妻によって作られました[3]。
「Tofurkey」は「豆腐(Tofu)」と「七面鳥(Turkey)」を組み合わせてできた言葉です。このダジャレのようなネーミングは、実はレビや映画でジョークとして使ってもらうことを狙ったマーケティング戦略の一環として重要な役割を担っていました。
肝心の味も、ベジタリアンにとっては、感謝祭の七面鳥の代わりになる素晴らしい製品でした。また、2000年代に牛肉を使わないホットドッグが健康トレンドとなったため、Tofurkeyはホットドッグのシリーズを販売し始めています。
パンデミックがもたらした豆腐ブームとその終焉
ちょうど新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)のロックダウンの始まりのころにあたる2020年3月第3週、Plant Based Foods Associationは、すべての植物性食品の売上が増加したことを報告しました。前年と比較すると、売上は90%もアップしています。この中には、豆腐の売り上げも含まれています。
このブームについては、いくつかの理由が考えられます。一つは、豆腐がほとんどの肉類よりも大幅に安いことです。パンデミックのこの時期には、多くの人が経済状況に不安を感じていたため、可能な限りコストを削減しようとしたのかもしれません。
もう一つの理由は、豆腐は生肉と違って冷蔵保存下での賞味期限が長いことです。避難生活がいつまで続くか分からないので、長期保存が可能な食材を買いだめしておく人が多かったのでしょう。
そしてもちろん、豆腐は健康に良いというイメージがあります。ウイルスを撃退できる健康な体を維持するために、豆腐を買い、調理し、食べるようになった人もいた可能性が高いのです
しかしながら、このブームは2021年まで続くことはありませんでした。2021年の豆腐のような植物由来の肉の選択肢の売上を見直すと、パンデミックによる最初のブームの後、売上が減少していることがわかりました。これは、工場の閉鎖、出荷の遅れ、原材料の不足などのサプライチェーンの問題や、パンデミックに慣れたことで通常の生活に戻す人が増え、これらの製品への関心が一般的に低下したためと考えられています[4]。
まとめ:海外市場へのエントリーの難しさ
健康面、経済面、環境面の理由から、アメリカの若い世代がより多くの植物性食品を食べ、肉から離れようとしたことが、豆腐がアメリカで広まる大きなきっかけとなったことは間違いありません。
この食肉代替食品に対する市場のニーズが高まったことで、今度は豆腐以外の植物性食品にも広がりを見せ始めました。
例えば、アメリカの食品テクノロジー企業のビヨンド・ミートは、エンドウ豆などから代替肉を作りました。KFC、デニーズ、カールズ・ジュニアなど多くのチェーン店では、ベジタリアンのお客のためにこのビヨンド・ミートのオプションを用意しています[5]。他にもインポッシブル・フーズが提案するフェイクミートは、本物の肉とわからないほどの肉クオリティにこだわっています。
豆腐がこれらの競合に打ち勝ためには、その健康上の利点に注目を集めることが重要です。大豆食品を多く含む食事は、がんの発生率が低く、その他にも多くの良い特徴を持つ傾向があります。豆腐のこうした側面を語り、アメリカの一般的なレシピに取り入れてもらえるレシピをPRすることが、アメリカにおいて豆腐を広める重要なポイントとなるでしょう。
日本人があたり前に思っていても、アメリカではそう受け止められていないということがあります。
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参照元
- https://www.ahchealthenews.com/2014/07/15/millennials-eating-tofu-but-not-for-nutrition/
- https://www.consumerreports.org/nutrition-healthy-eating/is-tofu-good-for-you-a6541364030/
- https://www.cnbc.com/2019/11/28/tofurky-creator-lived-in-a-treehouse-before-million-dollar-idea.html
- https://gfi.org/marketresearch/
- https://veggl.com/8-fast-food-restaurants-that-serve-beyond-meat/
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